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かざみどり | ショートショート

自らの意思で動かせなくなった自分の身体を、骨を、髄を。この場所に捧げてから幾星霜が経った。


これまで僕は、誰かの代わりに、誰にも辿り着けられない地で、風の流れを、強さを読み続け、人々に伝えてきた。


今までこの地は、幾多もの困難や不幸に見舞われてきた。時には嵐に見舞われ、戦火にも巻き込まれたりしていた。


それでもここに住む人たちは、自らの意思を共有し、何度でも立ち上がって今に繋げている。


彼ら彼女らの「生きる」という本望は素晴らしく、痛み切ったボクの身体を治してくれることもあった。


だからこそ、その意を込めていつか恩返しがしたい。けれど僕には、ただ風を読むしか役を果たせない。これまでも、そしてこれからも。


間も無くこの地にも災厄が待ち構えている。けれどこの人々たちは、決死の覚悟を持って立ち上がることだろう。


そんな中で僕が出来ることはただ一つ、風を読み、そしてそれを誰かに伝えるだけ。


この地に幸多からんことを、祈りにこめてー。



(410文字)


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タダノツカサ
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