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今の僕にとっての70日間という意味

インドネシアに来て70日以上が経過した。
経過した、というより経過してしまったという感じかな。

この70日間というのが、実はちょっと感慨深い期間で。


青年海外協力隊(JICA海外協力隊)は
派遣される時期が年間3回(今年から)あり、
それぞれ年度+〇次隊と呼ばれ、区別されていたりする。
私は2018年度4次隊と呼ばれる。

今週、次の隊次である2019年度1次隊の派遣前訓練が終わったようだ。
派遣前訓練は70日間、派遣国に応じて福島県・二本松市と長野県・駒ヶ根市にある
JICAの訓練所で、同期隊員全員で泊まり込みで行われ、
現地で使用する語学に加え、途上国支援に関して、
途上国で生活をする上での注意点などを学ぶ。



2018年1月8日に二本松訓練所に入った。
雪が降るとても寒い日だった。
70人以上の同期隊員とそこで出会った。

みんな色々なバックグラウンドを持っていて、
すごく個性的で、様々な想いと覚悟を持ってそこに来ていた。
まだまだ若い時の2年間を使って、途上国で過ごして、
その国の人の為に何かをしようと思っている人たち。
今まで勤めた会社を辞めて、ここに来ている人たち。
それだけで俺にとってはすごく尊いものだった。


私は青年海外協力隊の民間連携という制度を使って参加している。
この制度を使っている民間企業では、
その企業に在籍しながら青年海外協力隊に参加出来る、という
ちょっとイレギュラーな参加の仕方。
だから普通に参加すると、会社を辞めて参加して任期は2年間なんだけど、
俺の場合は1年間で終わり、その後は会社に戻ることになる。
経験を求めて参加した部分が大きい。



正直なところ、ボランティアというものに興味はなかった。
高校のころから部活もせずに時給800円でバイトをして、
大学では商学部に通い、お金儲けに関しての勉強をして
そのまま一般企業に入り、営業として数字に追われて働いた。
企業の経済活動やその人事関係、どうやったらお金を儲けられるのか、
そんなことに興味を持ってきた人生だった。
会社に入れば、いかに残業せずに効率を上げるのか、
どうやって自分たちのサービスを買ってもらうのか、
いくらなら採算が合うのか。
そんなことしか考えていなかった。
世の中金で、労働力もモノも全て金の世界。1人1日いくらの世界。
ボランティアとか、国際協力とか、それらとは縁遠い世界。
そんな世界を生きてきた。


だから会社を辞めてまで貴重な2年間という時間をそれに充てたいという
強い意志を持った同期隊員が本当に眩しくて。
もし民間連携という制度が会社になくて、
会社を辞めなければ参加出来ないとすれば、俺は参加しただろうか。
そこまでの勇気と覚悟と意志を持って、ここにこれただろうか。
俺は適当な言い訳を繰り返して、現状維持が一番いいと言い聞かせて、
その空間にはいなかったに違いない。


俺が参加した理由は自分の経験の為。
会社でも後輩が育って自分がいなくても回るし、
未婚でギリギリ30歳手前の今のタイミングでしか挑戦出来ないと思った。
自分の成長の為に参加した。
全ては自分の為。
その中に途上国の為に何かしたいという発想は、正直なところなかった。


だからそんな人たちに囲まれていると、
自分がその中に入っていることの申し訳なさに潰されそうになった。
比べるものでもないし、活動で結果出せば参加の理由なんてどうでもいい。
そんなことは分かってはいるけど、
当初はすごく居心地が悪かった。
その空間に自分が来ていることが、場違い甚だしいと思っていた。


真っ直ぐに俺の目を見て、「貧困が許せない」と言った人がいた。
「人の為に生きると決めた」と言った人がいた。
日本以上に何の保護・対応もなく生きる途上国の社会的弱者を助けたいと言った人がいた。
言い訳もせずに自分の弱さに向き合って、涙を流す人がいた。


どの人も心に濁りがなかった。
心が綺麗だった。
真っ直ぐに愚直に途上国の人のことを考えていた。
自分に何が出来るのかに向き合って真剣に考えて、
自分を高めようとがむしゃらに頑張っていた。
6年間社会人として社会に揉まれて、ずる賢く生きることしか出来なくなっていた自分にとっては
あまりにも眩しすぎた。


週6日で毎日繰り返される語学や座学、色々な講座などは
精神的にも体力的にも大変な部分もなかったことはないけど、
そんな同期たちと毎日「おはよう」と「おやすみ」と言い合った70日間は
明日も同期と会えることが嬉しくて、終わりがあるからちょっぴり寂しくて。
それでも明日を楽しみに思いながら目覚ましをセットしてベットに入った。
毎日キラキラしていて、刺激的な日々。


そんな同期たちに色々な価値観を教えてもらった。
全く知らなかった新しい世界を知ることが出来た。
国際協力なんて少しも考えてなかったけど、興味が出た。
自分なりの国際協力の仕方を考えたいと思った。

そして何より、真っ直ぐな目と濁りのない心に囲まれて、
なんとなくこっちまで心がきれいになった気がした。



売上や目標、効率に囲まれた社会人にとって
こんな寄り道をさせてもらえなければ
もう一生出会えなかったであろう人達と出会えて
全く新しい世界を教えてもらうことが出来た。

今振り返って見ると、きっと今後の人生を含めても
すごく価値のある出会いだった。
狭くなってしまっていた世界が、ぐっと広がった。
控えめに言っても、素晴らしい時間だったんだ。



すごくすごく濃い70日間で、
もしかしたら人生で一番濃い70日間で、
間違いなく人生でもう絶対に出会うことのない70日間。
これから2年間離れ離れのが分かってる同期と
一から人間関係築いて、どんどんお互いのことを知って、
一緒に頑張って、バカなことで笑いあって。
そんな人たちとの毎日は、本当に本当に刺激的で。
最終日は本当に寂しかった。
70日間は長いようで短くて、本当に夢みたいな時間。



あの時と同じ70日という期間が、インドネシアですでに経過してしまった。

あんな濃い時間をここで過ごせているだろうか。
あんな出会いがあっただろうか。
あの真っ直ぐな気持ちを持ち続けられているだろうか。


うーん。納得できるものではない。
まだまだ、これから。

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