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政治(防衛)講座v390「窮鼠,猫を嚙む:核兵器の恫喝の現実化」

 何が契機になるか不明であるが、国連安保理、国連総会も機能しない状態をみると、第三次世界の勃発が現実のものになりつつある。上げた拳を下ろせないロシアのプーチン大統領、不動産バブル崩壊で苦しむ支那の態度、どちらの味方をするかは不明なインド、不況で喘ぐ国民の不満を外に向ける目的で台湾侵攻の懸念が拭えない。打ち上げ花火で注目を集めようとする北朝鮮、先日、ハワイ旅行で真珠湾記念館を見学してきたが、現在の情勢が82年前当時の世界情勢に酷似しているのが気がかりである。
「A Gathering Storm」は真珠湾記念館のパネルの表題である。

政治(歴史)講座ⅴ386「太平洋戦争(大東亜戦争)の始まり:真珠湾攻撃を回想する」|tsukasa_tamura|note

            皇紀2682年9月30日
            さいたま市桜区
            政治研究者 田村 司

はじめに

弱い犬ほと吠えるという。窮鼠猫を噛む問い諺もあり、余り追い詰めると手痛い反撃を食らう。今のロシアを追い詰められたネズミのようなものである。

核兵器使用すればロシアに「壊滅的な結果」と警告-米大統領補佐官

Tony Czuczka 2022/09/26 06:50

© Bloomberg Soldiers from the Russian National Guard patrol the area surrounding Saint Basil's Cathedral on Red square in Moscow, Russia, on Thursday, Feb. 24, 2022. Russian forces attacked targets across Ukraine after President Vladimir Putin ordered an operation to “demilitarize” the country, prompting international condemnation and threats of further punishing sanctions on Moscow, sending markets tumbling worldwide.


(ブルームバーグ): バイデン米政権はロシア政府に対し、ウクライナでの戦争で核兵器を使用すればロシアに「壊滅的な結果」をもたらすと非公式に伝えた。サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が明らかにした。

  ロシアのプーチン大統領は先週、予備役を部分的に動員すると表明した際、核兵器使用の可能性をあらためて警告。サリバン補佐官は25日、こうした核の威嚇は「極めて深刻に受け止めなければならないことだ」とCBSの番組「フェース・ザ・ネーション」で語った。

  サリバン氏は「いかなる核兵器の使用もロシアに壊滅的な結果をもたらし、米国と同盟国が断固として対応すると、われわれは直接、極めて高いレベルでロシアに非公式に伝えた。その必然的な結果についてわれわれは明白かつ具体的に通告した」と語った。

  トラス英首相は、プーチン大統領の警告で同盟国がウクライナ支援や対ロ制裁の継続を思いとどまるべきではないと述べた。

  トラス氏は25日に放映されたCNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」で、プーチン氏が「自由世界からの反応の強さを予期していなかったと思う」と発言。「われわれは彼の武力による威嚇や偽りの脅しに耳を傾けるべきではない」と述べた。

  サリバン補佐官は、米国が「ウクライナによる自国と民主主義の防衛の取り組みを引き続き支持する」方針を明確していると述べ、それにはロシアの占領地域の奪還でウクライナを支援することが含まれると指摘した。

  同補佐官はNBCの番組「ミート・ザ・プレス」で、ホワイトハウスとロシア政府が「高官レベルで直接話す」能力を維持していると説明。そうした対話はこの数カ月に頻繁に行われ、「この数日間にも」あったと明らかにした。こうした対話のチャンネルを開いたままにし、「核兵器使用という暗い道を進む」場合の結果について警告できるよう、同チャンネルについては具体的なことを公表してこなかったと述べた。

関連記事ロシア市民に戦争の現実、プーチン氏動員令で国外脱出模索が急増中国、ウクライナ情勢で「客観的かつ公正な」立場維持-中ロ外相会談プーチン氏のウクライナ戦争、「血の凍る思い」-バイデン米大統領ロシア部分動員は「プーチン氏苦戦の兆候」-ホワイトハウス高官プーチン大統領、ロシアは21日から部分動員開始-テレビ演説

原題:

White House Says Kremlin Has Been Warned on Nuclear Weapons (1)(抜粋)

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©2022 Bloomberg L.P.

ロシア・ラブロフ外相「ウクライナは対ロシア戦争の消耗品に過ぎない」

FNNプライムオンライン 2022/09/25 11:43

© FNNプライムオンライン


ロシアのラブロフ外相は国連総会で演説し、「ヨーロッパを服従させたアングロサクソンの国々にとって、ウクライナは対ロシア戦争の消耗品に過ぎないことは明確だ」と、西側諸国を批判した。

演説直後に行われた記者会見では、「部分的動員令」による予備役招集を受け、市民が国外に脱出していることを問われたラブロフ氏は「あなたの国では移動の自由を認める条約を批准していないのか」と答えるにとどまり、部分的動員令によるものとの言及を避けた。

ロシア核兵器使用、世界が認めず 「妥協不可能」=ウクライナ大統領

9/21(水) 23:43配信

ウクライナのゼレンスキー大統領は、世界がロシアのプーチン大統領による核兵器使用を許すとは思わないと述べ、ウクライナはロシア軍に占領された領土の解放を進めると改めて表明した。9月16日、キーウで撮影(2022年 ロイター/Valentyn Ogirenko)

