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プロポーズよりも先に、結婚式の日取りが決まってしまった。 「そういえば俺らって結婚するじ…
今年のボーナスが出たら、ハワイに行こう。 数ヶ月前の夫の言葉は、もはや「この戦争が終わっ…
寝ようと思えばどこでも眠れると豪語してきたし、そう信じてきた。 去年書いたエッセイ「プリ…
夫のハワイにかける情熱が、正直、少々うとましいのだった。 むろん好きな人が好いているもの…
30歳の誕生日が、健康診断にぶち当たっていた。 弁当を作りながらいつものクセでつまみ食いを…
子どものころ憧れていたものの一つに、連用日記があった。 母が持っていた皮っぽい表紙の分厚…
「お電話ありがとうございます。◯◯図書館です」 受話器を取って相手の名前やお問い合わせ内容をざっくり伺い、「では担当者に代わりますね」と保留を押して内線に繫ぐ。 4月に入職してから約一ヶ月、業務の三分の一くらいを電話番が占めている。 直接何かに対応するというのではなく、あくまで担当者に引き継ぐまでがいまの私の仕事だ。 先週のことである。 「はい、はい。それでは……」と言いながら担当の先輩の手が空いているかどうかを首を伸ばして確認しようとしたら、先輩がくるりと振り返り「わたし
なんか、私ばっかりトイレットペーパーを買ってる気がする。 そう気がついてしまったのは、not…
6月から勉強していた図書館司書の資格をついに取得し、約5年ぶりに就活に勤しんでいたある日の…
私たち夫婦には、共通の趣味がない。 二人ともどちらかといえばインドア派とはいえ、休日の過…
何か、自分にできることを。 そう焦燥感を覚えたときに真っ先に献血が浮かぶのは、紛れもなく…
そういえば昔、私は肝油ドロップが好きだった。 そう思い出したのは、年末の30日に胃腸炎にか…
ことの発端は、お土産でもらった和牛名産地の牛肉レトルトカレーだった。 「和牛」と金の文字…
耳馴染みのある鈴の音が、聞こえた気がした。 図書館司書資格の勉強もいよいよ大詰めで、必須科目の「情報資源組織演習」の授業を聞きに大学に来ていた日のこと。 休憩時間が終わる直前に「シャラン」とかすかに鳴った鈴の音に、私はギョッと身を固くした。 その音が水琴鈴という、私がとき子さんからもらった根付の鈴の音に酷似していたからである。 さらにいえばその鈴は、私の財布に結びつけられているはずだった。 え……もしかして財布盗られた……? 不穏な疑念で胸がざわつくが、すでに先生は講義を