初心者ベイベー、ミッチーを浴びる
ミッチーこと及川光博氏のワンマンショーに行くことになったのは、完全に完全なる成り行きだった。
これまで私は、ミッチーに関する記事を二つ書いている。
一つ目の「ミッチーの私服」では、「ミッチーに似ている彼氏にミッチーのコーディネートを参考にしてもらおうと思ったのに、それらしき服が検索結果に出てこない!」と書いた。
気になった方にはぜひとも検索してほしいのだけれど、マジで出てこないのだ。
検索結果は、キラッキラのステージ衣装ばっかり。
するとそんな嘆きに対して、ミッチーファンである「ベイベー」「男子」から「ミッチーの私服は柄シャツ、ツアーTシャツ、痩身の暗色のパンツ、黒の革靴と眼鏡、ボルサリーノハット!」と口々に情報が寄せられた。
二つ目の「続・ミッチーの私服」は、その後日談だ。
寄せられた証言に狂喜した私は彼氏のミッチー化を進めようとするが、「私が好きなのは彼?それともミッチー?」と葛藤し、「私が好きなのは、あくまでも彼氏!」と言い切ろうとするも、もはや油断するとミッチーの画像を見漁ってしまう……と、そんな揺れる乙女心(?)について書いた。
するとまたnoteやTwitterでベイベー、男子の方々が「来た!続編!」とテンション高く盛り上がってくれた。
これがミッチーに鍛え上げられしベイベーたちの力……!?
飛び交う熱い声援にえっへえっへと喜んでいたら、「いまちょうどツアー中なんですよ!とりあえず参加してみては?」と、突如ツアーへのお誘いがスッと差し込まれた。
はえっ???ツアー?!?!
いや、実はツアー中であることはTwitterでのリサーチで知っていた。
だけど、チケット……取れ、るの?
だってミッチーだよ?あの国民的スターのミッチーだよ?
きっともう満席だよ、チケット代3万くらいしそう、初心者にはまだ敷居が高いかも……私のそんな勝手な思い込みを、そのベイベーは「ご時世的なものもあって取れます!そしてとにかく顔がいい!!」と勢いよく打ち砕いてくれた。
顔のよさを力説するベイベーの声に導かれ、おそるおそるワンマンショーを検索した5月12日の23時半。
まだ、空きがあった。
うわぁ、マジか。
私が検索したとき、直近の関東圏の公演は千葉の市川と東京の府中が予定されていた。
おそるおそる手帳を開くと……府中の日、5月29日は文フリしか予定が入っていなかった。
行けるな……行くか。
行くっきゃない!!!
こういうときは、迷ったら負けだ。
意を決して申し込みを進めると、席の選択画面になった。
指定席9500円、「ゴーゴー!シート」(税込み5500円)、「サイコ―!列シート」(税込み3000円)の三種類があるらしい。
すでに「サイコ―!列シート」は満席だったので、「ゴーゴー!シート」を申し込んだ。
指定席を申し込まなかったのは、ひとえに私の心の弱さゆえである。
……あと2週間ちょっとで、振付を覚えられる気がしない。
YouTubeでショーの様子を観るかぎり、指定席のベイベーたちはほぼ全員曲の振付を覚えている猛者しかいないようだった。
振付はなかなか複雑なのに。
体育の成績評価が2だった私がここに交じったら、このせっかくの一体感をぶち壊してしまうに違いない。
とりあえず今回は「ゴーゴー!シート」で様子見といこう。
とにかく当日までには、定番ダンス曲「死んでもいい」だけ踊れるようにしておこう。
そんな若干低めな目標を定めて、夜な夜なひそかに練習を重ねた。
そして迎えた当日、ミッチーのワンマンショーはとにかく驚きの連続だった。
そう、ここからが本日の本題。
泉に浸かりたてほやほやの初心者ベイベーによる、及川光博ワンマンショー「GROOVE CIRCUS」の感想である。
まだ泉に浸かっていないnoterのみなさまには、ぜひとも「知られざるミッチーワンマンショーの世界」を知ってほしい。
そして先輩ベイベー、男子の方々には、どうか初めてワンマンショーに臨んだ日にタイムスリップして、在りし日のことを思い出しながらお読みいただきたい。
ここからは、私がワンマンショーで驚いたことを時系列に沿って素直に書いていこうと思う。
まずは開演前、駅に着いたときのことから。
✨✨✨
開演前
桃色の道
最寄り駅の東府中から会場である府中のどりーむホールまで、ピンクの道ができていた。
駅前から会場まで、ピンク色をまとった人たちが点々と歩いていたのである。
ツアーに誘ってくれたベイベーとは違う方から、今回のテーマカラーが「ピンクストライプ」だと教えてもらっていた。
マッチ―さんのブログ記事「生ミッチー初心者さん学習ページ」を読んだところ、「テーマカラーは半数以上〜7・8割くらい?が何かしら取り入れている印象」とのこと。
幸いにして私は、ショッキングピンクのスカートと、黒と白の縦ストライプのシャツを持っていた。
ばっちりでは?