[ベルリン 21日 ロイター] - ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、世界がロシアのプーチン大統領による核兵器使用を許すとは思わないと述べ、ウクライナはロシア軍に占領された領土の解放を進めると改めて表明した。 プーチン大統領はこの日、国民に向けたテレビ演説で、軍の部分動員令に署名したと表明。動員令は第2次世界大戦以来で即日適用される。西側が「核の脅し」を続けるなら、ロシアは兵力の全てを用いて対応すると警告した。 ゼレンスキー氏はこの数時間後にドイツのビルトTVのインタビューに応じ「プーチン大統領がこうした兵器を使用するとは思わない。このような兵器の使用を世界が許すとは思わない」とし、「プーチン氏はウクライナの次にポーランドの一部も編入する意向を示し、さもなければ核兵器を使用すると言い出すかもしれない。こうしたことには妥協できない」と述べた。 ウクライナはここ数週間で反転攻勢を加速し、ロシア軍から領土を奪還。ロシア軍は大きな損失を被っている。ゼレンスキー氏は、プーチン氏が打ち出した部分的な動員はロシア軍の失敗を反映したものとの見方を示し、「プーチン氏はウクライナを血で染めようとしているが、これには自国軍の兵士の血も含まれる」と述べた。 ロシアが実効支配するウクライナ南・東部の4地域で23─27日にロシア編入の是非を問う住民投票が実施されることについては、多くの国が承認しない「見せかけ」の投票にすぎないとし、「ウクライナは一歩一歩、計画通りに行動していく。ウクライナは自国の領土を解放する」と語った。

ロシアの核使用「破壊的結果」 米警告、制圧地編入加速

2022/9/26 07:35

サリバン米大統領補佐官(ロイター=共同)

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はロシアのウクライナ侵攻を巡り、25日放送の米CBSテレビの番組で、ロシアが核兵器使用に踏み切った場合は「ロシアに破滅的な結果をもたらすことになる」と警告した。ウクライナの親ロシア派が制圧地をロシアに編入しようとする動きが加速する中、ロシア側は編入地への攻撃に核兵器で反撃する可能性を示唆し、緊張が高まっている。

親ロ派がウクライナ東部ドンバス地域(ルガンスク、ドネツク両州)と南部2州で強行した「住民投票」は27日に終了し、ロシア側の編入手続きが30日にも行われると報じられている。ロシアのラブロフ外相は編入地域にも核兵器使用の可能性を含む軍事ドクトリンが適用されるとの認識を示した。

サリバン氏は、投票は「偽物」で認めないとの立場を強調し、制圧地域がロシアに編入されたとしても「ウクライナ領土として扱う」と明言した。(共同)

プーチンが「核攻撃」の引き金を引いた「原発狙い撃ち」の恫喝

9月24日(土)9時58分 アサ芸プラス

 ウクライナ軍の反転攻勢により劣勢に立つロシアだが、ここにきてプーチン大統領が「戦術核兵器」を使用するのではないかと危惧する声が高まっている。

 9月19日には、ウクライナ南部のミコライウ州ユズノウクラインスクにある南ウクライナ原子力発電所付近に、ロシア軍のミサイルが着弾。原発から300メートル離れた工業団地の建物の窓ガラス100枚以上が割れたという。また、この攻撃で原発に隣接する水力発電所が一時運転する事態に陥り、ゼレンスキー大統領は「ロシアは世界全体を危険にさらしている」と訴えている。
事実、プーチン大統領は21日に国民向けのテレビ演説で、予備兵や軍事的専門性を持つロシア国民を動員するとした上で、さらにこうも付け加えた。「ロシアの領土の一体性への脅威が生じた場合、国家と国民を守るために、あらゆる手段を行使する。これはハッタリではない核兵器でわれわれを脅迫するものは、風向きが逆になる可能性があることを知るべきだ

 要するに、「いざとなばれ核兵器を使用する」と明言したのだ。軍事ジャーナリストが解説する。

「9月に入ってからウクライナ軍の反転攻勢が続き、ロシア軍の撤退が各地で始まっているといいます。武器をその場に捨てて敗走する兵士も多く、これは軍の末端から現場指揮官まで士気が低下し、統率がとれなくなっていることを示唆している。本来であれば大規模な反撃と突破作戦を行わなければなりませんが、戦力的にもかなり厳しいと伝えられています。そこで苦し紛れの予備兵導入に打って出た。いよいよ窮地に追い込まれている証左です」

 狂気の殺戮王の「本気度」について、政治ジャーナリストは、

「今回、ロシア軍が原発付近にミサイルを撃ち込んだのは、『核攻撃も辞さない』という構えを見せつけるためでしょう。もし核が使用されたとしても、ウクライナがNATO加盟国ではないことから、欧米の核保有国が核兵器で応戦することはありませんからね。国際社会からつまはじきにされるのは必至ですが、プーチン氏がそれすらも一切考慮せず暴挙に出る可能性は十分にあります」
ロシアが追い込まれればそれだけ、最悪の事態が近づいているということなのだ。(ケン高田)

米国防総省「ロシアに核戦力の態勢を変えるほどの変化見られず」

テレ朝news 2022/09/28 

© テレビ朝日 米国防総省「ロシアに核戦力の態勢を変えるほどの変化見られず」

 ロシアがウクライナに対し、核の脅しをちらつかせるなか、アメリカ国防総省は核兵器の使用を巡ってロシア側に変化は見られないとの認識を示しました。

 ロシア前大統領のメドベージェフ安全保障会議副議長は27日、ロシアには核兵器で自衛する権利があり、ウクライナを核兵器で攻撃してもNATO=北大西洋条約機構は介入しないだろうと自身のSNSに投稿しました。

 プーチン大統領も21日、ウクライナでの「住民投票」に関連して、「我が国の領土の一体性が脅威にさらされる場合に、ロシアが保持するすべての手段を利用する」と述べ、核兵器使用の可能性に言及しています。
 アメリカ国防総省のライダー報道官は27日、ロシアによる一連の核の脅しを真剣に受け止めているとしたうえで、ロシア側にアメリカの核戦力の態勢を変えさせるほどの変化は見られないとの認識を示しました。(C) CABLE NEWS NETWORK 2022

