法学:民法(債権総論)2
全国の法律を愛する皆さんこんにちは!くららです。
今回は債権総論の2回目ということで、「債権の意義」をテーマに整理していきます。
債権とは「ある特定の者が他の特定の者に対して一定の行為をなすべきことを請求しうる権利」であることは前回確認した内容です。債権の反対にあるのが債務であり、「この一定の行為をなすべき義務」のことを指します。また、この「一定の行為」のことを給付と言います。
しかし売買契約など多くの場合は、お互いに債権と債務を負い、相互に給付を行う関係となります。そういった関係を双務関係といいます。
ここで誤解しやすい概念として、債権の客体は「給付」であるということです。建物の売買契約の場合、給付の対象となるのは建物に他なりませんが、債権の客体はあくまでも「給付」=「一定の行為」だということです。
つまり、債権者は債務者に対して給付を請求する権利、債務の履行を求める権利を有していることになりその権利を「履行請求権」といいます。給付が行われない場合を債務の不履行というが、債務の不履行の際には債権者は不履行の効果として「損害賠償請求権」や「契約の解除権」を取得します。
債務の不履行に関しては、不履行の原因と態様に応じていくつかの類型に別れます。①履行不能:目的物が地震や火災などによって滅失した場合など、債務履行が客観的に不可能な場合 ②履行遅滞:履行自体は可能だが履行すべき時に履行しない場合 ③不完全履行:履行は一応なされたが、それが不完全な場合
ここまでの債権の確認では、債務者の負う義務は「給付義務」についてのみ説明していることになります。しかし、判例や通説によると給付義務以外にも信義則上負うであろう義務があります。それは「付随義務」と「保護義務」です。
付随義務:付随的注意義務ともいい、給付を債務の本旨に従って実現するための配慮義務のことで、給付効果や給付利益を保護すべき義務のことです。平たく言うと、債務の履行のためにできることは全部やれということですね。
保護義務:契約当事者は相互に相手方の生命・身体・財産などを侵害しないように配慮すべき義務のことです。保護義務の対象は契約とは無関係な契約当事者が有する法益(保持法益」であるため他の義務とは異なります。
近時の学説では「請求権中心の体系」から「債権者利益(債権利益)中心の体系」へとパラダイムを転換すべきだとする見解が有力となっている。この見解の特徴はいくつかあります。
①債権の概念:伝統的理論である「権利意思説」とは異なり、債権は請求権を内包したものではなく、債権を債務者から一定の利益を得ることが期待できる債権者の地位であると定義する「権利利益説」と捉えます。
②履行請求権の位置づけ:これまでは債権の効力として履行請求権が認められていたが、債権のような中間的概念を介さず、契約から直接的に導き出されると考えるため債権概念自体に大きな影響はないのです。
③その他の救済手段:これまでは債務不履行の効果として、損害賠償請求権や解除権が認められてきたが、それらの権利も契約によってもたらされるものであるから、債権者はいずれの救済手段によるか自由に選択できると考えられます。
④付随義務・保護義務:これらの義務もこれまでのように中心の「給付義務」から同心円上に拡がっていくという段階的な構造をなすわけではありません。
これらの見解は新法に大きな影響を与えました。しかし、履行請求権や履行の強制に関する規定(412条の2第1項・414条1項本文)はいずれも債権効力としてこれを位置付けている。また、412条3項は債務不履行の前に履行請求権が存在することを認めている。これらの点からも、新法はなお伝統的な理論を基礎とするものといってよい。
さらにこの見解のようにすべての問題を契約の拘束力に還元することができるのかという点も疑問の余地があります。従来の見解によると、債権関係は当事者の自律的な合意とこれを補充する他律的な規範によってき起立される「二元論」の立場でした、この見解では、当事者の自律的な合意の確定と他律的な規範による補充は対立的なものではなく融合的なものと捉えるべき「融合論」の立場をとります。
今回はここまでとします。
今回の範囲は債権の意義や従来の理論と近時の学説を確認しました。
次回は、改めて物権と債権の権利の分類を確認していきます。
Written by くらら