意気揚々と電車に乗ったはいいものの、さすがにちょっと派手すぎるかもしれないと心もとなくなってきたところで、東府中に着いてしまった。
もさもさと駅を出ると、もっとピンクの人たちがそこここにいた。
淡いピンク、濃いピンク、シャツがピンク、全身がピンク……。
よくよく見ると、服にストライプ模様も入っていたり、バッグがストライプだったりとテーマを忠実に取り入れている方が多い。
駅から少し歩くから、絶対に迷子になるだろうと思って開場の一時間半前に駅に着いたのに。
『ヘンゼルとグレーテル』のごとくピンクの人たちを辿って、私は無事に会場にたどり着くことができた。
ポンポン作り、舐めるべからず
「ポンポンを買うべし!」
ツアーに誘ってくれたベイベーからのアドバイスに従って、物販コーナーに小走りしてポンポンを買った。
よし、あとはこれを開演前に綺麗に開くだけ。
自分の座席に座り、説明書に目を通す。
作り方としては、卒業式で飾る薄い紙製の花とほぼ同じようだった。
きっと、楽勝。
かつて卒業式係に所属していた私は、余裕ぶっこいてポンポン作りを始めた。
が、予想に反してポンポン作りは難航した。
紙花とは素材が違うために、同じように作ろうとすると花びら部分が直立してしまって全然華やかに広がってくれないのだ。
花というよりホチキスのような形状になってしまった自分のポンポンを見下ろして途方にくれていたら、前列に座るご婦人が鞄から完璧な形のポンポンを取り出し、整えているのが目に入った。
それを斜め後ろからガン見してみるが、何がどうなってそんなに綺麗に上下左右に広がっているのかまったくわからない。
彼女のポンポンを盗み見ながら自力で奮闘したものの、どう頑張ってもホチキスはホチキスのままだった。
開演時間は刻一刻と迫っている。
「すみません。どうしてそんなにお綺麗なんですか?」
前の人にコツを聞こうと話しかけたら、そのご婦人は「これ広げるの、難しいですよねぇ。私は真ん中の部分をゴムで縛り直したの。そうすると持ち手もできるしポンポンも立ち上げやすくていい感じなんです」と言った。
ゴムで縛り直す!!
綺麗なポンポンのための創意工夫がすごい。「ベイベー歴長いんですか?」と質問を重ねると、彼女は「そうでもないですよぉ、関東のツアーしか行けないし」と身をくねらせて謙遜した。
関東のツアーに行ければ十分なのでは?とも思うけれど、ミッチーとともに全国をハシゴする金と距離に糸目をつけない系のベイベーたちの姿もTwitterで見ている。
もっといろいろ聞きたいけれど、とりあえずポンポンを完成させなければならない。
なんとか挽回すべく花びらを上下左右に引っ張ると、最初よりは丸く広がるようになった。
美しきポンポン作りは、舐めてはいけない。
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開演後
ミッチーも観客も、座らない
いよいよ始まるぜ!となったときに、急に最前列の人たちがまとめて立ち上がり、後ろを振り返った。するとその後ろの列の人たちも立ち上がり、同じように後ろを振り向く。
順々に繰り返される不可思議な動きを五列くらいまで見てやっと、それがどうやらウェーブらしいと気がついた。
それまで思い思いにポンポン広げたり双眼鏡のピント合わせに集中していたベイベーたちが一体となってうねり、波を作る。
自分の列の番がきたので立ち上がり、後ろを振り返る。
素晴らしいことが始まる予感に、心が震える。
そこへ満を持してミッチーが登場。
とにかくスタイルがよかった。
歌いだすミッチーに「わあ、本物だ」と感激しながら椅子に腰かけたが、座ったのは私だけだった。
あれっ……?みんな、座らないの……?