核恫喝も見透かされ、終わりが近づいたプーチンの政治生命

横山 恭三 2022/09/28 06:00

 9月6日に開始されたウクライナ軍の反転攻勢により、ウクライナ軍は、5日間でハルキウ州のほぼすべてを奪還した。

 ロシア軍は、戦車や装甲車、武器、弾薬を捨てて遁走した。

 依然として部隊の連携に欠陥があり、大義のない戦いに無理やり駆り出された士気の低いロシア軍が、この戦局を逆転することは極めて困難であると筆者はみている。

 さて、今回のウクライナの軍事的大勝利はウラジーミル・プーチン大統領を窮地に追い込んだ。

 残虐行為で知られる「カディロフ部隊」をウクライナに派遣しているチェチェン共和国のカディロフ首長は9月11日、作戦に「間違いがあった」とロシア軍を批判した。

 また、ロシア国内でもプーチン大統領を批判する声が上がり始めている。

 モスクワの区議グループは9月9日、ウクライナ侵攻の責任を問いプーチン大統領の辞任を求める要望書を公表した。

 サンクトペテルブルクでも議員グループが9月7日、「プーチン氏の行動は、ロシアの安全保障を脅かしている」として辞任を求める要望書を公表した。

 また、9月16日に開催された印ロおよび中ロ首脳会議では、インドと中国がウクライナ戦争に関する懸念を表明した。

「非西側諸国間の結束」を目指しているプーチン氏にとって大きな打撃となった。

 また、思いもよらぬロシア軍の敗北に狼狽したプーチン氏は、9月21日、30万とも言われる予備役の部分的動員令を発令した。

 これに対して、抗議デモがロシア全土に広がった。

 さらに、占領された領土の奪還を目指して攻勢を続けるウクライナ軍の機先を制するために、プーチン氏は、ウクライナ東・南部4州でロシアへの編入に向けた「住民投票」を従来予定の11月から前倒しで9月23日から実施した。

 これに対して、G7首脳は、住民投票は、ウクライナが主権を有する領土の地位を変更するための偽りの口実を作るためのものであり、また、これらの行為は国連憲章および国際法に明確に違反し、国家間の法の支配に正面から反するものであると厳しく非難した。

 このように、ロシアの国際社会からの孤立化がさらに進んだ。

 ところで、内憂外患を抱え、正念場にあったプーチン氏は、大きなミスを犯したと筆者はみている。

 それは、極東ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでの演説(9月7日)である。

 同演説で、プーチン氏は、「ロシアはウクライナでの特別軍事作戦で何も失っていない」と述べた。

 ロシア軍の戦死者は、ロシア当局が戦死者数を発表していないので詳細は分からないが1万~5万人と言われている。少なくても1万人のロシア国民が戦死しているのに「何も失っていない」とは、兵士の命を軽視しているとしか思えない。

 この演説でプーチン氏が国民の信頼を失ったことは紛れもない。

 ロシア国民がプーチン氏のために死にたくないと思うのは当然であり、今後、ロシア軍の士気は決して高揚することはないであろうと筆者はみている。

 ところで、ロシアをあまり追い詰めると、核兵器を使用するのではないかという懸念が生じる。

 筆者は米国をはじめとするNATO(北大西洋条約機構)30カ国の通常兵器と核兵器は、ロシアの核使用を思いとどまらせているとみている。その理由などは後述する。

 以下、初めにウクライナ軍の反転攻勢成功の要因について述べ、次にプーチン大統領に対する国内の反発について述べ、次にロシアの国際社会からの孤立について述べ、最後に米・NATO加盟国が、ロシアの核使用を抑止している理由について述べる。

1.ウクライナ軍の反転攻勢成功の要因

 ウクライナ軍は8月下旬、南部へルソンへの大規模反撃作戦があるように見せかけ、東部のロシア軍の南部への移動を誘い、手薄となった東部に奇襲をかけ、一気に東部を制圧した。いわゆる陽動作戦の成功である。ロシア軍が人員や物資を戦線に送る拠点として利用していた東部の交通の要衝イジュームの奪還は、今後の軍事作戦の成否に大きな影響を及ぼすだけでなく、プーチン政権にも大きな打撃となった。ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の解放というロシアの特別軍事作戦の目的の達成の見込みが立たなくなったからである。筆者は、今回のウクライナの反転攻勢は、プーチン氏のモスクワ不在の時を狙うなど用意周到に準備されていたとみている。
 プーチン氏は、9月1日の最西端の飛び地カリーニングラード訪問に続き、5日は極東カムチャツカ半島に滞在し、6日にはウラジオストクで、中印も参加した大規模軍事演習「ボストーク(東方)2022」を視察した。
 7日には極東のウラジオストクで、国際経済会議「東方経済フォーラム」の全体会合に出席・演説し、9月16日にはウズベキスタンのサマルカンドで印ロおよび中ロ首脳会議に参加した。
 ウクライナ軍は9月6日に反転攻勢に出た。まさに絶妙なタイミングであり、プーチン氏は虚を突かれたのである。
 次にウクライナ軍の反転攻勢を成功に導いた諜報機関による偽情報作戦について述べる。
 偽情報(Disinformation)とは、意図的に作成・拡散された虚偽もしくは不正確な情報をいう。偽情報作戦とは、敵を間違った方向に誘導するために意図的に偽情報を拡散させることをいう。

偽情報作戦その1

「8月29日、ウクライナ南部軍司令部のナタリア・フメニウク報道官は、ロシア軍に対する反撃をヘルソン地域を含む同国南部で開始したと発表した。ブリーフィングで、最近のロシア南部の物流ルートへの攻撃により、『敵国は紛れもなく弱体化した』と指摘。ただ、新たな攻撃に関する詳細については言及を避けた」(出典:ロイター8月29日)

