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生物講座「スズメガとハチドリの研究」

  「失敗」・「無知」・「馬鹿」など色々と「ディスる」言葉がある。
今回は、花の蜜を吸引しているので「ミツバチ」かなと思ったら、2㎝程の大きさであり、「クマバチ」かなと思ったら若干顔つきが違う、南米の「ハチドリ」が日本に生息かな?、新しい学術的発見と胸躍らせて調べたら「スズメガ」であった。
 人生71年も永く生きたが知らなかった。
家内に確かめたら知っていたので、孫にもその蘊蓄を聞いたら知っていた。悔しい! このような悔しい想いを皆様もしないために、今回、失敗・無知版として披露する。他山の石とされたい。呵々!
つくづく思う事であるが、「ハチドリ」や「スズメガ」が、ホバリングで空中で静止する能力をどうしてみにつけたのであろうか。物理的な飛行能力の高さに改めて感心と興味が引かれるのである。

     皇紀2683年11月11日
     さいたま市桜区
     理論物理研究者 田村 司

はじめに

蛇足(蘊蓄)
今丁度、秦の始皇帝のドラマを見ている。ここに「馬鹿」の語源が出てくるのである。
鹿を指して馬と為す」とは「理屈に合わないことを無理矢理に権力によって押し通すこと」のたとえです。
この言葉は中国の「史記」の秦始皇本紀にある故事に由来します。 その昔、秦の始皇帝の死後、悪臣の趙高が自分の権威を試そうと二世皇帝に鹿を献上した。
その時に、趙高はその鹿を馬だと言って押し通して自分の権威を試した故事。
「ハチドリ」と「スズメガ」を「馬」と「鹿」になぞらえて見ました。

【史記「謂鹿為馬」(鹿を謂ひて馬と為す)】

『原文』
八月己亥、趙高欲爲亂、 恐群臣不聴、乃先説驗、 持鹿獻於二世曰、 馬也。 二世笑曰、 丞相誤邪。 謂鹿爲馬。 問左右。 左右或黙、 或言馬、以阿順趙高。 或言鹿。 高因陰中諸言鹿者以法。 後群臣皆畏高。
『書き下し文』
八月己亥、趙高乱をなさんと欲し、 群臣の聴かざることを恐れ、すなわちまず験を設け、 鹿を持ちて二世に献じて曰く、 「馬なり」。 二世笑いて曰く、 「丞相、誤れるか。鹿を謂いて(指して)馬となす」。 左右に問う。 左右あるいは黙し、 あるいは馬と言い、もって趙高に阿り順う。 あるいは鹿と言う。 高、よりてひそかにもろもろの鹿と言いし者に中つるに法をもってす。 後、群臣みな高を畏る。
『現代語訳』 八月己亥の日のこと、趙高は二世に鹿を献上して、こう言った。 「馬でございます」 二世は笑って、側近たちに話しかけた。 「丞相はどうかしているな。鹿を馬だとは」 側近の反応は、三つの分かれた。 ある者は、黙ったままであった。 ある者は、趙高にへつらって、「いえ、馬でございます」と言った。 ある者は、「鹿でございますとも」と答えた。 趙高は、ひそかに手をまわして、鹿と答えた者たちを、罪をかぶせて処罰した。 いらい、どの臣下もみな、趙高と聞いただけでふるえあがるようになった。

科学などの学術の世界においても「権威者」が幅を利かせて持論を押し付ける分野もある。若い学生諸君は「権威」に負けないで、辛抱強く頑張って頂きたい。(定説を覆してノーベル賞を受賞した研究者もいます。)

スズメガ科

節足動物門・昆虫綱・鱗翅目(チョウ目)内の分類単位のひとつ。
成虫の形態からは想像しにくいが、カイコガ科およびヤママユガ科に近縁と考えられている。

スズメガ科に属するは世界中に1,200種ほどが知られている。
成虫・幼虫共に比較的大型になる。
成虫の4枚翅は体に対して、小さく、三角形になっていて、高速で飛行する。
幼虫は「尾角」と呼ばれる突起を持っている。

