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【感想】森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』

タイトルの最初に数入れるのやめました。読んだ本全部を記録するわけではないしね。

モリミンの新刊読みました!森見登美彦、中学生のころから大好きです。
ハードカバーの本を読むの久々でした。最近文庫本ばっかり読んでいたし。

今回は裏にあらすじが載っているわけではないので、自分なりに簡単にまとめます。

ヴィクトリア朝京都で探偵をしているシャーロック・ホームズ。しかし事件を解決することができなかったせいでここ一年ほどスランプになってしまっている。ホームズの冒険譚を雑誌で連載していたワトソンもそのスランプの影響を受けることとなる。2人はスランプから抜け出すことができるのか⁉

面白かった~~~~!!!!!
ヴィクトリア朝京都、という「なんだそりゃ」な舞台設定なので、ギャグ系かなと思って読み進めたら、これ、マジだ。真剣(マジ)だ。
四畳半』とかの側ではなく、これは完全に『熱帯』の側にある作品。

最初はもうギャグと言うかちょっと笑っちゃう感じなんですよね。ワトソンはスランプから脱出してもらいたいくて、ホームズにいろいろ口出したりするんだけど、ホームズは全然そんな気ないから、詭弁をネリネリして不満ばっかり言っている。ここもうウケる。
私は森見作品の文章の読みやすさ(わかりやすさ)と登場人物同士のポンポンしてて、でもグチグチした感じの会話が好きで、序盤は「わーーっ森見登美彦読んでるーーっ」って思いながら読んだ。

中盤、ホームズは過去に携わった事件ともう一度向き合う。ここで謎が生まれて、深まり、一応終わったのか…?って感じになるけど、それは本質的な解決じゃなくて蓋をしめただけって感じだから、なんだか、心に澱がたまるというか、ズーンとした気持ちになる。

終盤はもう、「え?え?」と、「どわああああああーーーーーーー!!!!!」が交互に何度も来るような感じだった。
どれが現実で、どれが創作なのかわからないくらいぐちゃぐちゃになるというか、『熱帯』もその境目が曖昧になるような作品だったけど、本当にそんな感じで、でも読むとちょっとずつ全貌が見えてくるから、それが面白くて一気に読み終わってしまった。

読んでいて思ったのは、森見作品はミステリーじゃなくてファンタジーなんだよな、ということ。最近、東野圭吾の『探偵ガリレオ』を読んで、湯川先生かっこい❤になっていて、すべての事象にきっちり説明がつくような一種の気持ちよさを面白がっていた。
でも今回『シャーロック・ホームズの凱旋』を読んで、森見作品全般にも通じるけど、わからないことに対して、科学的なアレとかなしで、「そういうもん」で済ませるにはそれなりの説明能力とか法則性、道理があるはずで、そこをきっちり守るからこそ、広げた風呂敷をぐちゃぐちゃにして「そういうもん」という箱にしまった、っていう印象を持たず、「なるほどなあ」ってすんなり読めるのかな、と思った。
作中に「心霊主義」という言葉がでてくるけど、ホームズはその反対側にいて、すごく科学を根拠にして論理的に物事を考えるタイプだと思うので、そのシャーロック・ホームズを題材にしてこういうファンタジーが書けるのすごいし、めちゃくちゃ面白かった。

ていうか普通に、久々の森見登美彦で、うれしかった。
ご本人もスランプだったらしいので、ホンマにこの世に作品を作ってくれて、Thank you 

私、シャーロック・ホームズ読んだことなくて、BBC制作の「SHERLOCK」(ベネディクト・カンバーバッチのやつ めためたおもろい)しか見たことない人間でして、これを機にシャーロック・ホームズ読むべきかもな、と思った。でも「SHERLOCK」見てるか見てないかでもだいぶ違う気もしたけどねーん。

森見作品の最後の一文はどれもとっても素敵なので注視していて、その中でも『ペンギン・ハイウェイ』のが大大大好き❣なのですが、
今作もうれしくて小躍りしたくなるような一文で大好きでした。

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