青山美智子さんの作品に出てくる「スウィーツ」を“お探し”してみた
椎葉村図書館「ぶん文Bun」のクリエイティブ司書・小宮山剛です。
今回の記事では作家・青山美智子さんの作品をすべて再読したうえで、作中に出てくる「スウィーツ」の記述を追いかけてみました。『お探し物は図書室まで』の「呉宮堂のハニードーム」がその代表格ですが、探してみるともっとたくさんの美味しそうなスウィーツが・・・!?
🍯青山美智子さんの作品発! オリジナル「ハニースウィーツ」レシピの募集
今回この記事を書いているのは、クリエイティブ司書が勤務している椎葉村図書館「ぶん文Bun」にて「青山美智子さんの作品発! オリジナル「ハニースウィーツ」レシピの募集」というイベントを開催するからです。
テーマは「青山美智子さんの作品に出てくる(出てきそうな)ハニースウィーツ」!作中に登場するいろんなスウィーツ+ハニー(はちみつ)を考えてみたら、ただでさえ優しい青山美智子さんの作品がもっとやさしくうるおいのある世界になるんじゃないか・・・と想像しています!
先に書いた通り、青山美智子さん×スウィーツというと呉宮堂のハニードームを思い浮かべるのですが、他にも美味しそうなスウィーツがでてきたよな・・・。全部探しちゃおうかな・・・。と、そんな気になり自宅の青山美智子さんコーナーの本を再読しています。
**************
さてこの記事を書いている2月26日の二日後は(結局作品をイチからしっかり読み込んでしまい、書き終わるまでに三日かかりました・・・笑)さてこの記事をアップする2月28日は、青山美智子さんもノミネートされている「本屋大賞」の二次投票締め切り日!そしてさらに、2月27日からは『お探し物は図書室まで』のラジオドラマが始まりました!絶対毎週聴きます!!
連日話題に事欠かない大人気作家さんの青山美智子さん。5月28日の椎葉村ご来村まで、お忙しいなかでもお健やかにお過ごしいただければな・・・と願っています。
そんなわけで、青山美智子さんの作品に出てくる「スウィーツ」探し。いってみましょう!!
🍯お探し物は図書室まで(ポプラ社)
青山美智子さんの作品で「スウィーツ」と言って最初に思い浮かべるのは、やっぱり小町さんが大好きな「呉宮堂のハニードーム」でしょう。今回椎葉村で開催する青山さんとのイベントも「ハニードームをつくろう!」にしても良いかな・・・?と当初思っていたのですが「ハニースウィーツをつくろう!」のほうが、より広く小説世界を楽しんでいただけるような気がしています。
では、さっそく『お探し物は図書室まで』を読んでいきましょう。
・呉宮堂のハニードーム
さすが『お探し物は図書室まで』の主役級とあって、たくさんの描写が出てくる「呉宮堂のハニードーム」。呉宮堂の社員だった正雄の章が大団円を取り結ぶのですが、そこでの記述はぜひ作品を読んでのおたのしみということで・・・。
それにしても、ハニードームの描写は追いかければ追いかけるほど美味しそうですね。あぁ、現実のものになったハニードームを食べてみたい・・・。
・ぐりとぐらの、黄色いカステラ
朋香ちゃんの転機がおとずれる瞬間ですね。色んなサイトを開いてレシピを調べて「そうだ、今の自分にできることを今やる。それでいい」と納得するところも凄くグッときました。「絵本に忠実な」ぐりとぐらの、黄色いカステラ。果たして出来栄えは・・・?
・マシュマロマン
「スウィーツ」ではなく小町さんを見た諒が抱いた印象ですが・・・。美味しそうだなと思いピックアップしました笑。
**************
「呉宮堂のハニードーム」と「ぐりとぐらの、黄色いカステラ」という二大スウィーツが登場する『お探し物は図書室まで』。意外と他のスウィーツは少なかったように思います。
そのほか「こんなスウィーツがあったらいいな」と思うものに、僕は「『はだしのゲロブ』の形をしたスウィーツ・・・」を思い浮かべました。ムカデだそうなので、ちょっと難しいかもしれませんが・・・笑。
椎葉村で開催する「ハニースウィーツ」のイベントでも、おそらく「ハニードームを再現しました」というレシピが多く寄せられるのではないかな・・・?と思います。
小町さんがおすすめした本だって誰もが同じ読み方をすることなんて無い。それと同じで、お一人お一人それぞれの「ハニードーム」があって、色んな種類の全然違うハニードームが出てくるのも素敵だと思います。それこそが、小説の楽しみ方というものですよね。
ぜひ、あなただけの「ハニードーム」を見せてください。青山美智子さんにも「この手があったかー!」と思ってもらえると嬉しいですね笑。
🍯木曜日にはココアを(宝島社)
・ホットココア
こちらはのっけから、というか題名がスウィーツですね。
この物語の鍵を握るホットココア。そこにはどんな秘密が隠されているのでしょう・・・?
