間違いだらけの顧客中心主義(6)〜「ペルソナ」を作るのは顧客中心の発想ではない?
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皆さんこんにちは。通販エキスパート協会事務局です。
当協会は文字通り「通販のエキスパート」を目指す方々に向けた資格「通販エキスパート検定」を実施しています。
前回投稿で、「顧客紹介価値」ついてお話をしました。LTVを本人の購買分だけでなく、紹介顧客によるものまで合算して評価をすると、本人のLTV のみでは最上位でない層が、紹介顧客のLTVとの合算で評価をすると、最上位層になる可能性がある、という実際のケースを元にしたお話でした。
今回はこのような顧客の収益性及びその管理に重きを置いている顧客中心主義において、ペルソナはあまり有効ではなく、時に害悪でさえあるというお話をしたいと思います。
顧客中心主義は、顧客に対する戦略的な投資配分を決定するために顧客セグメンテーションを行います。この場合のセグメンテーションとは市場セグメンテーションではなく、自社顧客を収益性や購買行動特性などによって細分化したものです。このセグメンテーションをどう行うか、そしてそれぞれのセグメンテーションに対してどのようなマーケティング施策を行うのかが顧客中心主義の根幹部分です。
この時、もしそれぞれのセグメントの特徴を表現するのにペルソナを使ったら何が起きるでしょうか?
ペルソナは、ライフスタイルや価値観などで装飾をしていますが、中核部分は年齢、性別、職業、居住地域、年収などのデモグラフィックデータです。確かにそうしないと「一人の人間としての顧客像」が明確になりません。しかし、収益性と購買行動特性を中心にセグメンテーションを行う顧客中心主義では、同じ顧客セグメンテーション内に複数のペルソナが存在します。一部の顧客はペルソナに合致するかもしれませんが、そうでない顧客にとっては心地よくないマーケティング・コミュニケーションを実施してしまう可能性があります。
ペルソナは特定の商品やサービスのユーザー層を設定してUXをデザインしたり、雑誌、ネットメディアなどを創刊する際に読者ターゲットの設定をするなどの用途には効果が上がるかもしれません。この場合、関係者間でのターゲット顧客層に対する共有認識などの面で有益な面もあるでしょう。
しかし、顧客中心主義における顧客セグメンテーションは、それとは逆に顧客の「多様性」を前提にしています。その多様性の中で収益性と購買行動特性(シンプルに言うと「優良化プロセスの違い」)を元にセグメンテーションを行い、各セグメント単位で育成プログラム=マーケティング投資計画を立案・実行・評価するのです。
そして、商品企画やメディア開発も、この顧客セグメントの特性を意識して行うことになりますから、単一のペルソナの登場する余地はあまりないことになります。
いかがでしょうか。次回はこの話を更に深堀りして「セグメンテーション変数」についてお話したいと思います。