続・落とし物を拾った日
先日、落とし物を再び拾ってしまった。
朝のうちに、先週一週間で溜まりに溜まった燃えないゴミの他、これまで出せず仕舞いとなっていた空き容器や古紙などをまとめて捨てにいく用事があった。
ここしばらく雨に見舞われ出しに行けなかったせいで、思った以上に捨てる量が多くなってしまった。わずかに離れた距離であるとはいえ、往復するのも少々手間だと感じていた。
そのため、今の住居に引っ越すタイミングで購入した、折り畳みタイプの小さな台車を用いて様々な類のゴミをまとめて積み、指定の集積所へと向かうのだった。
一人暮らしでの台車は、あまり馴染みがないかもしれない。が、今回のように両手が塞がってしまう物を中心に運ぶ機会が多い私にとっては、これが意外と重宝している。
話は元に戻るが、集積場でまとめてゴミを捨てたところで家に戻る途中、その落とし物を目にしたのである。公には言えないが、それは明らかに紛失してしまったのがわかった日には、誰もが間違いなく焦るであろう代物であった。
先日…2、3週間前に落とし物を見つけたばかりで、場面は違えど再び遭遇してしまうことになるとは、夢にも思わなかったことだろう。ソレが自分の目についてしまった以上、どうしても見過ごすわけにはいかなかった。
前回拾った時は、近くに人が常時いる屋内だったが、今回に至っては屋外だ。しかも場所がわりかし人通りの少ない中、持ち主がいつごろ不意に落としてしまったのかでさえ、この時点で何も手がかりもつかない。
「どうしたものか」と、立ち止まって嘆いている場合ではなかった。落とし物に 目線をうつしたままでは、これよりこの場を通り行く人から、自分がある意味で不審者(?)とみられてしまうことになりかねない。
ただ幸いなことに、自宅の近くには交番がある。というか解決へと導く手段は、自らそこに出向くことしか残されていない。家に戻る前に一先ず、落とし物を届けるべくそこに向かうことにした。
ちなみに今までの人生の中で、交番に行く機会はまったくなかった。ただゴミを捨てに行くだけの予定が、このような形で初めて交番に足を運ぶことになるとは、いろんな意味で思いもしなかっただろう。
それにこの時の私は、全身ラフな服装であるうえに、ゴミをまとめて捨てに行くために持ち出した台車を背負っている。
はたから見ても、シュールとしか言いようがない格好だ。しかしながら「あれはいったいどういう状況なのか」などといった周りの視線などを、1ミリたりとも気にしている場合ではなかった。
最寄りの交番に到着して落とし物を提示すると、お巡りさんからソレを発見した場所の位置確認と、差し出された届出用紙に拾った本人(私)の名前と住所の記入などを求められた。
意外と時間がかかるかもと考えていたが、手続きはあっさりと進んでいった。そして最後あたりに「お礼状は必要ですか」と聞かれたが、私は受け取ることや連絡をもらうことも断りを入れた。
とはいったものの、あれから数日経過してから、落とし物は無事に持ち主の手に戻ることができたか、少々気掛かりではあった。
少なくともその場で交番に届けた時点で、邪な者の手に渡り、悪用されるような心配はないはずだ。
だが、落とした本人が最寄りの交番へと向かわず、別の手段でもって何かしらの手続きを踏んでいる可能性もある…とも考えてみたが、これ以上の詮索は無用だろう。
自分の一連の行動が、もしかすると無駄になるかもしれない。だとしても、今回の一件で、自分にできることを務めた。今はただ、そう言い聞かせておけばいい。