味わう本屋さん #本屋さん開店します
読めば読むほど体重が増していくのは、私だけでしょうか。
たとえばトーベ・ヤンソンの『ムーミン谷の冬』を読んで、「さかなのスープ」の作り方を検索したり。
せやま南天さんの『クリームイエローの海と春キャベツのある家』を読んで、春キャベツを待ちわびたり。
秋谷りんこさんの『ナースの卯月に視えるもの』を読んで、何度くら寿司に駆け込んだことか(※作中に登場するのはくら寿司ではないけれど)。
KaoRu IsjDhaさんの『その名はカフカ2』を読んで、「おばあちゃんちでしか見たことないやつ……!」と興奮しながらジャムサンドクッキーを探しに行ったり。
決して食べものがメインの本ではないのに(『クリームイエロー~』は料理シーンも見どころではあるけれど)、どうしてここで捕まってしまうんだろうと思いながら、おなかがきゅるると鳴いてしまう。
鳴いてしまったら最後、ふらふらとできるだけ近い食べものを探しに立って、咀嚼しながらまた本を開く。そして栄養を蓄える。そういう本の読み方をしてきました。
もちろん、本に出てくる飲食物は、言葉でしか味わえないものもたくさんあります。
『カードミステリー』のプルプルソーダとか、『ツーベンリッヒは嘘をつく』の「スカバ」で出される飲みものとか。
けれどその一方で、現実世界でも味わえるものもあります。
それならいっそのこと、「これを読んだらこれが食べたく(飲みたく)なるよ」ってあらかじめ本とセットで売ってくれる本屋さんがあったらいいのに。
そう妄想を膨らませて、「味わう本屋さん」を作ってみました。
まずは、本棚を見渡します。
次に、冷蔵庫とお菓子箱を眺めます。
この本を読んで、食べたくなったアレ。
この漫画を読んで、飲みたくなったアレ。
そうして作ったペアを並べてみたら、本屋さんの完成です(雑)。
ご紹介しましょう、まずはアルコールの棚。
『ビールの最初の一口とその他のささやかな楽しみ』
『風の歌を聴け』
『恋する二日酔い』
『春夏秋冬、ビール日和』
には、ビールを添えて。
最近豆千さんのお店(埼玉県、川口市)で買った『酒と恋には酔って然るべき』には、日本酒を。
お次はこちらの棚。
『Theやんごとなき雑談』には、苦いと顔をしかめつつ著者が飲んでたコーヒーを。『ツーベンリッヒは嘘をつく』には、ココアを(写真右下の紫色の小袋、ココアのつもりだったのに後にミルクティーと発覚)。
『ソバ屋で憩う』には、蕎麦を。
その下は、チョコレート系の棚。
『笑う大天使』には麦チョコを。
『いくつもの週末』『チョコレート・アンダーグラウンド』には、チョコレートを。
うわ、楽しい。
いまは本棚にある本と、家にある食材とを組み合わせただけだけれど、我が家の本棚には飲食物が出てくる本が妙に多くって。
本棚を眺めていると、物語の筋はおぼろげなのに、「クリームパンがおいしそうだった」「シャコを食べてみたくなる本だった」とか、そういう記憶ばかりが浮かんできます。
セットが用意できない場合は、メモをつけてもいいかもしれません。
「食欲予報:カツ丼」
「登場する飲食物:サンドイッチ、スープ」
みたいな。
とはいえ、こちらが先回りして「鶏肉を用意して読むべし」とメモを挟んでも、その人が惹かれたのはしけたビスケット、みたいなこともあるでしょう。
私にとって『いやいやえん』はリンゴが食べたくなる本で、『エルマーとりゅう』はみかんだけど、ほかの人にとっては違うかもしれません。
「エルマーといえば、棒つきキャンディでしょう!」と言われたら、いそいそとメモに加えましょう。
読みながら食べることは、あんまり行儀のいいことではありません。
けれど私には、主人公と一緒に食べたり飲んだりすることは、読書を深めてくれるように感じるのです。
本に釣られて未知の食べものを食べてみたり、謎のレシピを試してみたりすることで、現実と本の世界に橋がかかるように思われるのです。
そうやって味わいを重ねていけたら、きっともっと、本と親しくなれるような気がするのです。
* * *
こちらはメディアパルさんの企画「#本屋さん開店します」への参加記事です。
好き放題妄想するって、めちゃめちゃ楽しいですね!
こういうお題、大好きです!
そういや前も「おいしいもの×本」みたいな話を書いた気がするなぁと探してみた関連記事。