**************
粗読みではありますが、作中明確にスウィーツが出てくるのはココアだけかな・・・?と思います(他にも登場していたらぜひ教えてください)。しかしちょっと想像してみたら、他にも『木曜日にはココアを』に「出てきそうだな」というスウィーツがもくもくと浮かんでくるようです・・・。
「マーブル・カフェ」にスウィーツがあったら?
優がつくる緑のスウィーツがあったら?
Ralph's Kitchenのスウィーツ・メニューがあったら?
「魔女」グレイスさんがスウィーツをつくったら?
「一人前の魔女」になったシンディがつくる魔法のスウィーツ・・・?
・・・などなど、物語を読みこむと楽しい予感がむくむく湧いてくる気がします!ぜひ『木曜日にはココアを』を読んで、あなただけのスウィーツレシピを考えてみてくださいね。
🍯月曜日の抹茶カフェ(宝島社)
こちらは『木曜日にはココアを』の続編です!「抹茶」というとけっこうスウィーツのイメージが強いですが、果たしてどうでしょうか・・・?作品を読んでいくと、お抹茶にあわせる和菓子がたくさん出てくるように思います。
・寒牡丹
「抹茶カフェ」と聞いて抹茶ラテやプリン・アイスを想像していた美保が出会う寒牡丹。大事な大事な出会いでしたね。
・雪うさぎ
こちらは寒牡丹に続いて若旦那が出してくれた和菓子でした。
・「どっちでもいい」ブラウニーとトリュフ
「それはあかんで!」な回答の代表のような、ひろゆきさんの回答に出てきた。「どっちでもいい」ブラウニーとトリュフ・・・。理沙とひろゆきさんのバレンタインデーはどうなったのでしょうか?
・柏餅
橋野屋のおばあちゃんと雪乃さんとの会話に出てくるのがこちら。この柏餅は橋野屋さんの和菓子なんでしょうか?
・枇杷
「スウィーツ」かと言われると「?」かもしれませんが、優しくて甘くて・・・ということでピックアップしてみました。
・水無月
・たくさんある名前のうちのひとつ
文月の章に登場する真っ白な猫さん。猫さん自身はスウィーツではないですが「猫さんみたいな」スウィーツがありそうだな・・・と思いピックアップしています。
・抹茶シェイク
「甘い」イメージはなかった抹茶ですが、ここにきて「はちみつ」とまさかのコラボレーションです。もしかすると、スウィーツとしてのアレンジ方法があるかも・・・?
**************
さすが『月曜日の抹茶カフェ』。たくさんの和菓子が登場しました。アレンジのしようによっては立派なハニースウィーツになりそうなものもありますね。他にも、こんな想像をしてみました・・・。
ピー・バードの尋子さんは器用だし素敵なスウィーツをつくりそう
橋野屋さん、福居堂にはどんなお菓子があるんだろう
「月曜日の抹茶カフェ」では、他にも和菓子が出されたのだろうか
・・・などなど、和・洋の範疇にとらわれない「ハニースウィーツ」のアイディアが湧いてきそうです。ぜひ『月曜日の抹茶カフェ』を読んで、はちみつが活躍しそうなポイントがあるかどうか探してみてください!
🍯ただいま神様当番(宝島社)
愛らしい神様をめぐる物語。のっけから強烈なスウィーツが登場します。
・居酒屋の「プリンセス・パラダイス」
「どんな店やねん」と突っ込みたくなるようなスウィーツたちです。もはや「青山美智子さんの作品発! オリジナル『ハニースウィーツ』レシピの募集」のことを忘れて、この居酒屋のメニューを再現したいくらいです。
・ワークショップのシフォンケーキ
十三世紀のヴェネチアンガラスがルーツだという「チェコビーズ」のワークショップが終わったときにお茶菓子として出てくるシフォンケーキ。なんの変哲もない描写のようですが、どんなシフォンケーキを思い浮かべますか?
