情熱消滅時代
先日、大学生二人と話す機会がありました。彼女らからこんな質問を受けたんです。
この問いにはっとさせられました。確かに、一見すると矛盾しているように思えます。社会人なら既に職業に就いているはずなのに、なぜ改めて職業体験が必要なのか?
でも、この疑問こそが、現代社会が抱える大きな問題を浮き彫りにしているんです。
実は、多くの社会人が自分の仕事に満足していない、あるいは本当にやりたいことがわからないまま働いているのです。そのため、新たな可能性を探るための職業体験が必要になっているのです。
その証拠に、こんな驚くべき調査結果があります。
社会人の4割が「やりたいことがない」問題
ちょっと古いですが、驚くべき調査結果があります。リクルートワークス研究所の2023年の調査によると、なんと社会人の約4割が「仕事でやりたいことがない」と答えているんです。これは、あらゆる制約がない状況でも「やりたいことが思いつかない」と答えた人の割合です。
また、別の調査では、「夢中になれる仕事がしたいが、何をやりたいのか分からない」という悩みが社会人のキャリアの悩みの上位に挙がっています。日々の仕事に追われる中で、やりたいことを見失ってしまう人が多いのが現状なんです。
熱意ある社員はわずか1割
「やりたいことがない」という現象と対照的なのが、「熱意ある社員(engaged employees)」の存在です。Gallup社の調査によれば、こうした熱意ある社員の割合は、世界全体で約20%、日本ではその割合がさらに低く、10%前後にとどまっています。
これは、つまり多くの社会人が自分の仕事に対して情熱を持てず、やりがいや充実感を感じていないことを意味しているんです。社会全体が「安定」を重視しがちな中で、変化を求める姿勢や新しい挑戦への意欲が育ちにくくなっているのかもしれません。
なぜ社会人が「やりたいことがない」のか
この現状には、社会の構造的な問題が隠れています。2000年代以降、企業がキャリアをサポートする時代から、個人が自らキャリアを形成する時代へとシフトしました。しかし、実際には多くの人が自らの道を描く力を持てず、「やりたいことがない」と感じてしまうのです。
さらに、明治安田総合研究所の調査では、スキルアップや自己啓発に積極的に取り組む社会人は約2割にとどまっており、多くの人が時間や費用を理由に新しい挑戦をためらっています。これにより、仕事に対するモチベーションを見いだせず、現状に閉じこもってしまうんです。
社会の仕組みが生み出す「やりたいことがない」問題
この「やりたいことがない」という現象は、私たちが生きる社会そのものが生み出している問題でもあります。日本では長時間労働や一つの企業に長く勤めることが美徳とされ、自己を見つめ直す時間が取りにくくなっています。多くの人が、会社と家庭の往復だけの日常を送り、新しいことに挑戦する余裕を失ってしまっているのです。
また、社会全体が「安定」を優先する傾向が強く、変化を恐れる文化が根強く残っています。これが、やりたいことを見つけられない要因の一つとなっているんです。こうした状況は、個人の問題を超えた社会的な課題であり、私たち全体で考えるべきテーマです。
社会全体で考えるべき「やりたいことがない」問題
「やりたいことがない」と感じる社会人は、決して少数派ではありません。これは、個人の問題ではなく、私たちが生きる社会全体が抱える構造的な課題なんです。日々のルーチンに追われ、自分が本当に望むものを見失っている多くの社会人たちがいます。
しかし、この問題を直視し、自分を責めるのではなく、社会の仕組みそのものを見つめ直すことが大切です。そして、自分の内面と向き合う時間を作り、何を求めているのかを探ることから始めることで、未来に向けた新たな可能性が開けるかもしれません。
この問いに向き合うことで、私たちは自分自身を少しずつ取り戻し、やりたいことに気づけるようになるのではないでしょうか。だからこそ、社会人にも職業体験が必要なんです。新しい可能性に出会い、自分の情熱を再発見する。そんなきっかけになるんじゃないでしょうか。
みなさんも、自分のやりたいことを探す旅に出てみませんか。きっと、新しい自分に出会えるはずです。一緒に、この社会を少しずつ変えていけたらいいですね。
さあ、あなたの「やりたいこと」は何ですか。今日から、その探求の旅を始めてみませんか。