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【終】苦しさと恋と夢が混ざった中3の夏③


先生との文通は私が教室へ戻れるように
なってからも相変わらずだった。

どういう筋からかは覚えていないが、
K先生が私の腕の傷について知ったらしい。

「何か困ってることがあれば聞くよ」

これまで私は自分の苦しさの理由を
誰にも話してこなかった。
行きたくない。人目が怖い。そんな曖昧な
言葉で隠し続けていた。

できることなら打ち明けて楽になりたかった
という思いもあったかもしれないが、
中学3年生の私には、男子中学生の興味に
唆され自分の裸を晒したという事実そのものが
恥ずべきもので、私の罪だと信じてやまなかった。

先生になら言えるかもしれない。
そんな風に思った私は放課後に話をする機会を
作ることになった。


後輩が部活の時間。K先生の顧問である
テニス部の横の教室をカーテンで締め切り、
薄暗い教室の中で話は始まった。

結論から言うと、私は言えなかった。
恋をしている先生に自分の恥ずかしいことを
言えるわけがなかった。

ただ、自分の苦しさ、怖さ、リストカットの
依存性のつらさを泣きながら話した。
先生は話を聞いて涙を流してくれた。

「つらかったよな。
でもやっぱり自分を傷つけるのはやめてほしい。
カッター預かってもいいか?」

その先生の言葉に私は頷いた。
先生の涙を見たとき、私の恋は憧れに変わった。
十数年経った今でもその先生のことは大好きだ。
でもそれは、
「あなたと結婚したい」ではなく、
「あなたと一緒に働きたい」に変わった。

こんな風に担任でもない同じ学年というだけの
生徒にこれほどに時間を割き、涙を流せるほど
愛情を注ぐことのできる教師になろうと思った。
そして、同じ職場で先生の力になりたいと思った。

10年後、私は養護教諭として働くことになった。
K先生とは同じ地区で勤務している。
私が夢を叶える日も近いのかもしれない。

私の中学生の苦い思い出であり、恋であり、
そして夢の始まりになった昔の話。


------------ おわり。



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