・チョコレートドーナツ
これに関してはもう、単純に私が食べたいです。
お腹が、すきました・・・。
・苺サンデーと桃のムース
序盤に大量のスウィーツが登場する『ただいま神様当番』。読み返してみると、端々にスウィーツがあったんだと思い出されて面白いです。このフルーツパーラーでも、大切な会話が交わされましたね・・・。
・手をつけられなかったクッキー
これは胸が狭くなるような、辛い場面でした。そんな空気に似つかわしくなく出されて、手もつけられなかったクッキー・・・。どんなクッキーだったのでしょうか。
・水羊羹
サラリと登場する水羊羹。ストーリーとはあまり関係ないようですが、この場面で「お菓子が出てくる」ということに意味があったように思います。どういう場面かは、ぜひ作品をお読みくださいね。
**************
思わずたくさんのスウィーツが登場した『ただいま神様当番』。やっぱり「プリンセス・パラダイス」が最大のインパクトです。
他にも、ネネさんがいるバーでもしスウィーツが登場したならどんなものかな・・・とか、気になるシチュエーションがありました。「正直に生きる」ってどんなことかを見つめなおすことができるような、素敵な作品だと思います。ぜひ読んでみてくださいね。
🍯鎌倉うずまき案内所(宝島社)
実は小宮山がとっても好きだったりするこちらの作品。どんなスウィーツが登場するのでしょうか?「うずまき模様」のアレは当然出てくるとして・・・。
・うずまきキャンディ
・・・など、など。毎章登場する「うずまきキャンディ」。これもスウィーツと言っていいんでしょうか?青いらしいのでさわやかなミント味を想像しましたが「ただ砂糖みたいに甘ったるい」味、「レモンみたいな甘酸っぱい味」味、塩味、そして「水を飲んだみたい」・・・などなど様々のようです。
味が様々なら、はちみつ味があってもいいかも・・・?うずまき形のキャンディを作ったら可愛く仕上がりそうですね!
・琥珀のペンダントトップ
スウィーツではないのですが「はちみつ」と出たからにはピックアップしてしまいます。「梢が受け取った琥珀のペンダントトップみたいなハニースウィーツ」・・・なんて、作れないでしょうか?
・かりんとう
ほんとうになんとなく出てきただけなのかもしれませんが・・・。かりんとうもスウィーツですね。
・ソフトクリーム
うずまきスウィーツの代表とも言えるソフトクリーム。ちなみに「一九八九年 ソフトクリームの巻」はとても好きな章です・・・。
**************
「うずまきキャンディ」をはじめとしたいくつかのスウィーツが登場する『鎌倉うずまき案内所』。ほかにも、こんなスウィーツが登場したら面白いな・・・と思いました。
「メルティング・ポット」でスウィーツが出てくるならどんなものだろう?
「所長」が何かスウィーツにならないだろうか?
「甕覗」色のスウィーツがあったらすてきじゃないだろうか?
「青山美智子さんの作品に登場する黒祖ロイドの作品に登場しそうなハニースウィーツ」なんて、SFチックで面白いかも?
・・・アンモナイト形のスウィーツ・・・。ちょっと僕には想像できないのですが、パッと思いつく人もいるかもしれません。「化石チョコレート」とかですね笑。読む人によって受け止め方や想像するものが違うのも、小説の醍醐味ですね。
🍯猫のお告げは樹の下で(宝島社)
猫のミクジが愛らしく活躍する不思議な小説です。みんなの悩みが痛切で、だからこそミクジとの出会いの後おとずれる展開にこころあたたまります。
・アンジェリカのレモンタルト
ばっちりとお店を指定のうえ、レモンタルトが登場しています。しかしスウィーツに疎い私には「アンジェリカ」がわかりませんでした・・・。岡山県や愛知・豊橋にそうした名前のケーキ屋さんがあるようですが・・・。単にフィクション上の名称なのでしょうか。
・最中(もなか)
ミクジがいる神社の宮司さんが出してくれる最中です。大切なお話のお供でしたね。
・スガキヤのクリームぜんざい
またもはばっちり指定型のスウィーツです。こちらは、ご存じSugakiyaさんのクリームぜんざいですね。関東にはないんですねぇ・・・。
この後、ぜんざいが登場する章「タマタマ」の主役であるニコが作る「ニコちゃんクリームぜんざい」も食べてみたいものです。
**************
青山美智子さんの作品を呼んでいると「たまたま」「何とはなしに」みたいな感覚の尊さを感じます。とくに『猫のお告げは樹の下で』では強く感じるように思います。
上に挙げたスウィーツのほかに、こんなものもあったらおもしろいな・・・と思いました。
タラヨウの葉は何かスウィーツにならないだろうか?「書ける」スウィーツ・・・?