一般に若齢幼虫は体が小さく、色も目立たないので発見されにくいが、終齢幼虫に近づくと体長・体重が著しい増加を見せ、あたかも忽然とそこへ現れたような印象を与えることがある。
北米に広く分布するタバコスズメ Manduca sexta を例にとると、一齢幼虫と終齢幼虫体長差は約11倍で、四齢幼虫から五齢(終齢)幼虫になるまでに体長が2倍近く増加するという観察結果がある。
また体重も一齢幼虫の時と終齢幼虫の時では数千倍の違いがあることが知られている。
種によっては、幼虫時代に消費する食草の9割を終齢幼虫の時期に消費する。

スズメガは幼虫時代には大量の葉を消費するので、しばしば害虫として駆除される事も多い。葉を一番多く消費する終齢幼虫になる頃には巨大になるので、比較的駆除は容易である。

成虫は口吻が発達していて、様々な植物の花の蜜を吸引するが、樹液に集まるものも多い。成虫の口吻の長さは種類によって様々で、それぞれ好みの花の蜜腺に届くような長さをしている。
たとえばウチスズメ2 cmほどしかないが、
エビガラスズメ11 cmも伸びる口吻をもつ。
マダガスカル南アメリカには25 cmほども伸びる口吻をもつものがいる。
メンガタスズメは口吻がそれほど長くなく、ミツバチの巣の中に進入して貯蔵された蜂蜜を強奪することが知られている。
さらに、ウチスズメ亜科のスズメガにはモモスズメなど、口吻自体が退化して摂食せず、幼虫時代に蓄積された養分だけで活動するものも少なくない。

スズメガ媒花

スズメガの成虫は活動性が高く、多量の花蜜を消費し、距離の離れた多数の花を訪花するため、様々な植物がスズメガ媒花として受粉を行うように特殊化した花を進化させている。特徴としては比較的大型の花が夜だけ、あるいは昼夜を通して咲き、しばしば芳香を放つ。花の色は白や黄色が多くて闇夜に浮き上がって見え、長い口吻を花の奥に引き込んで効果的に頭部に花粉をつけられるように、長い花筒や距が発達している。

代表的なものとして、マツヨイグサ類、カラスウリ、ハマユウ、サギソウ、オシロイバナなどがある。

ホウジャク (Macroglossum stellatarum)

地中で羽化した成虫は地上に出て活発に活動し始める。
成虫は主として夜行性だが、オオスカシバやホウジャク類のように日中飛行するものもいる。
スズメガの成虫は鋭角を持つ比較的ほっそりとした三角形の翅をもち、これをすばやく羽ばたかせて、種類によっては時速50 km以上の高速で移動する。その飛行速度は数多い飛翔昆虫の中でも速い部類に入る。また翅を素早く羽ばたかせる事で空中に静止(ホバリング)することもでき、その状態で樹液や花の蜜を吸引している姿が頻繁に観察できる。

あまりに高速で移動する為、ハチや海外ではハチドリと誤認される事も多く、ブラジルではスズメガの事をmariposa beija-flor(ハチドリの蝶)と呼んでいる。また、オオスカシバのように透明な翅を持ち、スズメバチに擬態しているものも知られている。

多くの場合成虫は春から秋にかけて出現する。

その広範な食草の種類と、旺盛な食欲から一般にスズメガは害虫として認知されているが、それと共に非常に利用価値の高い昆虫としても注目されている。

欧米ではその大きさと繁殖力の強さから、タバコスズメやトマトスズメの幼虫が実験用として大量に飼育されている。
日本でも人工飼料を用いたエビガラスズメの養殖が行われており、遺伝などの実験に利用されている。

また、エビガラスズメの幼虫は非常に栄養価に富み昆虫食の対象として注目される他、実際に家畜の飼料としても利用されている。
海外には伝統的にスズメガをはじめとする鱗翅目の幼虫を重要な蛋白源とする地域が多く存在する。
例えば、中国では、トビイロスズメを「大豆蛾」と呼び江蘇省などで食用に養殖され、販売されている。
そのまま炒めたり、焼いたりしても食べられるが、中国では生で筋肉をすりつぶし、肉団子も作られる。トビイロスズメの場合、栄養素としては約65%がタンパク質で、バリンメチオニンフェニルアラニンチロシンなどのアミノ酸を多く含む。また、約25%が脂肪分で、リノレン酸を多く含む。

成虫はミツバチと同じく花から花へと飛び回るので、植物の受粉に大きく貢献している。

ハチドリ

鳥綱アマツバメ目(ヨタカ目とする説もあり)ハチドリ科(ハチドリか、Trochilidae)に分類される構成種の総称。


北米・カナダ、アメリカ合衆国南西部からアルゼンチン北部にかけて(カリブ諸島を含む)