偽情報作戦その2

「ウクライナはロシア軍が占領する南部の要衝ヘルソン市奪還に向け同市の周辺で反攻を開始、激しい戦闘を繰り広げている。ウクライナ大統領府が明らかにした。ウクライナ南部軍司令部によると、ウクライナ軍は前線の複数の地点で29日に反攻を開始、ヘルソン地域周辺のロシア軍拠点を砲撃した。ロシア国防相は声明で、ウクライナ軍の攻撃を認めた上で、作戦は『悲惨な失敗』に終わったとした」(出典Bloomberg News8月31日)

 ロシア軍は、この(偽)情報に対処するため、東部戦線の兵力を南部に移動させ北東部の要衝ハルキウなどの防衛が手薄にならざるを得なかった。

 また、ウクライナ軍のハルキウ付近の部隊が大規模な作戦を準備しているという情報がロシア側に漏れないように徹底的に情報統制した。

 それとともに、地元民を装っているロシアのスパイに「ウクライナ軍は攻撃の準備ができていない」という偽情報をつかませてロシア側に伝えさせていたという。

 こうして9月6日ウクライナ軍が不意急襲的に東部戦線に攻勢を開始すると、不意をつかれたロシア軍はほとんど抵抗しないまま逃走したのである。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は8日夜のビデオ演説で、この1週間で同国南部と東部の1000平方キロメートル以上の領土をロシア軍から奪還したと発表した。

2.プーチンに対する国内の反発

(1)国家主義思想家の娘に対するテロ

 ロシアのプーチン大統領の世界観に大きく影響したとされる国家主義思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリヤ氏(29)は車で帰宅中、8月20日夜、モスクワ近郊で車が爆発したため死亡したという。

 ドゥーギン親子は20日夜の会合から帰宅中だった。当初は同じ車に同乗する予定だったが、直前になってドゥーギン氏は娘と別の車に乗ることにしたと、ロシア・メディアが伝えている。

 このため「プーチンの脳」とも呼ばれるドゥーギン氏を対象にした攻撃だった可能性が、指摘されている。

 ウクライナ侵攻を支持するドゥーギン氏は2015年、ロシアによる2014年のクリミア併合に関与したとして、米国の制裁対象に加えられた。

 ドゥーギン氏はかねてロシアは国際社会でもっと自己主張し積極的に活動すべきだと主張していた。

 今回の犯人については、諸説ある。

 ロシア連邦保安庁(FSB)は事件の翌々日には「犯人はウクライナ諜報機関が放ったナタリヤ・ヴォーフクという工作員だ。彼女はドゥーギン氏の娘ダリヤ氏を殺害したその足で、エストニアに出国した」と写真付きで発表した。

 しかし、その手際の良さでかえって疑われる羽目となった。

 また、「この事件はFSBの自作自演だ。国内引き締めの口実にする魂胆だ」という説もある。

 一方、ロシア人によるテロだという説もある。野党指導者の一人、イリヤー・ポノマリョフ氏は、「民族共和軍」なる組織が関与したものだと公言している。

 この「民族共和軍」という存在は、今回初めて表に出たもので、その実体については何も情報がない。

 筆者の憶測であるが、大義なき侵略戦争に駆り立てるアレクサンドル・ドゥーギン氏に対するロシア人によるテロではないかとみている。

(2)予備役の部分的動員に対する反発

 プーチン大統領は9月21日、予備役を部分的に動員する大統領令に署名したとテレビ演説で発表した。

 演説の中で「東部ドンバス地域を解放するという主な目的は今も変わっていない」と述べ、ウクライナ侵攻を続ける考えを改めて強調した。

 プーチン大統領に続けて演説したショイグ国防相は、侵攻開始から死んだロシア兵の数を「5937人」と説明した。その上で「30万人の予備兵の招集を検討している」と述べた。

 予備役の部分的動員に抗議するデモがロシア全土に広がった。

 ロシアの人権団体は、9月22日、38都市で1400人を超える市民らが警察当局に拘束されたと発表した。

 9月24日、32都市で計760人超が拘束された。デモ参加者は、「プーチンために死にたくない」「プーチンを戦場に送れ」などと叫んでいる。

 ロシアによるウクライナ侵攻が発表された2月24日、国内外で「反戦デモ」が同時多発的に発生したが、プーチン政権は首都モスクワで機動隊を投入し、参加者を拘束するなど素早く弾圧した。

 プーチン政権は、今回も動員への国民の反発は限定的とみて、デモを力で押さえ込み、予備役の部分動員を予定通り進めると見られる。

 しかし、ロシアから出国する航空券が売り切れになったり、ロシア国境に出国待ちの長い車列ができたり予備役招集から逃れようとロシア国民の国外脱出が加速している。

(3)ウクライナとの捕虜交換に対するロシア国内の反発

 ウクライナのゼレンスキ―大統領は9月21日、ウクライナとロシアの間で捕虜交換が行われ、外国人兵士10人を含む215人が解放されたと発表された。

 ロシア側は55人の兵士が解放された。

 ロシアが解放した215人の捕虜の中には、ウクライナの港湾都市マリウポリの防衛を指揮し、ロシアに対する抵抗の象徴となった「アゾフ連隊」の司令官数人が含まれていた。

 一方、ウクライナは、215人と引き換えに、55人のロシア軍兵士とウクライナの親ロ派政党の指導者、ビクトル・メドベチュク氏を解放した。

 メドベチュク氏はロシアのプーチン大統領と親しい関係にあることが知られている。

 2014年にウクライナ東部の分離独立運動で親ロシア派勢力を率いた元諜報員、イゴール・ガーキン氏は、アゾフ連隊司令官の解放は裏切り行為だと主張。

 プーチン氏が9月21日に予備役の動員を命じたことに関連し、動員されるロシア人への侮辱になるとの見方も示した。

 同氏は、解放は「犯罪より悪い」とし、「信じられないほどの愚かさだ」と断じた。

 戦争支持を表明するブロガーらも政府批判に加わっている

3.ロシアの国際社会からの孤立

(1)ロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止

 国連本部で4月7日、第11回国連総会緊急特別会期(注1)が開催され、ウクライナの首都近郊のブチャなどで多くの市民の遺体が見つかったことを受けて、米国などが提出したロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止するよう求める決議案の採決が行われた

