シロが教えてくれたこと
#私の作品紹介 #シロとの出会い#育児#親子の絆#ねこ#シロ#命
11.何気ない日常
今日も何やらみさとシロの話し声が聞こえてくるよ。
あれれ、でもいつもとは少し違う感じ。
かわいい子どもたちの声が聞こえてくるよ。
「ももちゃん、はなちゃん、この子がシロだよ。よろしくね。もうこんなに大きくなったんだよ。うちにきた時は小さかったのに。もう大人なんだよ。」
とシロを抱っこしながら、シロの右手を使って挨拶をさせた。
「わあ〜本当にふわふわしているね。かわいい。初めまして、シロちゃん。」
シロは、みさ以外の子どもをこんな間近で見るのは初めて。
これから何をされるんだろう。きっとドキドキしていたに違いない。
リビングでは、女の子3人とねこのシロが輪になって遊んでいる。不思議な感じ。
よく見てみると幼稚園から持ち帰った課題をみんなでやっているようだ。
あと5ヶ月もすれば、みさたちは小学生。
幼稚園からは、ひらがなを覚えて活用できるように遊びながら学べる教材が配られていたのだ。
それをみんなで考えながらやっている。
「好きな言葉からスタートしていいんだよって先生言っていたよね。」
「え〜迷うね。どうする?」
「好きな言葉って、お、か、し、とか?」
「うん、おかしは大好きだけど。」
「どうする?どうする?」
楽しそうに会話する様子をお母さんは目を細めて、キッチンから見ていた。
数ヶ月前にはこんな姿を誰が想像しただろう。
シロは子どもたちに、もみくちゃにされると警戒していたけれど、大丈夫と判断したようだ。子どもたちの輪から離れようとしない。
みんなペットを飼っているから、扱いに慣れているからかもしれない。
「みさちゃん、みんなでお菓子とジュースどうぞ。」
「お母さん、ちょうど今おかしの話をしていたんだよ。」
「えっ?そうだったの?」
お母さんは、会話がきこえてないふりをした。
普段通りの自然体のみさを見たかったから。
実際は、子どもたちの話をしっかりきいていた。
答えに行き詰まっているなぁと思い、あえておやつの時間に誘ったのだ。
「お菓子の前に手洗い済ませてね。」
「はぁ〜い。」
3人で洗面所までダッシュする。
なぜか、シロまで後をついていく。ついていかなければいいのに。
案の定、シロはみさに抱き抱えられて、一緒に手洗いをさせられるのであった。
手洗いを済ませた3人は、
「いただきます。」
と挨拶してシュークリームをほおばる。話すこともたくさんあるため、お口は大忙し。
シロにもお菓子が用意され、シロは対照的に黙々と食べている。でも、さっきの濡れた手が気になって仕方ない様子。
「ねぇねぇ、いいこと思いついたんだけど。」
みさがそう話すと、二人が
「えっ、なに?なに?」
と興味津々。
輪になって食べていたはずなのに、近寄りすぎていびつな形になっていた。
「ほら、みんな、ペットいるでしょ?私は『ねこ』、ももちゃんは『いぬ』、はなちゃんは『うさぎ』から始めたらどう?」
「みさちゃん、いいね。それ。」
はなちゃんがまず賛成した。
それから、ももちゃんも。
「賛成!!」
3人でハイタッチした。
そうと決まれば早いもの。
おやつを食べ終わると、みんなはお母さんに
「ご馳走様でした。」
と元気よく感謝を伝えて、食器をキッチンまで運んだ。
それから、机の上で課題を始めた。
みさは、『ねこ、こおり』と書き始めたところで、
「ねえ、こおりって『こおり』『こうり』どっちだっけ?『こおり』だよね?」
と二人に質問。
みんなでみさの国語辞典や幼稚園からのプリントを見ながら確認をする。
続きは『りす、すいか、かさ、さくらんぼ、ぼうし、しか、かき、きつね、、、』
「あと、一つだ。最後は『ね』だ。『ねこ』は使えないし、『ねずみ』だ。終わった!!」
と言い、みさはちゅんちゅんと、ねずみの真似をしてみた。
ももちゃんも、
「いぬ、ぬいぐるみ、みかん、んはダメだから、と声に出しながら頑張っている。
はなちゃんも、
「うなぎ、ぎたー、ぎたーは、あで続けたらいいのかな?」
と真剣な様子。
「はなちゃん、うなぎじゃないよ。うさぎでしょ?」
とツッコミが入る。
「はなちゃんは、うなぎが大好きだもんね。」
笑い声がわきあがる。
女の子3人で仲良くしているのがうらやましいのか、シロが途中から邪魔をするようになった。
みんなのノートの上に乗ってきてうろちょろ。
「シロ、ダメだよ。」
と最初は優しく諭していたみさも途中からは、
「シロ、本当に困るから。シロの手でノートぬれちゃうよ。」
と厳しく叱っていた。
みさのところで叱られたシロは、次はももちゃん、はなちゃんのところへ行って、ノートの上をうろちょろ。
「あ〜ノートぬれちゃう。シロちゃん、ダメだよ。」
とももちゃんが優しくシロをお膝に抱っこした。
一人で考えるより、みんなで考えながら学ぶことの大切さをお母さんは肌で感じた。
そして、友達と一緒に学ぶみさを頼もしく感じていた。
今夜もお父さんに嬉しそうに報告しているお母さんの姿が、食卓にあった。
季節が移り変わるように、みさもどんどん成長していた。
紅葉がきれいな季節。
次はどんなみさに会えるかな?
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?