あたかも「ちょっとストッキングがズレたもんで」みたいな顔を作りながら(むろんミッチーに夢中で誰も見ていない)、そうっと立ち上がる。
そして周りに合わせて手拍子して、曲が終わった。
ふう、びっくりした。
そして今度こそ座ろうと周りを窺うと、みんなまだ立っている。
うん???
ショーって座って観るもんだとばかり思っていたけど、違うの?
どうやら、違うらしい。
結局、開演から終演までの約8割ほどの時間を、私たちは立って過ごした。
いや、より正確に言うなら、踊って過ごしたと言うべきだろう。
基本的にずっと、曲に合わせてタンバリン振ったり(私はタンバリンがないので手拍子)、踊ったり(私は振りが複雑すぎるときは振り子のように左右に揺れていた)、ミッチーのコール&レスポンスに合わせて手を振ったりしていた。
けっこう忙しい。
けれどミッチーとバンド・ダンスメンバーはもっとずっと大変なのだ。
それなのに彼らはずっと躍動感たっぷりにステージ上で歌い踊り、軽々とソロを決めていた。
やっばい、とにかくカッコいい。
目も耳も、二つずつしかないのが惜しい。
一人ひとりを定点カメラに撮っといてもらって、あとでじっくり見返したい。
じっとガン見もしたいし、振り付けを練習しながらも観たい。
どんどん欲深くなっていく自分におそれを抱きながら、だからみんな、円盤(DVDやブルーレイのこと)を買うんだなと納得した。
とはいえ安易にポチるのは危険だ。
私はこのたった一日の非日常を反芻すべく、Twitterと感想ブログパトロールに相当な時間を捧げてしまっている。
そんな人間が、日常的にミッチーを観られるようになってしまったら。
そうしたら最後、私の日常はやすやすとミッチーに塗り替えられてしまうだろう。
彼氏の部屋に越したてホヤホヤの今、時間的にも精神的にもこれ以上ハマってしまうのはまずい。荷ほどきがいつまで経っても終わらない可能性がある。
ニラ炒めの引力
なんだかミッチー本人の魅力よりもベイベーたちにびっくりしたことばかり書いてきてしまったけれど、そろそろミッチー本人について触れたいと思う。
基本的にドラマで観るミッチーしか知らなかった私が一番驚いたのは、そのおしゃべり力。
もう、とにもかくにもチャーミングなのだ!!!
自分が競馬の馬主になるなら馬にどんな名前を付けようかとか、宝くじで5億当たったら何がしたいかとかデビュー曲「モラリティー」の歌詞のエピソードとかそういった話を、曲の合間やベイベー&男子からの質問コーナー「愛と哲学の小部屋」でしていたのだけれど。
具体的に何を話していたのかは正確には書ける自信が皆無なので、詳しくはくいなさんのこちらのブログをお読みいただくことといたしまして。
とりあえず私は、とりわけ印象に残っているニラ炒めの話だけご紹介したい。
大雨の影響で仕事がお休みになって、お正月以来の三連休になってしまったというミッチー。
実家に帰って、ニラ炒めを作ってもらったのだそう。
そしてそれをおっきなタッパーに入れて持ち帰って、週末ずっと食べていたという。
なにその、ただならぬ生活感!!!
いかにも幸せそうな口調に、マスクの中で思いきしニヤニヤしてしまう。
とても50代とは思えないかわいさ、もーなんなの!