 採決の結果、欧米や日本など合わせて93か国が賛成し、ロシアのほか中国や北朝鮮など24か国が反対インドやブラジル、メキシコなど58か国が棄権し、棄権と無投票を除いた国の3分の2以上の賛成で、決議が採択された

 国連人権理事会の理事国の資格が停止されるのは、2011年に反政府勢力を武力で弾圧していたカダフィ政権下のリビアが停止されて以来、2例目である。

 ジョー・バイデン米大統領は声明を発表し、採択を歓迎するとともにロシアの責任追及を続けていく考えを次のように強調した。

「プーチンの戦争がロシアを国際的なのけ者にしたことを改めて示す、国際社会による意味のある一歩だ」

ロシアは国連人権理事会にいるべきではない。残虐行為の責任をロシアにとらせるために今後も各国とともに証拠を集めていく

(注1)現在進行中のロシアのウクライナ侵攻を議題として、国際連合総会の第11回緊急特別会期(emergency special session:ESS)が、2022年2月28日から開催されている。第11回ESSのこれまでの決議案は、ES-11/1(ウクライナに対する侵略)、ES-11/2(ウクライナに対する侵略がもたらした人道的結果)および今回のES-11/3(人権理事会におけるロシア連邦の理事国資格停止)の3つである。緊急特別会期の詳細は拙稿「ロシアは常任理事国の特権も失うか、40年ぶり開催のESSとは」(2022.3.28、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69451)を参照されたい。

(2)モディ首相および習主席のウクライナ戦争に対する懸念の表明

 9月15~16日にウズベキスタンのサマルカンドで行われた上海協力機構(SCO)の首脳会議に合わせて実施された印ロおよび中ロ首脳会議は、ロシアが国際社会からさらに孤立していることを如実に示した。

 インドのモディ首相は冒頭、ウクライナ問題を念頭に「今は戦争の時代ではない」と述べ、外交的手段での解決を求めた。

 プーチン氏は「ウクライナの紛争へのあなたの立場と懸念は承知している」とし、「早期に終えるよう全力を尽くす」と述べたが、「ウクライナ側が交渉を拒否している」と強調した。

 中国の習近平国家主席は、「世界や時代、歴史が変化に直面する中、中国はロシアと協力し、大国の責任を示す上で主導的な役割を果たすと同時に、混乱する世界に安定と前向きなエネルギーをもたらす考えだ」と語った。

 プーチン大統領は、一極集中化の世界を目指す米国の試みは失敗に終わるという見方を示した上で、「ウクライナ危機に関して、中国の友人たちのバランスの取れた姿勢を高く評価している」とし、その上で「この件に関する中国側の疑問や懸念を理解している」と述べた。

 プーチン氏が、インドと中国のウクライナ戦争に対する懸念についていて言及したのは初めてである。

 ウクライナ侵攻後、インド、中国をはじめとして非西側諸国との間で結束を高めようとしているプーチン氏に大きな打撃になったと筆者はみている。

 また、筆者の憶測であるが、インド・中国の両首脳、特にモディ首相は、ロシアの核使用に対する懸念を述べたであろう。

(3)ラブロフ露外相の安全保障理事会からの退席

 9月22日、国連安全保障理事会閣僚級会合では、プーチン露政権が30万人規模の予備役を動員し、占領下のウクライナ4州で露編入を問う「住民投票」を行うと発表したことや、ロシアが核兵器の使用を示唆したことへの非難が続出した。

 このような中、ロシアのラブロフ外相は自分の演説直前に会場入りし、「ウクライナのネオナチ政権ロシア人とロシア語を話す人々の権利を踏みにじっている彼らを保護するための特別軍事作戦の実施は不可避だ」などと持論を展開し、演説が終わるとすぐに会場を後にした。

 各国とは議論はしないというこのラブロフ氏の姿勢は、常任理事国としての責任を放棄し、国際の平和と安全に主要な責任を持つのが安全保障理事会の役割を冒涜するものである。

 会場から退席するラブロフ氏の姿は、かつて国際連盟の議場から退場する松岡洋右日本代表の姿と重なる。筆者は、ロシアの国際的孤立が一層深まったという印象を持った。

(4)ロシアの戦争犯罪に対する国際社会の非難

 4月3日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)郊外ブチャで民間人とみられる多くの遺体が見つかったことに関し、欧州主要国はロシアを一斉に非難した。

 民間人虐殺は「戦争犯罪」と断じ、捜査に協力する姿勢を示した。

 7月15日、米国務省は、大量虐殺や残虐行為の防止に関する年次議会報告書を発表し、ウクライナに侵攻したロシア軍が戦争犯罪を行っていると非難した。

 報告書は、ロシア軍が投降しようとしたウクライナ人の手を縛るなどして処刑・拷問し、市民を強制移住させたり、性的暴行を加えたりしているとの報告があると指摘した

 9月23日、ウクライナでの人権状況を調べていた国連人権理事会が設置した独立調査委員会は「ウクライナで戦争犯罪が行われた」と結論づける報告書を発表した。

 市街地での無差別爆撃や処刑、拷問のほか、4歳の子供への性的暴行などを確認したという。

4.ロシアの核使用を抑止しているNATO

(1)過去のプーチンの核兵器に関する発言

①2018年のドキュメンタリーでプーチン大統領は、「ロシアを全滅させようとする者がいるなら、それに応じる法的な権利が我々にはある。確かにそれは、人類と世界にとって大惨事だ。しかし私はロシアの市民で、国家元首だ。ロシアのない世界など、なぜ必要なのか」と発言した。

