営業とは・・・社会人1年目の底辺から
1.社会人キャリアスタート
私は2005年3月に福岡大学理学部応用物理学科を卒業して、福岡に本社がある印刷会社に営業職で入社しました。何で物理の勉強してたのに、印刷会社の営業なの?と思われるかもしれませんが、当時、就職氷河期と言われ、私の同級生も4年生の秋くらいまでで、学年の半分くらいは内定をもらっていないような厳しい時期でした。私は物理が好きで大学に入りましたが、入ってしまえば遊ぶことと、遊ぶためのお金を稼ぐこと、なおかつ社会経験の一つだと言いながらアルバイトばかりしていました。洋服が好きだったので、卒論は強引に物理と絡めて、ナイロンやレーヨンのような洋服に使われる高分子物性をテーマにして書きました。就職活動も、最初はアパレルの会社、繊維の卸問屋などを受けていましたが、どこの会社も全国で4人、多くても10人など、非常に狭き門で、内定をもらえないまま4年生の冬頃になっていました。その頃、もうアパレルに拘るのはやめようと思い、何でもいいから、人と接する仕事の方が続くだろうと思い、営業職で採用してもらえる会社を探しました。そんな中、印刷会社に営業職で入社する道を選びました。
2.飛び込み営業
入社して新入社員研修が終わってから、博多駅前のエリアを担当しました。私に任された仕事は、飛び込み営業です。ビルの最上階までエレベーターで上がり、そのフロアの会社をかたっぱしからアポなしで訪問し、営業します。そのフロアで全部訪問し終わったら、階段で一つフロアを降りて、またそのフロアの会社をかたっぱしからアポなしで訪問し、営業します。そして階段でまた一つフロアを降りて・・・・・・どうなるか?想像される通りです。ほぼほぼすべて門前払いです。当時ちょうど、オフィスの受付から人がいなくなり、電話と部署名の電話番号一覧だけぽんと置かれており、その電話で、それっぽい部署に電話をして、営業の話をするようなパターンが多かったです。だいたい「訪問営業お断り」といったステッカーが貼られているケースもあり、電話することさえもためらうような環境です。そんな中でも、何十件も訪問していると、中に通してくれて、オフィスの方が相手をしてくれることもありました。(今考えると、アポなしでよくそんなことができたなと思ってしまいます。)話ができたとしても・・・これも想像される通りです。印刷の仕事って、どこの印刷会社に出しても仕上がる物は同じで、なおかつ、ずっと以前から定常的にニーズがあるものですので、既に長く取引している先があるのが当然です。だいたい、「何かありましたら連絡します」的な感じで終了します。1日も40件とか、多い日は60件くらいそんな飛び込み営業をしていた私ですが、また次も同じところに訪問できるように、1社1行ずつの日報のようなものを作って、活動を記録し、継続していました。それを数か月続けていると、100件のうち1件あるかないか?くらいの割合で問合せをもらったり、名刺作成などの小さな仕事をもらえるような変化がありました。
3.底辺に気づき、同時に脱却方法にも気づく
スーツは着ていますが、靴も底は擦り切れますし、しかもO脚気味の私は、靴底の外側ばかり擦れてかっこ悪いですし、5月頃からずっとそういう仕事をしているとちょうど暑い時期にも差し掛かり、汗だくで飛び込み営業をする日々でした。何度も訪問していると、いつも相手してくれるおばちゃんがいたりして、「いつも汗だくですねー」などと声をかけてもらうこともありました。そんな私の憩いの場というと、公園のベンチか、喫茶店か、時にはバス停のベンチで休んでいました。・・・そんなある日、「なんなんだろう?何で僕はこんな効率の悪い営業をやっているんだろう?世の中に営業をやっている人なんて、腐るほどいるはずなのに、みんなこんなことやってる?やってないよね?営業の底辺のやり方だよね。先人に学ぶべきだ!!」と、衝撃的に閃きました。私はそれから、とにかく営業のハウツー本を読みまくりました。(ちなみに今でも、古本屋に行くと安いハウツー本を5~6冊くらい買ってしまいます。)とにかくいろんなハウツー本を読んでいると、だいたい半分くらい読んだら、その著者の言いたいことが分かるようになります。それから私の飛び込み営業は、自分が実験台となって、ハウツー本の営業手法を試すことに変わりました。自分が飛び込み営業をしているというよりは、自分はハウツー本を読んで常に効率的な営業方法を考えている立場で、訪問している自分は、もう一人の自分が実践で試している(本のやり方を検証している)という感覚です。
4.印刷会社の営業から、製薬会社の営業(MR)へ
その後私は、自分が営業しながらハウツー本を実践で試しながら、自分に合ったやり方だけを取り入れて、自分の営業スタイルを確立しました。そんな私に影響を与えた営業の本で、「SPIN」という考え方があります。(ぜひ、「SPIN 営業」とかで検索していただくとすぐHitすると思いますので、営業されている方は、読んでみていただけたらと思います。ここでSPINの詳細は触れませんが、)3年半、その印刷会社で法人営業を経験し、外資系製薬会社の営業(いわゆるMR)に転職し、その後3年間のMR経験の中で、2度、年間の優秀MR(成績上位5~10%)に表彰されるまでの成果を上げることができました。印刷は、どれだけ飛び込み営業しても、仕上がる物は競合他社も同じで、すぐに価格勝負になることや、そんな中で付加価値は自分自身という存在でしかつけられない状況でした。医薬品は、同種同効品であったとしても化合物として違うので、全く別物ですし、正直、すごく営業しやすい商材だと感じました。しかも、MRというのは、社会においてはチーム医療の一環であり、医療従事者もMRから医薬品の情報提供を受ける義務も発生している状況です。印刷ではありえない話です。さらに言うと、医薬品は厚労省で「薬価」という価格が決まっているので、製薬会社が価格競争に巻き込まれることはありません。(むしろ、製薬会社が販売価格に関わると、法に抵触します。)原価ぎりぎりまで上司に相談しながら見積もりを出して、やっとの思いで受注していた印刷会社の営業の頃とは、全く環境が違います。ただ、今考えると、印刷会社の飛び込み営業で経験したことというのは、ずっと今も私のキャリアの中で活きています。何事もハウツー本を読んで先人に学び、そして自分が実験台になって実際に試す!このやり方は、その後の営業以外の職種でもずっと継続してきたことです。今この瞬間も、PCの横には、ビジネス脳、マネジメント、パラダイムシフト、経済学、哲学系の本など、積み重なっています。もちろん、これからも継続して、学び続けて、学んだことを自分が実験台となって試し続けて行きたいと考えています。