「酒と泪と私と夫」【永田カビ本・感想】
前回のおはなし
就活も結婚生活も上手くいかず、ほぼアルコール依存症になってしまったわたし。抜け出す光は、たったひとつ、書くことだった。
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今回は最終話。
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実はここまで全部、永田カビ作「膵臓がこわれたら、少し生きやすくなりました」の感想です。自分語りが長くなりましたが、作品についてもしっかり語っていますので、読んでくださると嬉しいです!
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第一話
第二話
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もともと書くことがずっと好きだったわたしは、ちょこちょこ文章を書くようになった。それも最初は酷いものだったと思う。だって叫びに近いものだったから。
家庭環境の悪さ、昔いじめられたこと、うつ病、自傷。
ひたすら自分の闇を吐き出すような文章を書いているだけだったのが、ちらほら感想をもらえるようになった。時には私の文章を好きだ、と伝えてくれる人もいて、わたしはその度に泣いた。
生きる理由は間違いなく、読者の方々だった。
夫も根気強くわたしと向き合ってくれ、何度も裏切り、逃げ出そうとしたわたしを、いつも最後には抱きしめてくれた。"愛"を知らなかったわたしに、初めて"愛"を教えてくれたひとだった。
自分が心の病であることを認めること。そして、そんな自分を変わらず愛してくれる人がいるという事実。なによりも、世の中に「自分の居場所はある」と思えるようになったこと。
こういった思考になるまでは本当に時間がかかったけれど、何度も言い聞かせ、理解して、信じる。それを繰り返すうちに、わたしは徐々に酒を飲まずにいられるようになった。
といっても!
わたしは酒が基本的には大好きなので、普通にグレーゾーンをついていく。つまり、夫と約束した酒量を、どうすれば破れるか…!?と毎日考えているわけだ。ギリギリセーフを追い求めるわたしは、もはやKAT-TUN。(ちがう)
例えば、夫が仕事の間、飲むときは夫の許可制だ。けれど「ああ多分この時間、会議中だな…」みたいな時に、連絡をする。そして、返信が来なかったんだもん〜!と可愛こぶって飲んでいる。
普通に怒られる。
なんやかんやでちょっとでも酒量を増やせないか、とか、好きなタイミングで飲めるようにならないか、とか。セコいやり方を毎日考えている。
その時間があれば多分ユーキャンできる。ボールペン字講座受けよかな…
まあそんなこんなで、完全にお酒を断てたわけではない。飲みすぎる日もあるし、酔っ払って夫と喧嘩する日もある。でも酒量はすっかり減ったし、からみ酒をするまで飲むことも少なくなった。なにより、信頼しているひととしか飲まなくなったのも大きかった。
以前は、知らない人と会う前は、必ずお酒を飲まないと行けなかったのだ。怖くて、ビビって、酒で紛らわせてから向かっていた。そしたらまるで、陽キャみたいに振る舞えるから。
それをやめるのには時間がかかったし、今も会う前は緊張してお酒を飲みたくなる。でも「きっとこの人とは楽しいお酒が飲めるな〜」という人としか飲まない、会わないようにするようになって、少しずつ改善されたように思う。
とにかく「飲む日は本数を決める」というのを徹底し、飲む時は夫の許可。
浴びるほど飲んで世の中から自分の存在を消したい!!!と思う日も少なくないけれど、「あと30分しても飲みたかったら飲もう」「あと1時間我慢」など、ちょっとずつ我慢する時間を伸ばして、夫の帰りを待っている。
昔、先輩が
「アル中はなァ、手が震えるやろ?だから鬼ころしにはストローがついてるんや!震えてても口さえつければ飲めるからな!アハハハ」
と爆笑しながら、鬼ころしを飲む姿を再現してくれたことがある。
脳裏に焼きついたその姿を思い出すたびに、
笑いと怖さがフィフティフィフティ。
あの頃の私やん…と現在は脱出しつつ(注・鬼ころしはだいすきです)、今こうして支えてくれる夫、お酒なしでも酔ってんのか?くらい大爆笑させてくれる友人たちにひたすら感謝。
「お酒を飲まない」のではなく、「上手に付き合う」。そして、ひたすらその意識を毎日続ける。続けることで、いつか振り返った時に、道はできているから。その日が来るまで、毎日わたしは頑張りすぎず、頑張ろうと思います。
そして、鬼ころしは、ほどほどにね。(自戒)
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いよいよ本題、「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」を出版した永田カビさんの新作
「膵臓がこわれたら、少し生きやすくなりました」
の感想です。(時間かかりすぎでは)
わたしはカビさんのファンなので、カビさんの本は大体購入しているのだが、今回の本は、カビさんが「膵炎」になったところから始まる。
以前出された「現実逃避していたらボロボロになった話」でもお酒に依存していたカビさんのことが描かれていたが、今回もなかなか壮絶な続きのお話だった。
入院先から自力で点滴を引き抜いて、家に帰ったり。酒をやめられずに苦しむ姿。
わたしにとって共感の嵐。
わたしは酒の飲み過ぎで病院に運ばれたことはないけれど、閉鎖病棟に入院していたことはあるので、カビさんの入院中の苦しみなどが克明に伝わってくる。
"生きづらさ"
と一言で言えば簡単に終わってしまうのだけど、その生きづらさは本当に苦しくて、この世のすべてを投げ出したって構わない!というくらいしんどい。
例えば作中で、ひととの会話について「適切なタイミングで相槌を打ち、会話を会話のていに成立させることで精いっぱい」というセリフがあるが、首がもげるほど頷いた。
知らないひとと話す時、わたしは脳内に3パターンくらい相槌を用意していて、それをリズムゲーのように繰り返している。自分の意見を言う隙間を見出すために、聞きながら相槌を繰り返して、ここだ!というタイミングを見つけることは、本当に難しい。
他にも罪悪感のループや、自分の生産性の無さに落ち込むことで飲んでしまう姿など、
ほんとうにそうだよね〜カビちゃん〜( ; ; )
と心のおばちゃんが頷く。
特に共感したのが
「『罪悪感』は生きている限り伴う『生命の基本使用料』」
というワード。
自分の体験談でも書いた、罪悪感の正体はこれか!!!!と感動した。カビさんの言語化能力は半端じゃない。
生きてる限り伴う罪悪感を、無視できる人もいるけれど、無視できずずっと苦しむ人もいる。わたしは特に苦しんでしまうタイプなので、何をしてても不安感が伴う。
解放されるのは不可能、だからこそ、わたしたちは自分の居場所を見つける必要性がある。
自分は生きててもいいんだ、ということを大切な人に肯定してもらえることの大切さに、気づかされた。
笑いと共感、そして後半には涙。
ひたすら絵の可愛さに癒されて。
お酒に縁のない方でも面白く読めるし、わたしみたいなタイプの方には共感しかないと思うので、ぜひご一読を。
読後感も爽やかなものになっているので、とても読みやすいと思います。
命を削って物を生み出している、すべてのクリエイターの方に尊敬と感謝。そして、カビさん、描いてくれてありがとうございました。生きていてくれて、ありがとうございます。
わたしもカビさんも日々が戦いだと思いますが、読者の方も、日々ご自愛ください。そしてわたしたちはひとりじゃないって、信じていきたいです。
読んでくださりありがとうございました!
(買っていただいてもわたしには1円も入りませんが、カビさんの作品は最高なのでぜひ)
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