(BBCニュース「プーチン氏は核のボタンを押すのか BBCモスクワ特派員が考える」2022年2月28日)

②2022年2月24日のウクライナ侵攻直前の19日には戦略核兵器を使った「戦略抑止力演習」に踏み切り、相対的に威力の小さい戦術核兵器まで動員しての大規模な演習を実施した。

③2月24日、プーチン氏は、国営テレビを通じてロシア国民向けに「ウクライナ政府によって虐げられた人々を保護するため、『特別な軍事作戦』を実施することを決定した」と演説した。

 同じ演説の中で「ロシアは、ソ連が崩壊したあとも最強の核保有国の一つだ。ロシアへの直接攻撃は、敗北と壊滅的な結果をもたらす」と述べ、核使用をちらつかせて米欧を強く牽制した。

④2月27日、プーチン氏は、ショイグ国防相、ゲラシモフ軍参謀総長に対し「NATO側から攻撃的な発言が行われている」と述べ、核抑止力部隊に高い警戒態勢に移行するよう命じた。

⑤9月21日、プーチン氏は、予備役の部分的動員を発表するテレビ演説で次のように語った。

「ロシアもまた様々な破壊手段を保有しており、一部はNATO加盟国よりも最先端のものだということを思い出させておきたい」

「わが国の領土の一体性が脅かされる場合には、ロシアとわが国民を守るため、われわれは当然、保有するあらゆる手段を行使する。これは脅しではない」

「ロシア国民は確信してよい。祖国の領土の一体性、われわれの独立と自由は確保され、改めて強調するが、それはわれわれが保有するあらゆる手段によって確保されるであろう」

「核兵器でわれわれを脅迫しようとする者は、風向きが逆になる可能性があることを知るべきだ」

(2)米国高官のロシアの核兵器の使用に関する発言

①2月28日、米国防総省高官は記者団に対し、ロシアのプーチン大統領による核部隊の戦闘警戒態勢命令を巡り、ロシア側の特筆すべき具体的な動きは確認できていないとした上で、米欧側の核抑止力に自信を示した。(出典:sankeibiz3月1日)

②9月18日、バイデン米大統領は、放映の米CBSテレビのインタビューで、ウクライナ侵攻で劣勢に立たされているロシアが化学兵器や戦術核兵器を使えば、米国も対応策を取り「重大な結果を招くことになる」と警告した。

「ロシアが何をするかによって対応策を決める」と述べ、具体策は明らかにしなかった。

 バイデン氏はロシアのプーチン大統領が化学兵器や戦術核を使用すれば「第2次大戦後なかった状況へと戦争を変質させる」と指摘し「使ってはならない」と3回繰り返し、使用に踏み切れば、ロシアはさらに国際社会で孤立するとけん制した。

③9月22日、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、9月21日のプーチン大統領の「我々の保有するあらゆる手段を行使する。これは脅しではない」とする演説について、米CNNテレビのインタビューで次のように語った。

「プーチン氏のあらゆる脅しを真剣に受け止めている」

「できる限り(ロシアを)監視している。米国の戦略的抑止態勢を変える必要があるような兆候は今のところ見られない」

④9月22日、ベルギーのNATO本部に駐在する米国のスミスNATO大使は、9月21日のプーチン大統領のテレビ演説について、NATO本部でNHKの単独インタビューに応じ、次のように述べ、ロシアを牽制する姿勢を示した。

「現時点では、核戦力についての非常に危険で事態の悪化につながりかねない発言を耳にしているにすぎない。ロシアの状況を注視しているが、今のところ特段の変化は見られない」

ロシアが核戦力の使用に踏み切った場合、われわれは準備ができている

(3)米国のロシアの核戦力の監視体制

 全米科学者連盟の核情報プロジェクト責任者であるハンス・クリステンセン氏はニューズウィーク誌に対し、次のように語った。

米情報当局はロシアの核兵器保管施設を監視しており、核弾頭がトラックやヘリコプターに積み込まれたり、核兵器を扱うための特殊訓練を受けた部隊の活動が活発化したりした場合に、それを検知することができる

「これらの活動は、プーチンが短距離核戦力による攻撃の準備に着手したことを示すものとなる

「一方で、地上型の移動式発射台、ミサイル潜水艦や巡航ミサイルの移動が通常よりも増えた場合には、長距離核戦力が使用される可能性があると予測できる」

「核兵器の指揮統制システムや通信全般における検知可能な活動が増えることからも、何かが起きていることがうかがえる」

「今年2月末には、核戦力を含む核抑止部隊を、任務遂行のための高度な警戒態勢に移行させると言った。だが当時はプーチンが核攻撃の準備を行っていることを示す動きはみられなかった」

「今回も米当局者たちが前回同様にロシアの動きを観察し、脅威がどれだけ差し迫ったものか否かを明らかにすると期待している」

「また米側も1000発近い核兵器を数分以内に発射できる態勢にあるため、プーチンが核攻撃を行っても、すぐに反撃できる

(出典:ニューズウィーク日本版2022年9月22日)

