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50年間 市場で働く人々を支えてきたメニューに載っていない"お母さんのおにぎり"「船橋市場の大乃家食堂」

《連続1997日目!》

すごく懐かしい。

この景色。
この匂い。

早朝の船橋市場(船橋市地方卸売市場)
全国各地から集められた新鮮な魚介類や野菜などが集まる、まさに千葉の台所的な存在。


実は、幼い頃このすぐ近くにある大きな団地に住んでいたことがある。
かなり久しぶりに来たけれど、忘れていた幼い頃の記憶がどんどん浮かび上がってくる。
そうそう。
ちょうどこの食堂が集まる棟の壁の向こうに、グラウンドがあって、よく遊んだよなあ。
その横には、ブッシブという日用雑貨品を売っているスーパーがあったなあ。

その隣には優しい店主の床屋さんがあって、髪を切りに行くといつもおまけでお菓子をくれたよなあ。



市場の中にもよく出かけていた。

かくれんぼをしたり、大きな発泡スチロールで基地を作ったり。

市場は、当時の団地の子供たちにとって、よき遊び場だった。


そんなノスタルジーな思い出に浸りながら、市場の中を歩いていく。

それは、あるお店を探していたからだ。


船橋市場の中では、深夜や早朝に働いている多くの人がいる。


そしてその市場で働いている多くの人を50年以上支えているおむすびを作っている食堂があるらしい。
その食堂の名前は、「大乃家食堂」
今回、探していたお店だ。


この食堂は市場の中の人だけでなく、一般の人も利用することができる。


土日は早朝から大行列ができるほどの人気だ。
(海鮮丼やお刺身定食を目当てに来る方も多いらしい)
この日は冷たい雨が降るかなり寒い日。
外で並ぶことも覚悟していたけれど、運よくカウンターが1席空いたので、そんなに待たずに座ることができた。


店内はとてもにぎやかだった。
カウンターに並ぶ焼き魚や魚の煮付け。
どれも美味しそうで、食べてみたい。

市場での仕事終わりの方も多く、この魚や揚げ物を定食にしてビールをグビっとしている姿も見られる。
常連さんに長く愛されているお店。
素敵だ。

さて、おむすびはどこかなあ。
あれっ。
ない。
メニュー札を何度も何度も見たけれど、おむすびの文字がない。
すみません。おむすびはありますか?
「ありますよ。どの具にします?」
どうやらメニューにはないけれど、注文は受け付けてくれるみたいだ。
では、鮭のおむすびをお願いします!
これまでの経験上、そのお店のおむすびのことを1番知ることができる具は「鮭」
「鮭」おむすびが美味しいお店は、他のおむすびも美味しい法則があるんだ。

おむすびを握ってくれたのは、好江お母さん。
この好江お母さんは、50年以上ほぼ毎日、市場の人向けにおむすびを握り配達をしてきているとのこと。
そして、出来立てのおむすびが運ばれてきた!
いっただきまーす。


ふぉう!
アツアツだ。手で持てないくらい熱々だ。
あっでも、この熱いごはんを好江お母さんは素手で握っていたぞ。
ふはぁ。
ふはぁ。
このおむすびは、すごくふっくらしていて塩の効と効き具合もちょうどいい。
鮭も甘塩の鮭を丁寧にほぐされていて、これがまたごはんと絶妙に合う。
なんだろう。
ホッとするような、懐かしいような。
こういうおむすびを求めていたんだよなあ。



好江お母さんにお話しを伺ってみた。

このお店が開業されたのが、船橋市場が開業した翌年。
そこから50年以上、好江お母さんが毎朝おにぎりを握り続け、市場で働く方に届けているとのこと。

1日で500個も作ったときもあるらしい。

これまで作ってきた数を合わせると450万個以上にもなるとのこと。

凄い!


炊き立てアツアツのおにぎりを、そのまま素手で手際よく素手で握ってくれた。
手で持つと、湯気がでるくらい。

最近、アツアツのおにぎりを握る料理人がYoutubeなどでも人気らしいけれど、この好江さんはそれをずっと続けている、まさに熱々のレジェンド的な存在だ。

握りたてのおにぎりは、とてもふっくらとしていた。

明太子のおにぎり。

しっかりとしたツブツブ感と熟成された旨みが、ふっくらごはんによく合う。



日本を代表する文豪太宰治は、有名な「斜陽」の中でこのようにおにぎりを語っている。

「おむすびがどうしておいしいのか、知っていますか。あれはね、人間の指で、握りしめて作るからですよ。」



おむすびは、人の手から人の手へ渡っていく食べ物だ。
その中には、美味しさだけでなく作り手や食べ手の想いも入っている。

大乃家食堂のおにぎりは、この言葉を体現したものだと思う。

それは、おにぎりの本質とも言えるだろう。



実は、最後にもうひとつ言いたいことがある。
大乃家食堂のメニューに載っていないこのおにぎり。
値段もわからないままお会計をしたのだけど・・
あまりにもリーズナブルな価格設定にびっくり!

大乃家食堂では、煮物や揚げ物、お刺身など美味しい料理がたくさんある。ぜひおにぎりと合わせて頼んで、いろいろな味を楽しみながら食べるのが良さそうだ。


ご馳走たまでした!



こちらの記事は、ハスつかのひとり創作大賞の中で、部門賞に輝いた作品を再編集して、順次公開しているものです。

その場所に行くことでしか体験できない旅の記憶や、おむすびやそれを結ぶ人とのストーリーを、自分の言葉で語っていきます。
ぜひ、お楽しみに!


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ハスつか
ファンベースデザイナー、地域創生プロデューサーなどしてます。 おむすびnoteを毎日書いてたり、浦和レッズを応援したり… みんなが、好きなこと、応援したいことを素直に言える世の中にしたいなあ。 皆さんと、いろいろなコラボをしたいです! ぜひぜひご連絡ください!