法学:民法(債権総論)1
民法とは「私人としての生活関係を規律する法律」のことを指します。
そもそも、民法は第一編の総則、第二編の物権、第三編の債権に分かれています。総則とは「民法はなんたるか」を、物権は「人と物の関係」を、債権では「人が人に対して何かを請求する権利」を規定しています。
その中でも、債権総論=何かを請求する権利の基本ルール、を学んでいきます。
そもそも、債権が発生するのはどんな時でしょうか。発生原因は2つに分けられており、1つは契約に基づくもの、もう1つは直接に法律の規定に基づいて生ずるもの(697条:事務管理、703条:不当利得、709条:不法行為など)のいずれかである。
1、契約に基づく債権:契約に基づく債権は文字通り契約の効果によって債権が生じる場合であるが、この場合問題となるのは、契約が有効に成立したかということ。契約が有効に成立したというには「成立要件」と「有効要件」を満たす必要がある。
a、契約の成立要件:契約の一般的な成立要件としては、①当事者の存在、②権利能力の存在、③意思の合致の3つが挙げられる。個別の契約においては特別な成立要件を必要とする場合もある(要式契約:446条2項、要物契約:587条)。
b、契約の有効要件:契約の有効要件は逆説的な表現がなされ、契約の無効原因、取消原因が存在しないこととされている。具体的には、意思無能力および意思の欠缺は無効原因であり、制限行為能力および瑕疵ある意思表示や錯誤は取消原因とされている。
これらの成立要件および有効要件を満たすと、契約に基づく債権が発生する。しかし、契約による債権に対しては法律の規定によって生じる債権にはない特有の問題が存在する。同時履行の抗弁権(533条)、危険負担(536条)、契約の解除(540条以下)がそうである。
2、法律の規定に基づく債権:民法典では法律の規定に基づいて債権が発生する場合として、事務管理、不当利得、不法行為の3つを定めている。これらの各条文には債権発生の根拠となる法律要件が規定されており、これらの法律要件を備えることで債権が発生する。
ところで、債権発生の条件は分かりましたが、この債権総論がどこまでを対象としているかというのも重要な視点です。なぜなら、債権各論(個別の債権関係について取り扱うもの)の範囲である問題を間違って取り上げてしまっては、わざわざ総論と各論に分けている意味がないからです。
債権総論の対象:先ほども出てまいりました債権各論では、個別の債権関係について規定しておりますが、それらの債権関係にも共通する問題があります。その共通する問題に関して定めているのが債権総論なのです。それらは399条以下の「第1章総則」にまとめて規定されており、具体的には7つの節から成り立っている。
1、債権の目的:債権を、特定物債権・種類債権・金銭債権・利息債権・選択債権の5つの種類に分けて債権の内容を規定している。
2、債権の効力:第一に債務不履行の際の債務者の責任について規定が置かれている。具体的には、履行請求権と損害賠償請求権に関してである。第二に債務者の「責任財産の保全」に関する制度として、債権者代位権と詐害行為取消権に関してである。
3、多数当事者の債権および債務:債権者と債務者が1対1という基本形ではなく、1個の債権に対して当事者が複数いる際の規定をしている。
4、債権の譲渡:債権を譲渡する際の有効要件や対抗要件について規定している。とりわけ、債権の譲渡制限特約に関して詳細な規定が置かれている。
5、債権の引受け:債務者の債務と同一の債務を負担することを債務引受という。連帯負担する併存的債務引受と債務者が免れる免責的債務引受の2つの場合がある。
6、債権の消滅:すべての債権に共通する一般的な消滅原因として7つの原因を規定している。目的の達成による消滅である(弁済、代物弁済、供託、相殺)とそうでない消滅原因(更改、免除、混同)に大別できる。
7、有価証券:証券とは財産法上の権利・義務に関する記載をした紙片のことで、有価証券とは、その権利の移転・行使が証券を用いて行われなければならないものを指す。手形・小切手などがその例である。
今回は、債権の発生要件と債権総論の対象範囲の確認をしました。次回は債権の意義や基本概念、物権との区別などに注目していきます。