鳥類の中で最も体が小さいグループであり、体重は2〜20g程度である。

キューバに生息するマメハチドリ Calypte helenae は世界最小の鳥であり、全長6cm、体重2g弱しかない。

毎秒約55回、最高で約80回高速ではばたき、空中で静止するホバリング飛翔を行う。

「ブンブン」 とハチと同様の羽音を立てるため、ハチドリ(蜂鳥)と名付けられた。英語ではハミングバード Hummingbird で、こちらも同様にハチの羽音(英語における擬音語が hum)から来ている。フランス語では oiseaux-mouche で直訳すると 「鳥(ハエドリ)」 となる。

足は退化しており、枝にとまることはできるがほとんど歩くことはできない。

花の蜜を主食としており、ホバリングで空中で静止しながら、花の中にクチバシをさしこみ、蜜を吸うという独特の食事の取り方をする(他に昆虫も食べる)。
花の蜜を吸うためにクチバシは細長い形状をしている。そのため、昆虫であるスズメガが生息する地域では、成虫の動作が酷似するため、しばしば両者を見間違うことがある。

ある種のハチドリは特定の植物と密接な関係をもっている。例えば、ヤリハシハチドリ Ensifera ensifera のクチバシは非常に長く、最長では全長10cmを超える。このような長いクチバシでないと、非常に長い花冠をもつトケイソウの一種 Passiflora mixta の蜜を吸うことができない。
このように1対1のペアを形成することにより、ヤリハシハチドリは他のハチドリや昆虫との食料をめぐる競争を回避することができる。一方 Passiflora mixta にとっては自分専用の花粉媒介者がいることで効率的に受粉することが可能である。このような双方にとっての利益があるため、特殊なペアが形成されたと考えられる。これは共進化の典型的な例である。

同様な例として、90度近く湾曲したクチバシをもつカマハシハチドリ Eutoxeres aquila と、バショウ科ヘリコニア属の花とのペアが挙げられる。

進化によって、ハチドリは、非常に密接した網膜神経節細胞を獲得し、側面と正面の空間認識能力を向上させた。これにより、高速飛行とホバリング時の視覚処理といった「ナビゲーションに必要なもの」を獲得した。
形態学研究では、動的視覚処理の精密さを担保する脳の"視蓋全域"(lentiformis mesencephali)に、鳥類最大の神経細胞の肥大を発見している。 ハチドリは、頭や目を対象に向ける際に、ハチドリ自身の位置や方向が変化することで起きる視野内の視覚的刺激から、方向と方角を非常に敏感に感じとれる。 ハチドリは、視野内の微細な動きさえも読み取る敏感さによって、複雑で動きのある自然の周辺物の中でもホバリングするという特技を得た。

昆虫を除けば、ホバリングや高速飛行中の翼の高速な羽ばたきを維持するために、ハチドリは全動物中で最も活発な代謝をおこなっている。 これらのデータは、ハチドリが飛翔筋内部で効率よく糖を酸化させることで、大きな代謝の要求を満たすことを示している。ハチドリは新たに摂取した糖を飛行の燃料として直ちに利用できるため、夜間空腹時や渡り時の維持のための脂肪以外のエネルギーを体に蓄える必要がない

ハチドリの代謝の研究は、メキシコ湾の800キロを中継せずに渡るノドアカハチドリの秘密とも関係している。 ノドアカハチドリは、他の鳥と同じように、渡りの準備として脂肪を蓄え、その体重が100%も増加する。この脂肪分によって海の上での継続飛行を可能としている。

風洞実験で人工的に乱気流を発生させた状態でも、ハチドリは給餌器の周りで頭の位置と方向を維持してホバリングできる。横からの突風が吹いても、扇状に広げた尾翼の面積と方向を様々に変化させ、主翼のストローク角の振幅を増やすことで補うことができる。
ホバリングの最中、ハチドリの視覚システムは、捕食者やライバルによって生まれた視野の変化と、狙っている虫や花に向かって木々をすり抜ける自身の動きによって生まれる視野の変化を別々に認識できる。
自然界の複雑な背景のなかで、ハチドリは視覚情報と位置情報を高速に処理することで、正確なホバリングができる。