ニラと豚肉と卵が入っているという及川家流レシピと、それを幸せそうに語るミッチーの愛おしさを脳内にしっかりと刻みこむ。
そんなひょうきんでキュートな話っぷりの一方で、自身を「中御所」と表現したり「そろそろヒット曲を出したい」などといった謙虚さも、言葉の端々ににじむ。
こりゃあ無敵だわ、素敵すぎるわ。
ベイベーも男子も、ミッチーがシャイニングじじいになるまで、ずっとずーっとついて行きたくなるわけだわ。
実は私の行った5月29日は「モラリティーの日」と呼ばれるミッチーの27年目のデビュー記念日だったのだけれど、奇しくもこの日は私の28歳の誕生日でもあった。
こんな日にワンマンショーデビューを決められたのは、もはや運命だったのではないかとすら思い、感激ににやけている。
つい最近まで私の中の及川光博といえば、ドラマ『相棒』のクールな「神戸くん」、『半沢直樹』情報通な親友「渡真利」くらいのイメージしかなかった。
けれど生で見たミッチーは、抜群のスタイルでキラメキ衣装を着こなし、話すときには軽妙かつこまやかに、歌うときには「はうぅん」と語尾に色香をたっぷり含ませていて、そして終始、キラッキラに輝いていた。
このキラキラ効果はすさまじい。
開演の18時から終演の21時くらいまであれだけ踊ったにもかかわらず、帰りの電車で立ちっぱなしだったにもかかわらず、私はすこぶる元気に帰ってきて、友だちからの「ライブどうだった?」という一行のLINEにこの約三時間で観たあらゆるミッチーの魅力を数十行にわたって綴り倒した。
✨✨✨
後日談
そして、ニラを炒めたわけです
翌日私は、ニラを求めて颯爽とスーパーへ行った。
前日のミッチーのワンマンショーを受けてなのかなんなのか、ニラは特売コーナーに置かれていた。
喜び勇んで二袋カゴに放り、豚コマを入れ、そして卵を買いに向かう。
卵があるはずの棚は、綺麗に空になっていた。
そんなことって、ある?
家計の優等生は、いったいどこに消えてしまったのだろう。
まさか、埼玉中のベイベーがおっきなタッパーいっぱいにニラ炒めを作ろうとしているのではあるまいか。
そんな不穏な妄想が頭をよぎる。
かくいう私もそのクチだからだ。
まるで健康番組で納豆を紹介するみのもんたのごとく、ミッチーがニラ炒めを称えたばっかりに埼玉から卵が消えてしまったのかもしれない。
あまりむやみに、好物を暴露しないでほしい。
とはいえ私はどうしてもニラ炒めが食べたい気持ちになっていたので、結局卵不在でニラと豚肉だけでニラ炒めを作った。
にっしゃにっしゃと噛み砕くニラは、馴染み深い食材のはずなのにどこか新鮮で、そういえば「ニラを食べよう」と思ってニラを食べたことはなかったなぁと気づく。
そのおいしさに気づかせてくれてありがとう、ミッチー。
ニラ炒めを堪能したあと、「ニラ炒め」とTwitterで検索した。
案の定ミッチーの言葉に惹かれて、ニラ炒めを作っている人が何人もいた。
やっぱり卵が入ると映えるなぁ。
まるで後夜祭のような「ニラ炒め」の盛り上がりに、ついニヤニヤしてしまう。
コール&レスポンスの魔力
ミッチーの呼びかけに対して観客が応えるコール&レスポンス。
ミッチーのライブでは、
ミッチー「愛してますか?」
ベイベー&男子「愛してまーす!!!」
ミッチー「オッケーですか?」
ベイベー&男子「オッケーでーす!!!」
などが定番として知られている。
残念ながらコロナ禍ゆえに、私たちの声は数年前のベイベーたちの音声に代替されて、私たち自身の反応は振り鳴らされるタンバリンに託されている。
だから当日私はショーの最中は一言も発していなかったのだけれど、「〜ですか?」「〜でーす!!!」はちゃっかりと自分の中に定着していたらしい。
引っ越しのために電話で電気の解約を連絡したとき、先方の「お電話番号は***でオッケーですか?」というコールに「オッケーでーす!!!」と全力で返してしまった。
「あっ…ああ、わかりましたっ……」という先方の引き気味の声に、しまったコールじゃなかった!とハッとしたがもう後の祭りだ。
及川光博ワンマンショーは、かように中毒性、浸透圧ともに圧巻のステージだった。
生ミッチーを観た今となっては「私の彼氏はミッチー似」なんて何を言ってやがるこのスットコドッコイ、としか思えないのだけれど、あの記事を書いていなかったらミッチーのワンマンショーに行く機会はなかったかもしれない。
ありがとう、彼氏。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけでも、ミッチー要素を持っていてくれて。
一緒に行けたらいいなと思って7月のワンマンショーに誘ったものの、「それ俺どんな顔して行けばいいの……?」と彼はちょっと引き気味だ。
ともに笑顔で踊り狂ってくれたらいいのに。
お読みいただきありがとうございました😆