特許法 第七十条 特許発明の技術的範囲(1)
今回は、特許法 第七十条を確認していきます。
第七十条の存在意義
第七十条は「特許権の効力の及ぶ範囲をどのように決めるか」を定めている条文です。見出しも「特許発明の技術的範囲」となっていますね。
第四章 特許権
第一節 特許権(第六十六条―第九十九条)
(特許発明の技術的範囲)
第七十条全文
さて、その第七十条の全文がこちら。この後項毎に解説するので、ここではさっと目を通すだけで大丈夫です。
第七十条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
2 前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
3 前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。
括弧書きの部分がなく、すっきりした条文ですね。
第七十条1項の解説
まずは1項から見ていきましょう。
第七十条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
特許権の効力の及ぶ範囲は、「特許請求の範囲(請求項)」で確認するということですね。
明細書内に記載があっても、特許請求の範囲に記載がなければ、特許権は得られないので、当然効力も発生しないということになります。
ただ、実務上はとある態様が「特許請求の範囲に含まれるか?」の判断がしにくい場合があります。例えば、特許請求の範囲で使われる用語の意味が不明瞭な場合です。
身近な例でいうと…「ウルトラマン」と言ったときに、
・「初代ウルトラマン(狭義)」を指すのか?
・「歴代ウルトラマンの集合(広義)」を指すのか?
という状態です(伝わるかな…)。
ここで、第七十条2項が登場します。
第七十条2項の解説
2 前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
第七十条2項によれば、特許請求の範囲で使われる用語が不明瞭な場合は、明細書や図面を参酌して、特許請求の範囲を解釈すればいいんですね。
先ほどの「ウルトラマン」の例でいうと、おそらく文脈から「初代ウルトラマン(狭義)」「歴代ウルトラマンの集合(広義)」のどちらを指しているのかはわかるはずですよね。
明細書や図面は、文脈の役割を果たすというわけです。
ここで、もう一度、第七十条1項を見てみましょう。
第七十条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
特許発明の技術的範囲は、「特許請求の範囲の記載に基づいて定める」と言っています。第七十条2項の内容も踏まえると、特許請求の範囲の記載のみで特許発明の技術的範囲を厳密に定める、すなわち、
特許発明の技術的範囲 = 特許請求の範囲
というよりは、
特許発明の技術的範囲 ≒ 特許請求の範囲
ということが、第七十条1項、特に「…に基づいて定める」という文言に表れているように思います。
第七十条3項の解説
3 前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。
出願するときには、特許請求の範囲、明細書、(ある場合は図面)と共に要約書を添付します。
第七十条3項は、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈する場合に、要約書は参照してはならないということが定められています。
要約書は、文字数制限があるので、ざっくりした内容しか書けません。なので、要約書で権利解釈されるとしたら、実務者としては困ってしまいますね。
まとめ
ということで、今回は特許法 第七十条を確認しました。
特許発明の技術的範囲の認定に関連する判例などもたくさんあるので、今後見ていきたいと思います。