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ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」 (坂本貴志 講談社現代新書 2756)から学ぶ

 自分は教育経営学と社会科教育を軸足に(2本あって軸足になっていないですが)実践や研究をしているのですが、いずれも日本の経済とは切っても切れません。

 と、いうわけで、年末に読んだ一冊です。

 日本の経済がこれからどのようになっていくのか、少しでも学べればと思い手に取りましたが、相当勉強になりました。
 以下、自分が刺さったところを抜粋です。(ほぼ忘備録です)

・近代で日本のような大きな経済規模を有する国において、人口が持続的に減少した事例は他に類を見ない。
・これからの時代 工事が受注できなくて倒産する企業はないでしょう。しかし、人手が確保できずに倒産するということはありうると思います。
・人口減少は生産や 消費の減少 要因になることから、 経済規模に直接的な影響を与える。一方で、 高齢者人口比率の上昇といった年齢の構成比の変化は、 経済規模 というよりも、経済の需要と供給のバランスに影響を与えると考えられる。 

・一方、 ドイツの出生率は、他の先進国の出生率が軒並み低下してる中で、例外的に上昇基調に転じている。現金給付 や 現物給付の拡充 など各種子育て 支援などが奏功したものとされているものの、 これには 過去に流入した移民による出生増も大きく貢献している。

・長い間、 日本は国際的に見ても労働時間が顕著で長い国であった。 しかし、 近年、 日本人の労働時間は長期的に減少を続けている。

・労働者にサービス残業させることで利益を上げていたような企業があるとすれば、 労働者が長時間働いてくれなくなることは 痛手になる。 しかしその一方で、 法令を遵守している企業であれば、 基本的には 時間外労働の分だけ割増賃金を支払わなくてはならないことから、 残業が減れば 人件費を節約することができる。その意味では 残業時間が減ることは事業者にとっても必ずしも悪い話ではない。 

・このペースで 医療・福祉産業が膨張していけば、 2030年には日本で最大の雇用を抱える 産業になるだろう。
・ 人手不足による労働市場からの圧力が、日本経済のデジタル化を推し進めるのである。

・輸送料や 積載率 最大化に向けた大きな課題の一つが荷姿の標準化である。

・スーパーでレジ袋を担当する従業員の割合は概ね 全体の2割から3割。 人件費に占める割合が大きい中で、他部門のように発注や 品出しといった複数の作業ができず、レジに立ちっぱなしで客を待つほかないという点も経営上の大きな課題となっていた 。

・飲食・ 宿泊業界は インバウンドで需要が増える中、深刻な人手不足に陥っている。一方、 賃金水準はあらゆる職種の中で 最低水準となっており、 産業構造の高度化に向けての課題は大きい。 

・実証を通じて気づいたのは、 ロボットだけで業務を完結するのは医療では難しいということ。 むしろ、人がやっているところを ロボットで補完するという ハイブリッドな活用法が良い。雑務に費やす時間が半分になるだけでも、導入する価値は十分にあると感じました。

・いくら 介護ロボットや ICT を導入しても、それを使いこな せなければ 業務は 効率化できません。 若い世代はスマホが使うように簡単に判断して操作できますが、 60から70代になると「 どうやって立ち上げるの?」というところからのスタートで、リテラシーに課題があります。

・ (デフレ下の日本)つまり、安い労働力を存分に活用できる環境が、安くて質の高いサービスの提供を可能にし 、物価の上昇圧力を抑制してきた。 

・一方で、悪いことばかりが起こるわけではない。人手不足が深刻化する将来においては、 高齢者でも比較的高い賃金で働ける可能性が高まるからである 。

今後、日本の人口が減少していく中、世界経済における日本経済のプレゼンス が相対的に縮小していくことは避けられない。 

・日本で米国 ビッグテックのような企業を作ろうというのは 現実感のない目標であるかもしれないが、 例えば 産業用ロボットは日本の得意とする市場であり、センサーや 半導体製造装置など要素技術において 世界に誇る日本企業はたくさんある。

・一方で、 そもそも、 医療・介護サービスについて 安くて質の高いサービスにフリーアクセスできる環境を実現するということは、非常に難しいことである。

・このような状況を 鑑みれば、 世界でも最も深刻な 出生率の低下に悩まされている国の一つである日本でおいては、 少なくとも 世界で最も 家族関連の支援が充実している国と言えるぐらいまでは、 現物・ 現金給付にかかわらず 給付を徹底的に拡充していくべきではないか。 



 少子高齢化、人口減少真っ只中の日本経済の、現状や背景、産業別の具体などがデータ豊富に網羅されており、現状を把握し今後を見据えるための良書だと感じました。

 人口が増加に転じたドイツやイタリアには、移民というカラクリがありました。しかし、歴史文化等の違いから、じゃあ日本でも同じように…とはなかなかならないでしょう。
 
 一方で、「光」の部分も多数示されていました。
 事実やデータをもとに現状や今後を見つめれば、必要以上に悲観することも、楽観することもないと、この本から学んだように感じました。

 最後までお読みいただきありがとうございました。


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