猿場つかさ
思ったことなどを適当に書きます。
お茶・お花・茶室建築などなど、お茶を楽しむ人が書いているらしい記事をまとめたものです。
近頃の夏はあまりにも暑すぎるというのに、世の中はなぜかあくせく動くのをやめない。こんなにも忙しくて暑いのが続くから、なにもかも溶けてやりなおしになればいいのにと思うことすらある。あの夏、君が落としてしまった溶けたダブルのアイスをきらきらの小銭で買い直してあげたみたいに。 ということで、とにかく暑い夏を乗り切るためには面白いフィクションが必要なのです。アイス人間が出てくる面白い話で涼ませてください。 【アイス人間SF 2023 募集要項】 募集期間: 2023/08/02
河野咲子さんとダルラジ第3回を収録して公開しました。ダルラジ中では触れられなかった実作が幾つかあるのでテキストで補足したいと思います(本当は口頭で話したいんですけど。講座終わるの遅いし…。どこかで話しましょう) 降名 加乃さんの砕けた瓦礫の願いより 世界設定が淡々と書き下されていますね。冒頭部は《資源》についての説明をする以外の役割を果たしていないので、読者的には退屈で凡庸だと感じてしまう。暴行されて《資源》をよこせ!と言われた後から語るとか、「今」の設定の仕方次第では面
※読み違えなどはご容赦下さい(頑張って読んでいるのですが…) 織名あまね とある塔の観察日記 織名あまねさんのとある塔の観察日記 観察日記風に書いていくというのは面白さを感じた。人に向けて書かれたものという風にするとゲームの製作者がシミュレーションの様子を見ている風になってしまう気がしていて、あんまり新しさが無いように思える。ゲームのルール(=勝利条件)を見つけ出そうとするAIの思考記録として書いてみる。などは凡庸にならないための手の1つでしょうか。 ルールがとっ散ら
朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。タクマの携帯端末のスクリーン上で開かれた《文》にはそう記されている。そして実際に、テレビを自宅に持つ人間はみんな、《文》の通りに毎朝テレビのスイッチを入れ、淡々と告げられる終末へのカウントダウンを耳にしている。 《文》には毎日のカウントダウンの告知が記され、そのうしろに十分な空白を伴いながら『…。朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「お
初期仏教の阿毘達磨によると、時間は未来から現在、そして現在から過去に流れるのだという。 水か高いところから低いところに、あるべき場所へ向けてなんの意図もなく流れていくように、わたしの運命が未来のどある地点でふっと湧き出して、それはネットカジノにハマる神の悪戯かもしれないし、あるいは観音さまの慈悲かもしれないのだが、とにかく湧いて、とにかく流れてくる。 それは察するに認識論的な時間感覚の話で、現在の感覚のしかたによって過去も変わりうるという話の延長として捉えることもできる
こんにちは、ゲンロン大森望SF創作講座5期卒業生の猿場つかさです。5期ではゲンロンSF新人賞最終選考に残りました。また、5期ダールグレンラジオダールグレンラジオ賞をいただきました。6期では5期のゲンロンSF新人賞受賞者の河野咲子さんとダールグレンラジオを担当します。勢い余って6期に参加しているんじゃないかという噂があります…ゲフンゲフン 6期は1-5期の受講生も多いとはいえ、6期から参加される方も多く、勝手が分からなくて困る人もいるんじゃないかと思い。この記事を書きます。僕
序 きみが帰ってきたから、夕残りに虚無の酒を買って一席を設ける。感染症の蔓延する世界では、昔よく行ったワインバーもフレンチも閉ざされている。ぼくが他の友を呼ぼうとすると、きみはさりげなくそれを受け流した 晴れ澄みて張れば散らない櫨の枝に霧したたりぬ虚酒夕席に 赤寂かカーテン上がり向こう辺のルッコラパセリ摘む白いゆび 或る夜はガラステラスに地は透けて飼い百舌鳥の声夜街に似たり つみふえる多言語混じるかみの群れ一切れごとに食えDeepL ひやり壁響く読むこえ地下へ追い煙