様々な鳴き方(chirps, squeaks, whistles)や羽音などのハチドリの発声は、前脳(forebrain)にある7つの特殊な脳核(nuclei)によって生み出される。
遺伝子発現の研究から、これらの脳核(nuclei)が、オウム、スズメ亜目の2グループの鳥類と、ヒト、クジラ、イルカ、コウモリといった哺乳類しか持たない「模倣を通して発声を獲得する能力」を持つこと、つまり発声学習できることが示された。
過去6500万年以内に、鳥類23目のうちハチドリとスズメ亜目とオウム目だけが、発声と学習のための同様の前脳の構造を進化させてきた。
これらの鳥類が、おそらく共通の祖先から派生し、後成的な制約(エピジェネティックな制約)のもとでその構造を進化したことを示している。
アオノドハチドリの鳴き声は、多くのスズメ類とは異なり、1.8 kHzから約30 kHzの広い範囲に及ぶ。 また、コミュニケーションには使われないものの、超音波を発する。
アオノドハチドリは、飛んでいる虫を捕獲する際に超音波を発することによって虫の飛行を混乱させ、捕獲しやすくする。

腎機能も、状況によって激しく変化するハチドリの代謝を満たしている。 日中、蜜を摂取するハチドリは、体重の5倍にも及ぶ水分を摂取するため、ハチドリの腎臓は、水分過多を避けるため、腎糸球体の処理速度を消費に合わせて適切に調節し、水を処理する。 対して、夜間の昏睡時などの水分が欠乏するときには、処理をやめて体内水分維持をおこなう。

ハチドリの腎臓は、ナトリウムや塩素が偏った蜜を摂取したとしても、電解質の濃度を調節できるユニークな機能を持つ。
ハチドリの腎臓や腎糸球体の構造が、様々なミネラルをもつ花の蜜に特化していることがわかる。
アンナハチドリの腎臓に関する形態学的研究では、ネフロンに近接する高密度の毛細血管によって、水と電解質を正確に制御していることが判明している。

夜や食事を取らない時には、冬眠のように深い睡眠(昏睡:Torporという)をすることで、備蓄しているエネルギーが危機的に欠乏する前に代謝を低下させてそれを防ぐ。夜間の睡眠時(Torpor時)には、体温が40度から18度まで低下する。

ハチドリは、急速な代謝をするが、寿命は長い。孵化から巣立ちまでの無防備な期間を含む最初の一年で死ぬものも多いが、この期間を生き残れば10年以上生きることもある
よく知られている北米種は平均寿命が3~5年と予想される。 対して哺乳類の最小の種であるチビトガリネズミは2年以上生きるものは稀である。
野生の寿命の最長記録は、フトオハチドリのメスで、1歳以降に識別足環がつけられ、その11年後に同じ足環の個体が捕獲されていることから、少なくとも12歳以上であることが確認された。 その他の、推定を含む寿命の記録は、フトオハチドリ同等サイズのノドクロハチドリのメスの10歳1ヶ月、アカハシエメラルドハチドリの11歳2ヶ月などがある。

蜜を好んで食したアマツバメの仲間の一部が、花から蜜を吸う生活様式に適応して、自然選択により現在のような姿に進化したと考えられる。
効率よく蜜を吸うためにはハナバチ属のように花にとまって吸蜜するのが良いのだが、鳥類の体の構造上、昆虫よりもどうしても体の密度が大きくなるため、花にとまることができない。そこでスズメガのようにホバリングしながら吸蜜できるように、胸筋や心肺機能を独自に進化させて現在に至った、と推定される。

全ての鳥類は味蕾の味細胞にある甘味受容体分子Tas1R2を遺伝子レベルで欠損しているが、ハチドリは花の蜜に含まれる甘味物質(ショ糖)を甘味受容体Tas1R2/Tas1R3以外の分子を使って受容できる。
最近の研究で、ハチドリは失った甘味受容体の代わりに、構造の似たうま味受容体を甘味物質に応答するように機能を変化(進化)させることで、進化の過程で一度は退化させた甘味感覚を取り戻したことが証明された(Baldwin,M.W.et al.Science:(2014)345: 929-933)。
甘味感覚の獲得によってハチドリは、鳥類の生存競争の中で競争の少ない独自のポジションを確保することが可能となった。 


参考文献・参考資料

スズメガ 画像 - Bing images

スズメガ科 - Wikipedia

ハチドリ - 検索 (bing.com)

ハチドリ - Wikipedia

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