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私が摂食障害になったわけ、経緯と、自力で寛解するまでの話
プロローグ
多くの女性は今よりも痩せたいと思っている。思春期前の女児ですらそう思っていることがある。
何故、痩せていることが良しとされるのだろうか。摂食障害の事例の殆どは先進国で見られる。恐らく飽食という状況下で、痩せていることはストイックさに直結するのであろう。
私が摂食障害になったわけ
本題に入る。私が摂食障害を発症したのは、恐らく15歳の頃である。2020年、中学卒業直後のことだ。その頃私は「拒食症になってでも良いから痩せたい」と考えていた。
私は中学校で、同級生の男子に「デブ」だの「脂肪たっぷりだから高いところから落ちても無傷」だの何だの言われていた。確かに私はその頃若干太めだった。胸が大きめだったのもあっただろう。
そのような心無い言葉は、私が摂食障害を発症した一番の原因である。また少し脱線するが、「ブス」などとも言われていたため、軽い醜形恐怖症を発症し、目の周りを濃いアイシャドウで囲む化粧を毎日するようになった。
発症、悪化
3月、中学を卒業して数日後に、スマホを親に買ってもらい、体重記録アプリを入れた。毎朝体重を測り、記録していた。痩せたいと強く思っていたため、食べる量を大幅に減らした。その頃の記憶はあまりないのだが、約50kgあった体重は、わずか1ヶ月で43kgまで落ちた。
当然、リバウンドとして過食が始まった。1ヶ月で7kgも落とせば、体が悲鳴を上げるのは必然である。毎夜冷凍食品やお菓子を大量に食べた。
指を喉に突っ込んで嘔吐することも試みたが、少ししか吐けなかった。そういう訳で体重がどんどん増えていく。結果、6月頃には53kgほどまでリバウンドしていた。元の体重よりも3kg増えていた。過食が続くにつれ、双極性障害(その頃は未診断だったが)の鬱状態が酷くなっていき、夜泣き明かすこともあった。
薬によってさらに増える体重
鬱状態が酷く、繰り返し行動化していたため、神奈川県内の某精神科病院に入院した。9月のことだ。
そこで処方されていた薬は、ジプレキサ(オランザピン)、セロクエル(クエチアピン)、リフレックス(ミルタザピン)などである。上述した3つの薬は、どれも激しい体重増加を招くことが多い。
入院前、私の体重は49kgほどであった。6月頃のそれよりも少し減らすことに成功していた。しかし2021年2月に退院した頃には、55kgまで増加していた。私は悲しかった。自分が無価値な人間であるように思えた。摂食障害患者は、低体重という状態により自分の価値を維持するのである。
下剤の使用
2021年春頃から下剤を使用するようになった。厳密には下剤を飲んでも食べたものはある程度吸収されるのだが、元々便秘でもない人が下剤をほぼ毎日使用することは、消化器系に多大なダメージを与える。また、腸液や水分、電解質の欠乏により重大な障害を招く可能性もある。
2021年のことは何故かあまり覚えていない。しかし、食べた後に吐ける量が増えたのは確かその頃だったと思う。
誹謗中傷、最大の激痩せ
2022年の1月頃、私はTwitterで「質問箱」をやっていた。匿名のユーザーからこちらにメッセージが届くものである。
その質問箱では大量の誹謗中傷メッセージが届いた。主に以下のようなものである。かなり酷い言葉が列挙されているので読み飛ばしてくださっても構わない。
・ブタ
・デブ
・痩せろ
・運動しろ
・あなたは太っていますね
このようなメッセージが継続的に送られてきた。私は質問箱を退会したが、そこで拒食が始まった。2月の初頭だ。
ガリガリに痩せた写真を投稿して、誹謗中傷メッセージを送ってきた下衆野郎共を見返してやろうという思惑があった。
その頃53kgほどだったと思う。
私は、ゼロカロリーのゼリーや飲料と、モンスターエナジーしか腹に入れない生活を始めた。下剤も使った。当然腹が減るが、強い意志で耐えた。あれらの誹謗中傷メッセージに従い、痩せなければならないと思った。極度の空腹が当然常にあったが、スマホゲームをして気を紛らわせた。
最初は苦しかった。吐き気やだるさがひどく、メンタルクリニックに通院する際に駅まで歩いていくのも辛かった。しかし、体重が46kgを切ったあたりから、爽快感を覚えるようになった。
主治医は私が痩せていくのに気づき、エンシュアという総合栄養剤ドリンクを出した。カロリーメイトの液体版だと思っていただきたい。1缶で200kcal以上ある。私はそれを朝飲み、後の食事(?)は全てゼロカロリー食品とモンスターエナジーでやり過ごした。エンシュアを飲んでも体重は減った。
4月の初め頃、私の体重は40kgまで落ちていた。BMI16である。2ヶ月弱で13kgも落としたことになる。30kg台まで落とせなかったのは本当に遺憾だった。BMI16というのは拒食症の中では大した方ではない。14を切っている人も沢山いるのだ。
寛解するまで
40kgまで落ちていた時は、硬い椅子に座ると、尻の骨が当たって痛かったりした。私はその頃「普通に食べたい」と思い始めるようになった。質問箱の匿名メッセージを気にするのが馬鹿馬鹿しくなってきたのもある。
普通に食べる実践を始めた。最初は苦しかった。体重が増えていくのが嫌だった。時々、過食もあった。しかし極力吐いたりしないようにした。
体重は2024年には60kg近くまで増えていた。しかし、また極端な拒食をしようとは思わなかった。もしそのようなことをすれば、またリバウンドで過食が来て、今度は70kgにまで増えてしまうかもしれないとの判断を下したのである。
「普通に食べて普通体重を維持すること」と、「極端な食事方法により激痩せと激太りを繰り返すこと」を天秤にかけた。
結果、前者の方が良いと判断した。私はもう過食も拒食もしていない。体重は60kgから55kgにまで、緩やかに減った。極端な目標はもう設けていない。体重を毎日測ると再発を招く可能性があるため、1週間に1回のみ測定している。
摂食障害という、非常に苦しい病気に罹ってしまう人が少しでも減って欲しいと思う。私は、私の体型を中傷してきた人々を一生恨む。
注:摂食障害は極めて治療が困難な精神疾患であり、私のように自力で寛解したケースはごく稀であろう。もしあなたが摂食障害に苦しんでいたら、寛解を目指したい場合はセラピーに頼ることを薦める。