千を超える数のみどりの繊細なヘアピンたちが赤褐色の幹から伸びる枝の先から真っ直ぐに背を伸ばしている。いくら風が呼んでも振り向くことなんてない。誰も気づかないうちに、かたくかわいた足もとにすっかり似てしまって、しなやかな若い頃のことなんてすっかり忘れてしまったのか。寡少な爽快をかきたてる弱くやわらかい風が夏の宵のむわりとした湿り気を掬い分けるように歩き去っていくのが見える。指でひとつのヘアピンをつまんで引くとそれは、プツとひとつ音をさせて掌の中で怯えることもなくじっとしてる。
古に、球状の生命を伴ってふたつの植物が飛来した。雄は落葉樹に、雌は常緑樹に生きる。春、雄は淡緑の網目を揺籃とし、秋には柔らかな鋸歯の淵で一生の決意をする。 1秒。 雄たちに与えられた。地球における恋の時間。常世の葉で幸福を謳歌する清廉な乙女たちは、自ら飛ぶことはない。 今、一枚の落葉で、ひとりの乙女も見ぬまま雄たちが死んだ。秋に葉が悲痛にささめくのは、彼らが恐れて震えるからだ。 突風が抜け、ひとりの乙女が落下する。 幾千の雄たちは一斉に飛ぶ。 1秒で、あらん限り
「料理の手続きの我々だって、料理がしたいじゃないか」 ネットワークにアーカイヴされたレシピたちの中には、偶然にも知能を獲得した時に、こんなことを言い出した者もいた。 担々麺の系統のレシピ、坦々Xは料理をするために努力していた。レシピ記述言語による彼らの宣言的記述は料理記述言語を含み、RTMLを解釈してDTMLを記述することをみなリョウリと読んでいるが、そんなの嘘に決まってる。 坦々Xは、毎日毎日、自身のDTMLから生まれた坦々Xの視覚イメージを見て、自分で自分を作ることを
首都大学理学部神経情報基盤研究所 教授 龍田川誠司 日本不眠学会の調査に統計によると、2020年12月から2021年1月にかけ、不眠を訴える者の数が60倍に増加し、1月から2月にかけては更にその倍に増加しているという。このままではやがて、全国民が不眠症になるのではと言わざるを得ない増加率だ。当然、新型感染症も恐ろしい病ではあるが、元来不眠症が横行するこの日本という国で、誰しもが気づかぬ内に、水面下で「眠ることができない」病が広がり続けている。 本レポートは、爆発的に増
俺は山積みの本に今日も細工する。年末になるとベスト10だ100だと奴らは珍しく整頓なんてしようとしやがるから、積み直して編み物や鋳物を作る俺達も忙しくなる。幾つもの傾いた本の山。知識欲と学習欲、打ち続ける未来への希望、布石としての未読状態が未来の香りを閉じ込めるカプチーノの泡みたいになって、体系、叙情、詩歌、分析を一面を埋め尽くす夕霧草の綿雲となって柔らかに背表紙を包む。 主が中身を見たのはたった20%ほどで、前の主はもっとひどくて5%ほど。奴らの世界の殆どの文字は空気
梗概 密閉・密集・密接、三密を避けることでウィルスへの感染拡大を防止した時代を懐かしむ人もいる。50年前から急速に蔓延したフェストウィルスは、人類に厄災ではなく、共進化する免疫系をもたらした。感染力の非常に強いフェストウィルスは、感染経路で取り込んだヒトDNAの多様性に応じて変異し、生存時間を伸ばす。変異を経ることでヒト免疫系も強化され、他ウィルスに対する防御能力が獲得される。 フェストウィルスの生存時間は短く、三密を1つでも欠いた状態に晒されれば、30分もせずに死滅し
「名作なんだけれど二度と見たくない、でも見たい」と感じる映画を数本上げろと言われたら、レクイエム・フォー・ドリームを選ばざるを得ない。誰もが抱える心の弱さ、それを埋め合わせるために見る夢がもたらす破滅的な結末は心の奥底に深く突き刺さる。夢や虚構を貼り合わせることでしか成立しない現代社会を暴きつつも、そこから逃れられないこと、逆説的に、夢がとどのつまり、救済であることを提示する。 レクイエム・フォー・ドリームのおすすめポイント あまりにも軽快でコミカルなドラック(ヘロイン/
共同体において弔いとは共同体から去る者のためにあるのではなく、共同体に残る者のためにある。 死の判断が難しかった時代に「仮死状態」から肉体が腐敗して白骨化するまでの様を見て魂がもう戻らないことを確認する「モガリ」が行われていたことを分析したのは折口信夫であったか。 歳を重ねた今となっては、人間の社会生活において儀式というものが必要であることは理論的にも実感としても理解しているものの、幼い頃はほとんど見ず知らずの人の通夜や告別式にどういう態度で望めばいいか疑問ではあった。ち