冬の茜空に違和感
昨年と比べて、日没が遅いと感じるのは自分だけだろうか。
午後4時半ごろ。飲み干した缶を捨てるため屋外に出て、会社の向かい側に設置されている自販機の隣に置かれたリサイクルボックスを目指す。
円状にくり抜かれたその穴に空き缶を入れ、中で「ガコン」と缶同士がぶつかる音を聞いた後で何か違和感に気づく。
夕方の時間帯に差し掛かってきたが、周囲はまだ明るいなと咄嗟に思い、自分が向いている方向より先に広がる空を見渡す。
時刻はまもなく午後5時を迎える。そんな中、西の空は夜であることを示す黒一色に覆われることなく、ほんのうっすら茜色に染まっていた。
奥の方で太陽が若干沈みかけているのを一目でわかるものの、辺りは街灯を頼らずとも、何の不自由もなく歩いていける明るさを保ち続けている。
明るいのは良い。願わくばさっさと仕事を済ませて、この明るさのまま家路を辿りたいところだ。
ただ、今も冬の季節の真っ只中で夕焼け空を見上げるたびに、何かが引っ掛かっているのである。
「そういえば、去年もこんなに明るかったっけ…?」
1年でもっとも昼の時間が短いとされている冬至を過ぎてから、まもなく1ヶ月が経とうとしている。
先月ぐらいも午後5時を過ぎた時点で、街灯かあるいはヘッドライトなどがないと暗すぎてよく見えないほどであった。
そんな先月と今を比較して、はたしてこんなに日の入りが急に遅くなってきただろうかと、疑問にならざるを得ない。
それに自分の記憶が正しいものとするなら、去年の今頃も空はすでに暗闇に包まれていたと思う。
その時もその時とて、辺り一面真っ暗闇になるたびに「すっかり暗くなってきましたね」とほぼ毎日繰り返していたことも思い出していた。
その一因について「気のせいじゃないか?」とあっさり返されることもあれば、「暖冬の影響じゃないのか?」や「ここ数年の異常気象のせいかも」などと、もっともらしい意見も中にはあるかと思う。
そんなことよりも、日没について早いだの遅いだのと気にすること自体、ただの杞憂なのかもしれない。
それでも日の入りが例年と比べて遅いと感じるのは、やはり自分だけなのだろうかと、どうしても感じてしまうのだ。
あとおよそ一、二ヶ月待てば、春の季節がやってくる。
やがて訪れた際には、冬場でこんなふうにして抱いていた疑問も、氷のように溶けては忘れていくことになるだろう。
決して大それたことではないけれど、些細な物事に対して疑問に感じたことでも、その瞬間を忘れないように書き留めておきたいものである。
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