【アルツとレビー . 明るいニート】 ~父レビーになる~ PART 5
実家に戻ると介護は前にも増して過酷だった。
父は家に帰って来ても、せん妄の症状は改善しなかった。尿道カテーテルは尿道の亀裂もまだ回復してなかったので外していた。残尿と傷の様子を診てもらう為週に一度A総合病院に通院していた。母の担当のケアマネージャーさんに父もお願いし迅速な対応をして下さり、父も母と同じデイサービスに通所出来るよう段取って下さった。
私は独身の時は銀行勤務をしていて、結婚後しばらく専業主婦だったが下の子が小学校に上がった頃、家の近くにコンビニができ、接客業が好きということもあり、それから16年パート勤務をしている。この状態になって仕事を辞めることも考えたが、まだ大学生の子どももいてお金も掛かる。そして何より仕事をしている間は現実を忘れることができた。
それからはパートをしながら実家に寝泊まりして弟と交代で介護した。父は相変わらず、何もいない方をみて
「ワンちゃんだ!おいで、おいで!」
と言ってこの頃は抱っこして撫でる仕草までする。旦那に言わせると父は大の犬好きだからいいけど自分は苦手だから見えたら卒倒すると言っていた
この前は薄暗い部屋の片隅を指差して
「ほら!そこに子どもの足がある」
と言って皆を震えあがらせた。昼は比較的良いのだが夜中のおむつ交換の時は寝ぼけもあるのだろうが目が座っており私は父の攻撃のジャブを交わしながらおむつを替える。
こんな日々が続いたある日、父と母をデイサービスに送り出し実家の洗濯を済ませゴミを出し自分の家に帰った。
「ふぅー.....」
と、ため息をついてソファーにどしっと座り無感情でパソコンを開いた。『認知症』と無表情で打った。
(認知症....種類?)
(レビー小体型認知症??)
私は前のめりになり急いでレビー小体型認知症を開いた。
「えっ」
「えっっ。えっー!」
「なにこれ?」
レビー小体型認知症の症状
○パーキンソンの症状:手足の震え、動きが遅くなる。
○幻視:存在しないものがみえる。小動物や人かげなど人それぞれ。
○認知機能の変動:特に夕方になると症状悪化
アルツハイマー型認知症のように物忘れは初期の段階では見られないため発見しにくい。他にも様々な症状があるが、比較的最近発見されており認知症全体の約2割がレビー小体型認知症とされ、女性よりも男性に発症することが多い傾向があるとあった。
父がはっきりそうかは断言できないが今までの色々なことが腑に落ちた。母がアルツハイマー型認知症だったので私の中では、認知症=記憶障害。物忘れ。同じ話を何度も繰り返すオルゴールの症状と思い込んでいた。ましてレビー小体型認知症の名前すら知らなかった。でも私は落ち込むと言うより嬉しかった。父はやはり病気だったんだと思い安心した。
弟に直ぐに伝えると、すがる思いで調べ尽くしたそうだ。安心はしたが、でもそうだからといって父の症状は変わらない。ある日の夕方トイレの中で
「おーいっ!誰かがガスを投げ込んだー!殺される!誰だぁー!」
と大声でを出している。私はトイレの前にいたのでドアを開けた。父の声を聞いて2階から慌てて降りてきた弟は階段を4,5段踏み外し、滑るように落ちた。
私 「大丈夫ねーーっ!?」
弟は上半身起き上がり下を向いて泣き出した。
弟 「姉ちゃん......もう無理。限界ばい.......」
「一人にしてくれ!お願いだから寝かせてくれー」
もう何も言葉が出なかった。私も疲れて座り込み、二人で泣いた。
その夜、仕事帰りに旦那に来てもらい今日の出来事を話した。すると旦那が
旦那 「おとうさん!お母さん! 二人ともうちにこんですか!」
そして弟に
旦那 「しばらくゆっくり休んで、落ち着いたら仕事を探せ。なんも心配せ
んでよか」
と言ってくれた。ありがたかった。私の両親だ。確かにありがたかった。でも、これからどうなるのかと思うと不安というより怖かった。
翌日、以前受診した内科の先生を尋ねた。先生は父と母が通っているデイサービスやショートステイ、グループホームも運営されている。先生によるとせん妄の可能性はまだあるが、症状からレビー小体型認知症でしょうと診断された。
父はレビーだったのである。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
お話ししたい事が溢れ長文になってしまいました。
次回は 明るめタッチの ~ばーちゃん実はボケてないんじゃないの?~を書きまーす。読んで頂けたら嬉しいです!
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