ミクジをかたどったスウィーツなんてあったら可愛い。
苔みたいなスウィーツがあってもいいかも?抹茶・・・?
・・・他の作品とも共通する登場人物のストーリーが楽しい『猫のお告げは樹の下で』。自分の日常にもこんな物語が隠れているのでは?という気にさせてくれる一冊です。
🍯赤と青とエスキース(PHP研究所)
この記事を書いている2022年2月28日時点で青山美智子さんの最新作にあたる『赤と青とエスキース』。2022年の本屋大賞にもノミネート中です。
あまりスウィーツの印象は強くありませんでしたが・・・。読んでいきましょう!
・期間限定のデザート
「ユリさん」が期間限定の恋の譬えに挙げたスウィーツたちは、実際に食べ物として登場こそしませんが・・・美味しそうです笑。
・ホット・ジンジャー・ティー
スウィーツというわけではありませんが「茜」の飲み物として登場する蜂蜜入りのホット・ジンジャー・ティーをピックアップです。
・生八つ橋と豆
「蒼」が京都から買ってきた生八つ橋と節分の豆も、一応のところピックアップしています。この引用だけではなかなか伝わりづらいところですが、この「赤鬼と青鬼」の章が大団円に向けた大事な一章になっている気がします。
**************
ジャックが手にもっていた赤と青のパレットみたいなスウィーツなんかがあれば綺麗でよさそう。
「完璧な結婚」(詳しくは作品にて)みたいなスウィーツが作れないだろうか?
「カドル」にスウィーツがあったらどんなものだろうか?
・・・などなど、あまりたくさんのスウィーツが登場することはないものの「つくる」ことのドラマを魅せてくれる『赤と青とエスキース』には多くの創作ヒントが隠されていそうです。
それにしても、何度も何度も読み返したくなる作品ですね・・・
🍯誰がつくるハニースウィーツ?
ここまで、青山美智子さんの作品に出てくるたくさんのスウィーツを取り上げてきました。目的は椎葉村で開催する「ハニースウィーツ」イベントのヒントを得るためだったのですが・・・やっぱり青山さんの御本は楽しいです。想定の3倍の時間をかけて、じっくり読みこんでしまいました!
いろいろと「スウィーツ」(らしきもの)をピックアップしながら、僕だったらどんなレシピをつくるかと考えてみたのですが・・・。やっぱり、自分の一番好きなキャラクターが「どんなハニースウィーツをつくりそうか」を考えてみたいなと思いました。
たとえば僕の場合一番好きなキャラクターが「黒祖ロイド」さんなので「黒祖ロイドの小説に出てくる奇怪な……けれど愛すべきハニースウィーツ」みたいな想像をしています。やっぱり、青色でしょうか・・・笑。
そしてもちろん、皆さんの想像する「呉宮堂のハニードーム」も観てみたいです!おそらく、同じ文章を読んでいるはずなのに全然違うものが出てきたりして、それが面白い!ということになる気がしています。文章だけでなく、お一人お一人のお料理スキルや他の情報などによっても出来上がりが変わってきますよね。(そして「それがいい」んだと思います!)
・・・今回のイベントの主旨は「青山美智子さんの作品をたくさん読んで、自分の理解をお菓子というかたちにしちゃおう!」というようなものです。
「順位を決定するためのレシピコンテスト!」というわけではなく、皆さんに楽しんでいただきたい・・・そしてこのイベントを通じて青山さんを応援したい!と思っていますので、どうぞお気軽に楽しみながら青山さんの作品にふれて、レシピづくりをしてみてくださいね。
レシピの締め切りは、畏れ入りますが3月14日までとなっております。ぜひ、椎葉村交流拠点施設Katerieのイベントページをご覧いただきご応募をお願いいたします。
※ご質問などあれば、お気軽に小宮山剛のTwitterなどへもお寄せください。
皆さまから多くのご応募をお待ちしております!!