(4)筆者コメント

 米国は、ロシアのウクライナ侵攻開始時から、ロシアの核戦力を完全に監視していることは間違いない。

 そして、「ロシアに核戦力の使用の兆候がない」と公表し、米国の監視能力の高さを誇示し、ロシアを牽制している。

 また、米軍は大統領からの命令があった場合、これに数分内に応じるため保有する弾道ミサイルの一部を高度な発射態勢の状態に置いていると筆者はみている。

 常時監視と即応態勢の維持が米国のロシアに対する核抑止力の自信となっている。

 さらに米国は、2月24日のロシアのウクライナ侵攻開始以降、長い時間をかけて、ロシアの核の恫喝への対抗策を検討してきたに違いない

 そして、ロシアが核兵器を使用すれば、米国をはじめNATO加盟国の30カ国は、ロシアとの武力による全面対決を辞さない必要ならば核兵器を使用するとの覚悟を決めたのであろうと筆者はみている。

 これはバイデン大統領の、米国も対応策を取り「重大な結果を招くことになる」という警告に現れている

 そして、米国は、その決意をウクライナ側に通知している。そのことは、プーチン氏の「核兵器でわれわれを脅迫しようとする者」という発言に現れている。

 また、8月のウクライナ軍のクリミア半島への攻撃に対して、すなわちロシアのいうロシア領土への攻撃に対して断固とした対応策を取れなかったことで、プーチンの核使用の恫喝がブラフであることが露呈した。

 これで米・NATOの通常戦力および核戦力にロシアは完全に核の使用を抑止されてしまったと筆者はみている。

 ところで、筆者は核戦争の瀬戸際まで近づいたキューバ危機で、米国がいわゆる“核のチキンレース”で旧ソ連に勝利できたのは、米国ではスタッフが集団となって解決策を求めたからだという論考を読んだことがある。

 独裁者が一人で核の使用を決定するプレッシャーは相当のものであろう。狂人でない限りそれは不可能である。

 プーチンが狂人でないことを願っている。

おわりに

 筆者は、拙稿「嘘だらけのプーチン歴史観、ロシアの対独戦勝は米国のおかげ」(2022.5.12、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70054)で、今回のウクライナ戦争でロシアを敗戦国の立場に追いやり、ロシアの常任理事国の地位を剥奪するとともに国連安保理改革につながることを願っていると述べた。その考えは今も変わっていない。

 現時点では、祖国防衛に燃え士気の高いウクライナ軍と大義がない戦いに無理やり駆り出された士気の低いロシア軍との勝敗はすでに明らかである。

 しかし、プーチン氏は、予備役の動員を行い戦争のさらなる長期化も辞さない姿勢を見せている。以下、いくつかのシナリオを考えてみた。

 現在、プーチン政権は窮地に陥っている。

 プーチン氏が大義のない戦争を始めた。短期で終わると思っていた戦争が長期し、ウクライナ軍の予想外の頑強な抵抗を受け、何万人ものロシア兵が戦死した。

 ロシア軍は深刻な兵員不足に陥り、兵員を補充するために予備役の動員令を発動した。これが国民の反発を呼び、反対するデモがロシア全土に広がった。

 プーチン氏は、国内治安部隊を使って反対勢力を弾圧するが、事態はさらに悪化した。そして、国民の信頼と支持を失った。

 一方、ウクライナ軍の攻勢の勢いはとどまらず、住民投票でロシアに併合した東部と南部の4州が奪還されそうになる。

 そして、プーチン氏は、核使用の可否をめぐり側近と対立するようになり、ついに側近によるクーデターによりプーチンは失脚する――。

 これは、筆者が理想とするシナリオである。

 次に、停戦合意の可能性であるが、現在、戦いを有利に進めているゼレンスキー大統領は、クリミアの返還を要求するであろう。

 プーチン氏がこの要求を呑むとは思えない。当分停戦合意の可能性はない。

 次に、戦争の長期化である。

 ウクライナの反転攻勢の直前には戦線は膠着状態にあり「消耗戦」の様相を呈してきたと言われていた。

 戦局は一夜にして逆転するものである。ロシアが兵員を増強し、軍の体制と態勢を立て直し、また「消耗戦」の様相を呈するようになるかもしれない。

 その時、プーチン氏は、天然ガスを「武器」に欧州の結束に揺さぶりをかけようとするであろう。

 プーチンの揺さぶりに対して、米・NATO加盟国が結束し、ウクライナへの軍事支援を継続できるかが、ウクライナの軍事的勝利のカギとなる。

プーチン大統領の核威嚇にたじろぐバイデン政権、「軟弱」対応に米国内で批判

古森 義久 2022/09/28 06:00

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 ロシアのプーチン大統領がウクライナでの戦闘で核兵器を使うかもしれないと示唆したことが、米国で激しい反発を呼んだ。だが米国のバイデン政権は、ロシアが小型戦術核を使用する可能性に対して、ただ「止めろ」という声を上げるだけで、実際にどのような報復や抑止の手段をとるかについては言及しないままである。

 バイデン政権の具体策に触れない態度が、プーチン大統領の核の脅しの効果をさらに高めるのではないかという懸念も、米国では広がりつつある。

「はったりではない」と脅すプーチン大統領

 プーチン大統領は9月21日のロシア国内での全国向け演説で、ウクライナでの戦闘への「部分的な動員令」を宣言するとともに、「ロシア領土の保全への脅威に対しては、あらゆる武器を使ってでも防衛する。これは、はったりではない」と語った。

 この「あらゆる武器」は核兵器をも含むという示唆だとの受け止め方が一般的だった。米国でも「プーチン大統領の新たな核兵器行使の威嚇」として大きなニュースとなった。

 とくにプーチン大統領はこの演説で、「北大西洋条約機構(NATO)の首脳たちはロシアに対して最悪の場合、核兵器を使用してもよいと考えているようだが」とも述べた。この発言が事実に立脚していないとしても、核兵器という言葉をはっきりと口にしたことは、演説の迫力を増す結果となった。その後に出てきた「あらゆる武器を使ってでも」という言葉に、当然、核兵器が含まれるのだという見方を強くしたわけである。

