介護がくれた、豊かな時間
定年退職した、かつての職場の先輩が、今でも時々手紙をくれます。
中身は、いつもほんの数行で、繋がっているLINEで一言で送れるのに、年に1〜2回、ふと手紙をくれるのです。
退職後、彼女も自宅で親を介護しています。
退職したばかりの頃、彼女から届いた手紙に、こう書かれていました。
「わざわざ出汁をとって、味噌汁を作ってみたりしています」
一緒に働いていた頃、私も彼女も、連日、早くから遅くまで職場で時を過ごし、さらに仕事を持ち帰ることも少なくありませんでした。
「味噌汁は、ちゃんと出汁をとっているか?」
彼女と、そんな会話はしたことがありません。
でも、出汁をとるような毎日ではなかったことを、お互い、よくわかっているのです。
昨日、私も、あんこから、おはぎを手作りしてみました。
実は、おはぎを作るのは、今年になってから3回目。というか、あんこを豆から作るのですら、人生で3回目。
今回が、今までで一番上手に、あずきを茹でることができました。
これまでも、作ってみたいと感じることはあっても、実際に作ってみようと思うことは、一度もありませんでした。
堀金の道の駅で売られているあんこのおはぎが、手作りっぽい味で、とても美味しくて、
コンビニのおにぎりなら、1個でお腹いっぱいになる父が、ペロッと3個も食べたのを見て、私でも作れるかな?と思ったのが始まりです。
早速、スマホでレシピをググるも、どれもちょっとずつ作り方が異なり、なかなか上手くいかなかったのですが、
3回目の昨日、やっといくらか美味しくできあがりました^ ^
どーんと、大ぶりなおはぎが6個、目の前に出されると、認知症の父は、
ふふぉふぉふぉと聞きなれない笑い声をたてて目を細め、
案の定、ペロッと2個平らげたあと、3個目にも手を伸ばしました。
「そんなに食べられる?」と聞くと、
「だって、これ美味しいんだよ」
と父。やっぱり、3個食べてしまいました。
ワーキングママが当たり前の今日、必ずしも、手料理が家族への愛情を示すものではないと思っています。
ただ、今こうして、昭和さながらに、"時間をかける方を選択してみる"ということをしてみた時、それは、家族に対してだけでなく、他でもない自分自身への慈しみのひと時でもあり、
人生の暫くの期間、こうゆう時間をもってみるのもいいものだなと、感じています。
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