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いつもより一時間早く起きた朝 ほんのり甘い匂いがした 雲はひとつもない青ばかりの空で 苺で…
冷たい強風に煽られながら 駅までの道を歩いた マフラーを忘れて寒さがしみる 午後二時のホー…
草木が雨に濡れた匂いで空が咲いた さよならが心に到着するのを待って 水色と薄朱色がマーブル…
濃紺の夜空に真鍮の三日月が刺さって 傷口からじわりと滲む冷たい血液 わたしを静かに蝕んでゆ…
もう夢なんて見たくないと言って 途方に暮れたまま夜明けが来てしまった 永遠に真夜中を願って…
記憶の蓋をひらいてウミガメの産卵 ぽろぽろと産み落としてく言葉を 丁寧に文字にして並べてい…
黄昏に頼りなく瞬く星を見つけて 曖昧な心の輪郭を指先でなぞった いつだってそこに在るはずなのに 眩しすぎる光のせいで見えなくなる 魂がこの一瞬を生きようとするとき わたしという小さな箱を飛び出して 裸の心と手を繋いでまっさらになる たとえ始まりがどこにもなくたって たとえ終わりが見えていたとしても わたしはわたしを生きると決めて 細く繊細な雨が世界を白く曇らせても 青を失った空が永遠に泣いていても 黒く光るアスファルトの切なさだけは 橙色の花模様がなぐさめてくれるから
くちびるから落ちた言葉が星屑になっても 早くわたしを迎えにきてなんて言わないわ これ以上あ…
今あなたが見ている真夜中の月は私 今あなたの瞼を照らしている月明かりは私 今あなたに好きっ…
電車の窓に描かれた風景画 線のように後ろへ流れていく 次の駅がどこかもわからない なんとか…
わたしがまだ小さな海月だった頃 世界は青ばかりで優しかったのに 本物の月を見たいなんて言…
心のスイッチはもう切れている だからなにも感じないし痛くない そんなわたしは命というものを…
甘くて芳醇な香りが 鼻腔をすり抜けて全身に広がる ゆっくりと琥珀色の液体が 喉を滑りおちて…
嘘みたいな青空の日に わたしは自分をなくした なんども言葉に切りつけられて なんど心を捻じ切られても それを許していたのは自分だった 傷だらけで ねじれていて 歪んでいて 絡まっている うんざりするような現実から 今すぐ飛び降りてしまいたい 風のように自由でいたかった 波のように孤独でいたかった わたしはわたしに戻りたかった 痣だらけの塔 / 月乃