 プーチン大統領はウクライナ侵攻開始直後の2月24日にも核兵器使用を示唆している。この際は、米側の介入を防ぐための威嚇と解釈されたが、それから7カ月近く経った今、ウクライナでの戦況がロシアに不利となった段階での核使用示唆は、より現実的な言明として受け止められた。つまりロシアは、ウクライナでの戦況を有利にして、ロシア領だと宣言した南部各州を確保するために、戦術核兵器の使用も辞さないと威迫している、というわけだ。

 プーチン大統領は今回の言明で「はったり(英語では“bluff”)ではない」と強調した。“bluff”とは、実際にはその意図がなくても、危険な行動をとるぞと言って脅かすことを意味するが、今回は、ウクライナでの戦闘でロシア軍が守勢に立った状況などから戦術核兵器使用の可能性は前回よりずっと高いとみられる。

「軟弱すぎる」バイデン政権の対応

 米国ではバイデン政権のジョン・カービー報道官が「プーチン大統領がウクライナで敗北しつつある際にこんな言辞を述べるのは危険な前例になる」と批判した。同報道官は「プーチン大統領の言明は無責任であり、誰も得をしない」とも述べ、ロシア側の戦略核兵器態勢に今のところ変化はないことも明らかにした。だが米国側がどう対応するかについては、具体的な言及はなにもなかった。

 公の場でのバイデン大統領自身の対応は、プーチン大統領の核兵器使用の可能性に対して「止めろ、止めろ、止めろ。そんなことをすれば第2次世界大戦以来の戦争の様相を変えてしまう」と発言するだけだった。

 米国ではバイデン政権のこうした反応について多方面からの批判が噴出した。

 外交関係評議会の上級研究員で著名な戦略問題専門家のマックス・ブート氏は、9月21日付のワシントン・ポストに「プーチンにはったりをかけさせるな」という見出しの寄稿でバイデン政権の対応を軟弱すぎると批判した。

 ブート氏は、「ロシアの核の脅しに米国が抑止効果を有する反応を示さなければ、プーチンはウクライナ国内で戦術核の行使をするかもしれないという、さらなる威嚇でウクライナ戦で優位に立つだろう」と述べた。その上で具体的な対応戦略として、「もしロシアが戦術核兵器を使用したら、米国は少なくともNATO諸国の軍隊を動員してウクライナ領内のロシア軍に通常兵器により総攻撃をかけることを宣言すべきだ」と提案した。「核には核」の対応でなくても抑止効果のある反撃宣言はできるという考え方である。

 戦略問題の権威とされる評論家デービッド・イグネーシアス氏も、ワシントン・ポスト(9月23日付)への寄稿論文で、バイデン大統領が繰り返した「止めろ」という表現はプーチン大統領に対する警告でなくて、懇願だと厳しく批判した。相手に特定の行動をとらないよう頼むという態度は、プーチン大統領を増長させ、その種の脅しがさらに効果をあげるのだ、とも同論文は説いていた。そのうえでイグネーシアス氏は「1962年のキューバ・ミサイル危機で当時のケネディ大統領がソ連に対してとった強固な態度から、バイデン氏も学ぶべきだ」と訴えていた。

 保守系の有名な政治評論家のペギー・ヌーナン氏はウォール・ストリート・ジャーナル(9月24日付)への寄稿論文で、「プーチンの脅しを軽視するのは間違いだ」と題して、やはりバイデン政権への批判を表明した。同論文は、プーチン大統領がウクライナ国内の戦闘での小型の戦術核兵器の使用を、米側の推測よりもっと現実的な手段として考えているとみて、バイデン政権がプーチン言明を「はったりとみるのは間違いだ」と警告していた。

 米国内部でのこうした批判は、バイデン政権が「ロシアの戦術核兵器使用は米国とロシアとの戦略核兵器での対決へとエスカレートし得る」とみて慎重な姿勢をとっているのに対して、ロシア側は「地域限定の小型核兵器の使用は米国との全面衝突を意味しない」という認識を保っているというギャップに焦点を合わせた論調が多いようである。いずれにしてもウクライナでの核問題はなお重大な危険を秘めたままと言えよう。

My opinion

真珠湾記念館の「A Gathering Storm」のパネルの表題は脳裏から離れない。
大日本帝国が支那事変に巻き込まれて泥沼に入り込んでいった構図に似ている。 万物は流転するが歴史は繰り返され、同じような過ちを人間は犯すのである。どんとはれ!

参考文献・参考資料

核兵器使用すればロシアに「壊滅的な結果」と警告-米大統領補佐官 (msn.com)

ロシア・ラブロフ外相「ウクライナは対ロシア戦争の消耗品に過ぎない」 (msn.com)

ロシア核兵器使用、世界が認めず 「妥協不可能」=ウクライナ大統領(ロイター) - Yahoo!ニュース

ロシアの核使用「破壊的結果」 米警告、制圧地編入加速 - 産経ニュース (sankei.com)

プーチンが「核攻撃」の引き金を引いた「原発狙い撃ち」の恫喝(2022年9月24日)|BIGLOBEニュース

米国防総省「ロシアに核戦力の態勢を変えるほどの変化見られず」 (msn.com)

核恫喝も見透かされ、終わりが近づいたプーチンの政治生命 (msn.com)

プーチン大統領の核威嚇にたじろぐバイデン政権、「軟弱」対応に米国内で批判 (msn.com)

日中戦争(支那事変)はなぜ起こったのか?歴史をわかりやすく学ぶ - 日本紙幣サイト (nihonshihei.com)

支那事変 - Wikipedia

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