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なぜ今、再エネが求められているのか?値上げや災害対策への効果は?

今、世界的に取り組まれている地球温暖化対策。日本政府は2030年度に温室効果ガスを46%削減(2013年度比)することを目指し、野心的な見通しとして再生可能エネルギーの電源構成比率を36〜38%程度、その中でも太陽光発電は最も多い14〜16%程度を目標に掲げています。

以前から日本は海外資源への依存やエネルギー自給率の低さが課題となっていましたが、近年は自然災害の頻発や電気料金の値上げなどによって、再生エネルギーに対する関心はさらに高まりつつあるようです。

そこで今回は、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及に取り組む株式会社シェアリングエネルギーの佐野健太氏に、再生可能エネルギーの重要性や太陽光発電ならではの特徴を聞いてみました。

(聞き手:東芝テックCVC投資担当 吉村)

比較的手軽に導入可能で、日本の国土とも相性が良い太陽光発電

吉村:国の目標としてだけでなく、災害への備えや電気代値上げなどから再生可能エネルギーに関する話題を耳にする機会が増えているように感じます。そもそも、再生可能エネルギーとは何なのか?改めて教えていただけますか?

佐野氏:すごく簡単に説明すると、石炭や石油、ガスなど長い年月をかけて作り出される化石燃料に対して、太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーは長い年月をかけずに再生できる自然のエネルギーだと考えることができます。

吉村:その中でも、国が掲げる目標のうち太陽光発電が占める割合が多いですが、他の再生可能エネルギーと比べて何か違いはありますか?

佐野氏:例えば、太陽光は需要家さん(電気を使う方々)に近いところで発電・利用できるエネルギーであるところは大きな特徴だと思っています。
また水力や風力はある程度の規模や適地性が問われるのですが、太陽光であれば需要家さんの家や施設の屋根に太陽光パネルを設置して発電できるので、比較的手軽に取り入れやすい再生可能エネルギーだと思います。

吉村:ありがとうございます。その一方、日本は国土が狭いとか山がちであるなど、平地面積が少ないというような地理的要因の課題がありますよね。そういった中、パネルを設置することで起こる問題もあったりすると思いますが、電気を使う量に対して再エネの割合は意外と高いので、一定理解もあるように感じます。

佐野氏:そうですね。国土面積が広い米国や中国のほうが導入が進んでいるイメージがあるかもしれませんが、実は国土面積あたりの太陽光導入容量で見ると日本が主要国の中で一番進んでいると言われています。
とはいえ、日本は相対的に自国でエネルギー資源を調達できる量が少ないため、エネルギー自給率が低いという課題もあって、エネルギーの安定供給や環境への適応性、経済性なども含めて議論していく中で、やっぱり完ぺきなエネルギー源はないんですよね。だからこそ、取り組みやすいところから取り組んでいく必要があると思っています。

太陽光発電は電気代の節約や非常時の備えに有効なのか?

吉村:世の中の潮流としてインフレが騒がれており、基本的な経済原理として価格は上がっていくものだと思います。電気料金についても今後値上げが見込まれている中で、太陽光パネルは一つの対応策として考えられますか?

佐野氏:海外から化石燃料を輸入していることを考えると、円安と相まって費用という意味ではやっぱり上がっていくでしょうね。それに対して日本国内で調達できるエネルギーであれば対抗策になると思います。
太陽光の場合、設置の費用は掛かりますが、それ以降に追加の燃料とかが必要になるわけではないので、値上げに対応できるサービスと捉えることはできると思っています。

一方で太陽光に関しては、使いたい時間帯や時期に欲しい量が必ずしも供給されないという課題があります。化石燃料は燃やせば発電できますし、水力もダムで行っている場合は放水すれば発電し、止めればエネルギー供給を止められるのですが、太陽光は発電したタイミングで使わざるを得ない。
日本で太陽光の導入が進む中、太陽光の出力抑制や出力制御に関するニーズが高まっていて、九州や四国では顕在化してきているので、いま国を挙げて発電した電気を有効活用する動きが出てきています。

吉村:自分たちで貯めた電気を有効活用できるようになると、安定した供給というだけではなく、移動した場所での活用や災害地での活用なども期待できますよね。

佐野氏:おっしゃるとおりです。そこはもう技術的にはできていて、携帯式の太陽光パネルを設置して、ポータブル蓄電池につないで充電するケースもあったりしますし、市販されている電気自動車(EV)にエネルギーを貯蔵して蓄電池としてキャンプで使用する事例もあったりします。

吉村:昨今、気候変動の影響で災害も多くなっていますし、停電のリスクも非常に大きいので個人のBCP対策という観点では大事ですし、貯めた電気を使うことで経済合理性が出てくるともっと普及していくだろうと個人的には思いますね。

経済的なメリットも踏まえて、市場設計の整備に期待

佐野氏:経済合理性の話でいうと、導入する際にかかる費用に対する経済的なメリットがどのくらいあるのかということも大切ですね。実は導入方法にもいろいろあるのですが、例えば新築については住宅の建築時に組んだ足場を利用して太陽パネルを屋根に設置すれば足場費用を抑えることができますが、既築の場合は新たに足場を組まないといけないので、その費用も含めて経済合理性が成り立たないとなかなか導入が進まないのではないかと思っています。

この解決策として、例えばシェアリングエネルギーでは蓄電池や給湯器のサービスを提供させていただいています。それによって仮に太陽光で5発電できて3しか家では使用しないとなった場合でも、残りの2を売らずに蓄電池に貯めておくとか、給湯器でお湯を沸かして熱として貯めておくというようなことで、付加価値を付けて経済的なメリットを出していけるのではないかと思っています。こういった経済性の見合うサービスをいかに作っていくかが大きな課題の一つと感じています。

吉村:ぜひそういったサービスをどんどん考えて、取り入れていただきたいですね。ちなみに、太陽光パネルで生み出される電気は晴れと曇りで出力が違ってくると思いますが、その時の使用イメージをもう少し教えてください。

佐野氏:そうですね、例えば曇りの時に1しか発電できなかった場合で家の照明に3の電気が必要とすると、今までどおり電線から2の電気を供給するので、家の明かりが暗くなるということはありません。
また、晴れの日に5という電気が発電できれば、2については電気を売って収益を取っていただけます。ただ先ほど申し上げたとおり、売電するのも良いですがせっかくであれば相対的にクリーンで経済的な電気を最大限家で活用いただくために、蓄電池、給湯器などのサービスを活用したり、EVに充電して、そのEVの電気を家で使うみたいなところは太陽光サービスとの親和性として高いのかなと思います。

吉村:ありがとうございます。次回は実際に太陽光パネルを付けたいと思った時にどうすればいいのか?何から検討すればいいのか?条件なども含めて具体的にお聞きしたいと思います。

(後編につづく)

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