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ラストマイル 考察・感想

 先日、二回目を観てきた。

 冒頭からたくさん二回目だからこそ気がつくことがあったのだが、二回目だからこそ、なぜエレナはああ言ったのか、よくわからなくなった台詞があった。

 「知りたかった答えはずっとロッカーにあったのに」

 物語りのクライマックス、今までの謎がするすると解けていくワンシーンで、エレナが叫ぶ台詞だ。

初見の時は、宅配ロッカーに最後の一個が配達されていた、という、爆弾の最後の一個の在処について言及しているのかと思った。

 だが、何かどうにもしっくり来ない。あの物語りにおいて、彼らが指すロッカーがあるとすれば、どう考えても山崎佑のロッカーではないか?二回目観た時、更に違和感が強まってしまった。

それから、帰宅してからずっと考えていた。色々な人の考察も読んだし、見た。だが、どうもしっくり来ない。その中で一番しっくりきたのは、山崎佑の死はデリファス過労を憂いての望んだ死でもなく、彼女との結婚に悩んだからでもなかった。という考察。たしかにそうかもしれないが、何故かまだこれだ!!!!という実感が湧かない。

 そして考え続けた今朝、これだ、、と思った私なりのしっくりきた答えがある。

 答えは先程述べた、[山崎佑の死はデリファス過労を憂いての望んだ死でもなく、彼女との結婚に悩んだからでもなかった。]というものと変わらないのだが。私は答えに対する質問文がわかっていなかったのだ。

 おそらく直前の質問文はこう。

「What do you want?」

それから

「何故、山崎佑は死んだのか。」

上記2つの質問文のアンサーがきっと、

「2.7m/s→70kg→0」

つまり、「稼働率を0にしたかった。」から飛び降りた。その答えはロッカーに山崎佑が死んだ時から5年間ずっとそこにあったのに。暗号を見ても、誰も暗号の意味に気が付かなかった。

それはきっと、誰が書いたかもわからないあんな落書きを一々考えている余裕が、今までの社員達にはなかったんじゃなかろうか。エレナもきっと、今回の事件が起こらなかったら考えもしないまま、あるいは暗号の存在さえ知らないまま今までのレールの上に乗り続けていたことだろう。

 作中に出てくる、メディカル便遅延の際[customer-centric]の説明でエレナが言っていた、

「誰も変えたくないの!面倒でしょ?大変でしょ?何も考えなくてもいいデリファスを使いたいの!!!」

という旨の台詞。誰も、何も、考えてこなかった。映画を観てる観客の、多くも考えてこなかった。今日頼んで明日届く便利過ぎるほど便利な社会のシステムの裏側に、血の通っている人間がどんな思いで働いているのかを。

 この映画には余白が多く、語られていないことが多い。製作陣はその余白はあえてであると言っているそう。

そんな余白にまんまと私は振り回され、ラストマイルで語られなかった余白を埋め続けるハメとなっている。

「爆弾はまだある」

この余白は、製作陣から私たちへの最後の爆弾なのかもしれない。


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