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ハンヨー彫刻機でシーリングスタンプのヘッドを彫ってみたヨー
こんにちは、ツジカワ株式会社SNSチームのカタヨセです。
今回はハンヨー彫刻機でシーリングスタンプのヘッドを作るヨー
という企画です。
ハンヨー彫刻機、正しくは汎用彫刻機(はんようちょうこくき)と書きます。
なんだかカワイイからカタカナにしてみたんだヨー
てゆうか語尾を揃えたかっただけなんだヨー
はい、すみません。真面目に書きます。
前回「ごくろうさん!100年企業を支えるヒト・モノたち」シリーズ第1弾で汎用彫刻機に関する記事を書きました。
今回はそのスピンオフです!
まだシリーズ第1弾しかしてないのにスピンオフ。
もはや「脱線」じゃないのか、それは。という内なる声を思いっきり無視して汎用彫刻機を使用したものづくりの過程をご紹介したいと思います!
自社製シーリングスタンプのヘッドを作ってみよう!!
前回の記事を見返して
「汎用彫刻について色々書いたけど、たぶんあんまりどんな機械か伝わってないよなぁ」と我ながら感じていました。
前回の記事で汎用彫刻機の仕組みの概要や、弊社における立ち位置的なものに関しては示しましたが、
その動き方をイメージしてもらうには、汎用彫刻機を使用してものづくりをしている過程を見せるかのが一番だ!
というわけで、毎回文具系の催しで見るたびに「これ、ウチの会社でもつくってみたいなぁ」と思っていたシーリングスタンプ(封ろうスタンプ)のヘッドを汎用彫刻機で作ってみることにしました。
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よく見ると封筒が訳分からん形をしている。
今回の記事、元々はメインとして汎用彫刻機の作業風景をご紹介したかったのですが、材料の製作工程もご紹介することでツジカワのものづくりの一端をご紹介できればと思います。
今回製作過程を追う動画も作ってみました!汎用彫刻機がサクサク金属を削って複雑なパターンが形成されていく様子ってめっちゃきもちいいんでぜひ動画でも見てみてください!後生だからッ!
後輩からシーリングスタンプセット一式を徴収する
思い立ったはいいが、まずは見本となるものが必要。
さっそく文具マニアの後輩に「封ろうのスタンプ持ってない?」と相談したところ「いいのがありますよ・・・ニチャァ」と笑って一式貸してくれました。
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ちゃんと整理しててえらい。
今回作るのは写真にある金色の部品。
丸いヘッドの中に花柄や文字が彫り込まれています。
デザインを決める
早速弊社のデザイナーに無茶振り。
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「自分が普通に使えるものを作りたい」という本音が透けて見えます。
デザイナーから帰ってきた案がこちら!
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めっちゃパターン考えてくれた。
社内に色々頼めるデザイナーがいることのありがたみを噛み締めながら、文具マニアの後輩にも意見を聞いて今回はこちらの絵柄でシーリングスタンプを作ってみることにしました。
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ではさっそくスタンプを作っていきます!
材料を製作
まずは金属の丸棒からヘッドの形を彫り出します。
今回はデータがないので後輩から借りた見本から3Dデータをとってもらいました。
プラスチック製品へのホットスタンプ版や治具を制作する際、本来であればホットスタンプしたい成形品の3Dデータが必要なのですが、成形品しか手元にない場合もあります。
そういったときには3Dスキャナや測定機で成形品の形状をデータ化し、そのデータをもとに版や治具を製作します。
見本からとったデータで製作した切削データがこちら。
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こちらのデータをもとに円筒状の材料からヘッドの形状を削り出してもらいました。
(圧縮しまくってほぼ白黒の映像になりました)
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裏面にハンドルを差し込むためのタップをあけます。
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こんなかんじで無地のシーリングスタンプのヘッドができました!
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私のデスクなんですが・・・。
ちなみにカメラと三脚持って本社工場をうろついてたら、「顔は撮らんといてや!(ボクあるいはワシ)顔出しNGやで~」とたくさんのひとに言われました。
わたしは、「このかんじ、めっちゃ関西やなぁー」とおもいました。(夏休みの作文風)
原型を用意する
原型とは汎用彫刻機で彫刻する際に必要となるもので、彫刻する絵柄を数倍に拡大して転写し、腐食した金属版です。
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絵柄が印刷されたただの平たい金属版に見えますが、実は青いところと茶色いところには0.1mm程度の高低差があります。
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触ってみるとハッキリ分かる程度の凹凸
青いところは硬膜が貼ってあり腐食されていない状態なのに対し、茶色い所は腐食されて金属の地の色が見えているのです。
汎用彫刻機の仕組み
以前のnoteでも紹介しましたが、汎用彫刻機は、原型の微妙な高低差をガイドと呼ばれる針でなぞり、それに連動して切削工具が上下することで絵柄を彫刻していく仕組みです。
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切削工具に伝える
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いざ彫刻
原型と材料が用意できたので、さっそく汎用彫刻機で彫刻してもらいます。
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最初は太めの切削工具で大きめの絵柄を削っていきます。
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徐々にカッターを細くしていき、細かい絵柄を削っていきます。
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確実に彫り進められている
このとき手元のガイドも変えていきます。
ガイドの先についている針も太いものから細いものまで色々あるので、
絵柄の大きさによって最適なガイドを使用します。
(絵柄の細かいところを彫刻する際は、細いガイド針を使う。)
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花びらの先端など微細な部分を彫刻する
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できたじゃん、やったじゃん。
と言いたいところですが、今の状態では切削工具で削った跡の「切削痕」や、「バリ」と呼ばれる小さな金属片がついたままの状態です。
これらを仕上げ工程できれいにしてもらいます。
仕上げ工程
仕上げ工程は、バリなどをヤスリや砥石で削ったり、サンドペーパーをかけて表面の平滑性を上げたり、ハッキリ言ってめちゃめちゃ地味な作業なのですが、この工程で製品の仕上がりが変わるので本当に重要です。
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花や葉っぱの中に見えるボコボコが切削痕
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なんということでしょう・・・・!
あの絵柄の中をぐるぐると走っていた切削痕はどこへやら、美しい版面が現れました・・・!
と某番組みたいなナレーションを入れたくなるような鮮やかな仕上がりとなりました。
なんだすごく工程が多そうですが、これぐらいの絵柄であれば、手慣れた職人にかかればものの15分程度で磨きあがります。
早速使ってみる
今度こそできたじゃん、すごいじゃん。
ということで文具マニアの後輩に借りたスタンプセットでシーリングスタンプに挑戦してみることにしました。
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冷えて固まるまで待つ
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全く問題なく使うことができました。
シーリングスタンプって結構手間がかかるイメージを持っていたのですが、要はペレットを溶かして固めるというだけなのでとても簡単でした。
海外から来た高級感のある手紙みたいでかっこいい。
というわけで、今回は材料の削り出しから、彫刻・仕上げまでの過程を追ってみました。
普段の仕事はお客様の製品なのでお見せすることができないのですが、
今回の記事で汎用彫刻機を用いたものづくりの工程をなんとなく想像いただけると嬉しいです!
次はもっと細かい絵柄で彫刻機の限界に挑戦してもらおうかな・・・ニチャァ
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