「振りむけば……いたのはオマエ」の話
岡山の玉野市は……
数ヶ月前から、つくね的にアツい場所だ。
カレーの美味しいカフェレストラン「時代屋」に無印良品や図書館もあるメルカというショッピングモールをはじめ、個人でやってる喫茶店なんかも、とても良い。
瀬戸内国際芸術祭の舞台となる宇野港周辺には
パブリックアートが満載なんだ。
本来ならそれらについて色々と書きたかったのに……
なんの因果かバッタの手先。
さて。
毎朝、お庭の花や芝生に水やりをする。
立水栓の辺りへ行くと
ピョーン。
カエル……か?
ノン。
バッタだ。
5センチ程の茶色いヤツ。
「うおっ、でかっ!」
つくねは……残念ながら
昆虫のことはそれほど。
毎日水やりしてて毎日ピョーンって主張するので。
「君も生きてるから仕方ないけど、あんまり、花の葉っぱとシソはさ……食うてくれるなよ。雑草と呼ばれるモノを食べておくれよ」
と声をかける。
今日はその後、玉野へ向けて出発。
途中、寄り道をしたので走行距離は軽く30kmを超え、1時間ほどかかり、現地へ到着。
(え……?)
ふと感じる気配。
運転席側のドアのすぐ上の窓に……
バッタ!!
「えっ?キミ、いつからおったん?ウチから……な訳ないかー」
そーいや、この前……
こんな事があったけどなー……
そして、しばらくするとすっかり忘れて、図書館で本を読み、お腹がすいたのでカレーを食べた。
よし!
腹ごしらえもしたので、次はカインズへ行くか!
2時間ほど経って車に戻ると……
ひょこっ。
「まだおるっ!」
え……
どうすれば?
幸い。
ドアの取っ手から少し離れた場所に彼はいる。
ええい、ままよ!
つくねはさっとドアを開け、車へ乗り込んだ。
バタン。
「はわわ……まだおる!」
ま、そのうち、離脱しよう。
車の加速に耐えられる訳がない。
文明ナメんな?
走り出す水色のムーブキャンバス。
つくねと……
バッタを乗せて。
そよぐ君の……
触覚。
(うはー……)
赤信号で止まると、少し場所移動。
(緊張感あるわ……)
児島湖を渡るので、とても良い眺めなのに……
快晴で絶好のドライブ日和なのに……
バッタが気になるッ!!
(どーせならカエルの方が良かったな……)
そんなこんなしているうちにカインズへ到着。
買い物を済ませ戻ると……
ひょこっ。
(そーでしょーとも!!)
バタン!
4回目のドアの開閉にも、わずかにズレるだけ。
(ですよねーっ!)
そしてまた……
揺れる触覚。
(いーよ、家まで連れて帰ってやるよ。でも、家に着いたら長めの棒かなんかでツンってして、そこどけてもらうからな!)
脳内に直接語りかけた。
そして。
長い長いドライブは終わり……
我が家へ到着。
「はー……何か、疲れたな」
とドアを開けると。
ただいまーっ!
と言わんばかりに、秒で庭へ飛び立ったバッタ。
「えーっ!マジで!?」
さっきまでビクともせんかったのに……
君は本当にウチの子だったんですかと。
生命の不思議を体験した夏の出来事であった。