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世界一臆病者の勇者たちへ【自殺未遂した話】

あの日のことを、鮮明に覚えている。

たしか、前日まで友人"だった"ひとと話をした。俳優を志していた友人の出演作を観たのがきっかけで、いわゆるバッドに入った。とにかく、スーパースーパーバッドに。バッドに入ったきっかけのくせして、今はもう内容を覚えていない。

わたしはもともと、いじめと毒親に苦しんだことから、精神疾患を中学生の頃から患っている。自傷行為もやめられないまま二十歳をすぎ、大学に進学したものの、休学や留年を繰り返していた。孤独で精神不安にさいなまれていた時期に、この出来事は起きた。



(※ここから先、自殺未遂をした日について克明に記します。精神が不安定な方は影響されやすいと思うので、注意してください。一応最後はわたしなりの前向きなまとめですが、自分の心を最優先にしてくださいね)



観た後はただ苦しく、とにかく眠った。その日の夢はもうわたしの最悪の記憶たちが最悪の姿をして、襲いかかってくる夢だった。別に友人が悪いわけではない。作品にも罪はない。ただ、揺れてしまった心に、精神不安定な悪夢が重なって、目覚めたときには号泣していた。

ああ、どうしてこんなに苦しい思いをしなくちゃいけないんだろうと思った瞬間、スッと世界から身を引く感覚がした。あまりにも自分の存在が遠くて、世界はどこか画面越しのフィクションに見えた。冷静に考えれば、目覚めたばかりの、あまりにも鮮明な悪夢に混乱していたのだと思う。

そして、わたしは迷わず、この世界からいなくなることを選んだ。だって、この世界苦しいんだもん。これ以上傷つかなくていいの!?ようやく死ねるの!?ラッキー!!!

死ぬと決めた瞬間から、気が楽になって一気にハイになる、狂った精神状態。

たぶんきっかけなんて、なんでもよかった。ずっとずっと死にたかったから。何度も傷つけられてきた苦しみや悲しみから、解放してくれるなら死を選びたかった。

コツコツと収集していた精神薬をプチプチ取り出す瞬間。なんだか内職みたいだなあと思った。鼻歌を歌いながら泣きながら。人が見たら明らかにヤバいやつだ。いや、人が見なくても状況的にヤバいんだけど。

大量に集まった薬は、100錠ほどあったと思う。ワァ…!とちいかわのような声をあげて、はしゃいで写真を撮った。そして、それを、一言添えて恋人にだけ送信した。

「ありがとう、さよなら」

わたしは何回にも分けて飲みきり、横になった。しばらく経つとさらにハイに、そして猛烈に眠たくなった。こうやって死ねるなら悪くないなあ、と電源を切った携帯を横目に微笑むわたし。

結構時間が経った後、母親がいつものように部屋にやってきて、わたしを見た。ゴミを隠すなんて考えもしない衝動的なものだったから、一瞬で母の顔が青ざめたのを見た。へへへ、と笑うわたし。ジョーカーかよ。

「吐きなさいーッ!!!」とジョジョばりに猛烈に怒鳴る母親が遠く見える。ああ、眠たいなあ…と意識を失った。

揺られる体に気づき、意識が少し戻った。「ぎごえまずが!?」最初は藤原竜也が叫んでるのかと思った。くぐもった、深海から語りかけられてるような声がする。何言ってんだ?と思いながら「やめて!眠いから起こさないで!やめろバカヤロー!!!」と大声で叫んだ。つもりだった。後々聞くと、救急隊員の方に訳のわからないことをうわ言のように繰り返していたらしい。

シンプルに怖いし失礼。いや、自殺未遂がまず怖いんだけど。

そして次に意識が戻ったのは、ICUだった。聞こえる音は、おなじみの「ピコン、ピコン」という心臓のモニター音。目を開けてみると、管につながれ呼吸器をつけたわたし。

病室

わたしが一番最初に思ったこと。それは死ねなかった後悔とか悔しさとか、生きてて嬉しいとかではない。

ただ、「水が飲みたい」だった。

喉が猛烈に渇いた、と思った。ああわたしの体は、生きようとしてるんだなあとぼんやりした頭で感じた。

そうして、わたしは今も生きている。



ICUで救ってもらえたのは、恋人が勇気を出してわたしの父親に電話したからだった。(前に教えていた)救急車バージンも捧げることになり、周りの人たちにめちゃくちゃ迷惑をかけた。わたしは2日ほどICUにいた後、閉鎖病棟に速攻入院。

あの時のことを思い出すたびに、申し訳なかったなあと思う。でも、それと同時に、あの頃のわたしを抱きしめてあげたいとも思う。

孤独な夜に、ひとりで胸をかきむしりながら耐え続けた日々。うつ病からやってくる絶え間ない自責思考と、いじめられた記憶や毒親との関係性。「あの頃は、あの選択しかできなかったよな。お前はさ、頑張ったよ」なんて隣に座って肩を叩いてあげたい。

わたしは人生で二度自殺未遂をしているけれど、毎回「命を大事にしろ!」とか「生きてればいいことあるよ!」とか無責任な"お叱り"と"励まし"を受けてきた。

正直クソ喰らえだな、うん。

だって、わたしの痛みは誰にもわからないもん。あなたの痛みを完全にわかる人が誰もいないように、わたしの痛みも誰もわからない。死ぬことよりも、ずっとずっと苦しかったあの頃を、わたしは否定したくない。わたしの選択を尊重したい。

でも、みんなが言うくだらない陳腐なセリフをわたしも思ってる。

やっぱり、生きててよかった。

だって死んだら、読者になってくれたあなたと出会えなかったもの。あなたがわたしの文を読んでくれて初めて、この作品は世界に存在してるんだよ。

スマホの光に照らされて眠れない夜に、布団をかぶって涙を流してるだけのあなたのこと。わたしは画面の向こうから愛するし、ハグさせてよ。

今まで、生きててくれてありがとう。

死ぬな、とは言わないし言えない。わたしだって今も希死念慮に悩まされてるから。

だからいつまでも死ねない臆病者たちでいよう。何よりも勇気のいる"生きる"という選択を、毎日重ねていこう。人生というRPGは毎日ENDを求めてくるから、コンティニューを必死で押し続けよう。

あなたは死なないことで勇者になれる。経験値は積めば積むほど強くなれるから。世界一臆病者の勇者でいてください。生きることは、ただ死ねなかった今日の積み重ねなんだよ。だから死ねなかった後悔を、いつか一緒に笑い飛ばそう。そして杯を酌み交わして、へべれけになろう。

わたしは、あなたと出会えてよかった。

今日も、死ねずにいてくれてありがとう。

また"明日"。

✌️




追伸:100錠飲むのめちゃくちゃ大変で、それでも死ねなかった。幸いなことに後遺症はなかったけど、オーバードーズは危険なのでやめてね。なとりさんのOverdose聴いて朝まで踊りましょう。あとあるフォローさせていただいてる方が、自殺未遂について書いていたので、影響されて書きました。誰かの光になれたらいいな。

"メンタルヘルスクラブ"という雑誌を作っています。といっても出版して本屋で売る!とか商業的なものではなく、丁寧に言葉を紡ぎ、友人たちがデザインをしてくれ、少数を刷り、わたしが自腹を切りまくる同人誌みたいなものです。わたしのパーソナルなエッセイを8篇載せ、詩や短歌も載せます。わたしがただ伝えたい純な想いを言葉にして、読者のひとに届けたくて作り始めたものです。よかったら、インスタのアカウント覗いてみてください。あなたの何か光になれたら。

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