逆に長くなりますけど…? -謎の言い回し「ミーちゃんハーちゃん」- #050
友人のもっちゃんは、ミーハーのことを「ミーちゃんハーちゃん」と言う。
パンケーキで有名なカフェモーニングに行った時、彼は「ミーちゃんハーちゃんじゃけど、パンケーキにしますわ」と満面の笑みで宣言した。
もっちゃんは甘いものに目がないだけでなく、何よりもかわいいものが好きで、タピオカやりんご飴、パフェなどに出会うたび目をキラキラさせている。
彼は翻訳の仕事をしているのだが、以前カナダに語学留学していた際「蹄のある動物は?」という先生の質問に「ユニコーン」と答えた上、「虹色のうんちをする」という謎の雑学を付け加えて、「ユニコーンのもっちゃん」というニックネームを獲得した。
ユニコーンは英米圏では小さな女の子が好きな定番のようで、夢のようにふわふわしたピンクや紫のパステルカラーのいきものである。
さて、ミーちゃんハーちゃんについてだが、もともとは母から「まったくあんたは、ミーちゃんハーちゃんじゃなぁ」のように言われたらしい。
岡山県出身のもっちゃんから「関西ではそう言う」と教わった私は、関西出身の人に会うたびに尋ねているのだが、そういう言い方を知っている人には未だ会ったことはない。でも私と、その言い回しを一緒に聞いた妻は何とも軽妙な響きを気に入り、普段使いしている。
この言い回しの肝は「なぜか長くなっている」ということだ。
例えば若者言葉では、「おけ(オーケー)」「り(了解)」「おこ(怒っている)」「よろ(よろしく)」などのように、基本的には文字数が少なくなる(以前流行った「激おこぷんぷん丸」「どうしよ平八郎の乱」のように敢えて長いのもある)。
ビジネス用語や略語でも「リスケ(スケジュールを再調整する)」「パワポ(パワーポイント)」などとなる。
しかし「ミーハー」が4文字なのに対し「ミーちゃんハーちゃん」は10文字で、なんと2.5倍の文字数である。
「ミーちゃんハーちゃん」のような言い回しは、よく考えてみると他の言葉でも使えそうだ。
職場で仕事に追われて疲れている後輩に、先輩がやさしく声をかけている。
「ちょっとコーちゃんヒーちゃんで休憩しよか」(コーヒー休憩の意)
夕飯後のくつろぎの時間。おもむろにトランプを取り出し誘う。
「ポーちゃんカーちゃんしよか」(ポーカー)
相手にツッコミを入れたい時はこうである。
「あんたバーちゃんカーちゃんやなぁ」(バカ)
「またそんなボーちゃんケーちゃんなこと言ってからに」(ボケ)
警察の会議室で部下が報告する。
「3丁目でマーちゃんダーちゃんが発生しました!2丁目ではゴーちゃんトーちゃんです!」(マーダーmurder「殺人」&強盗)
緊張感の続く現場にほのかにリラックスした空気が流れる。
有名なパフェの店。
「タカノフルーツパーちゃんラーちゃん」(タカノフルーツパーラー)
一遍にたくさん使いすぎるとほぼ意味がわからなくなる恐れがあり、注意が必要である。
夏の昼下がり、妻がゲームをしている夫に声をかける。
「ねぇ、ちょっとゲーちゃんムーちゃんしてるところ悪いんだけど、暑いからクーちゃんラーちゃん入れてくれない?あと夕方お義父さんたちが来るから、夕飯にスーちゃんパーちゃんで、スーちゃんシーちゃん買うのはどう?」
(ゲームしてるところ悪いんだけど暑いからクーラー入れてくれない?あと夕方お義父さんたちが来るから夕飯にスーパーで寿司を買うのはどう?)
夫は答える。
「オーちゃんケーちゃん!」(OK!)
もっちゃんによると「ミーちゃんハーちゃん」以外にはそういう使い方はしないようであるが、私としてはいろいろな用法を広めていきたい所存である。
(追記1)
「ミーハー」のような「〇―〇―」という言葉は他に何があるかを夫婦で考えていた時、考えすぎて無言になりしばらく会話が無くなった。その後出かけた妻からは、写真のようにLINEに連続で大量の言葉が送られてきて戦慄した。
(追記2)
もっちゃんの家ではハヤシライスを「ハイシライス」と呼び、「ハイライ」と略すらしい。これも岡山県か、もっちゃん家限定の言い方なのだろうか。「今日はハイライよ」はなんともかっこいい。
2024年11月5日執筆、2024年11月8日投稿
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