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間違いだらけの顧客中心主義(9)〜「顧客戦略」

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皆さんこんにちは。通販エキスパート協会事務局です。

当協会は文字通り「通販のエキスパート」を目指す方々に向けた資格「通販エキスパート検定」を実施しています。

前回投稿で、「顧客ポートフォリオ」についてお話をしました。顧客を資産とみなし、顧客基盤全体をいくつかのセグメントに分け、個々のセグメントへの投資方針を決める考え方ですが、そのためには事業戦略と連動した「顧客戦略」が必要となります。

この顧客戦略ですが、どうも昨今のデジタルマーケティングやMA(マーケティングオートメーション)の議論では軽視されているような気がします。どんなに個々の施策でコンバージョン率やCPO、CACを改善しても、顧客戦略がなければ「投資対象とすべきではない顧客」を大量に獲得する一方で、「投資対象とすべき顧客」を獲得し損ねる可能性が高くなります。

顧客は決して一様ではなく、一律のKPIで効率化を図ってはいけないのです。とりわけ、通販あるいはリピート顧客からの収益が重要なビジネスモデルにおいては。これはよく環境問題で指摘される、移動しながら行う「焼き畑農業」と定住型の「循環的農法」との違いに似ています。

もし、特定の商材で瞬間的にバズらせて一定の売上に達したら、次はもう別の商材で別のターゲット顧客にまた同じことをして、その次はまた別の商材で・・・というようなことを意図的に繰り返すなら、これからお話する顧客戦略など必要有りません。

しかし、一度獲得した顧客と継続的な取引を続けることを前提に事業をするのなら、顧客戦略は必須です。

では、具体的に顧客戦略についてお話したいと思います。
企業が成長軌道に乗ると、多くの新規顧客が流入してきます。一方で、従来からの既存顧客は、一定量が常に流出しています。すると、最初は単一かそれに近い状態であった顧客層の特性が、次第に多様化して行きます。これは「従来と同じやり方でコミュニケーションをしてはいけない」いくつかのグループが出来上がっていく、ということでもあります。

どのような施策を打てば、継続率向上やクロスセル、アップセルにつながるのか、ひいてはロイヤルカスタマー化するのか。よくマーケティングで「刺さるコピー」「刺さる広告」などという言い方が有りますが、刺さり方が違ういくつかの集団が存在するわけです。

この時、「自社の中長期的な成長を支えてくれるのは、どんな特性をもった顧客層なのか?」ということを考えずに、新規顧客獲得やその後の育成施策を単一のシナリオに基づいて自動実行させていったら何が起きるでしょうか?

リストは増え続けているのに利益率が悪化し、さらにそのまま行くと、優良顧客層のボリュームが痩せ始めます。
こうなると今度は利益率どころか売上自体が減少し始めます。通常、こうなりだすと挽回は極めて難しくなります。新商品を投入してテコ入れしようにも、そもそもどの顧客セグメントへの価値提供を狙って企画開発するのか、という発想が乏しいので迷走が続きます。

そうならないようにするには、1)常に自社顧客の多様性に着目し、2)収益性と購買行動特性を中心にセグメンテーションを行い、3)事業戦略と連動させながらマーケティング投資の優先順位を決め、4)新規顧客獲得から優良顧客化のプロセスを各セグメントごとに個別管理する必要があるのです。

この時、もしセグメンテーションが4つあったら、カスタマージャーニーも4つ(もしかしたらもっと)必要です。そして、PDCAを回す中で、より良いセグメンテーションの仮説を立て、次期3カ年計画などに反映する、などということもあり得ます。データやデジタル技術は、このように複雑で動的な戦略管理のためにこそ活用すべきです。

いかがでしょうか。
顧客の多様性を前提にセグメンテーションの方針を決め、個々のセグメンテーションへの投資配分を事業戦略上のビジョンと整合性がとれるように決定していく、この「顧客戦略」の重要性が事業会社とそこにソリューションを提供しているITベンダーやコンサルタントと共有できたら、理想的なのですが。




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