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女性労働経済学の第一人者 大沢真知子教授の最終講義内容まとめ

教授の研究者としての軸となった気づき

サービス経済化は、女性を労働市場に引き出し、家族形成を変え、社会の価値観を変えた。経済の変化が社会の価値転換を及ぼす。

女性労働とその研究の変遷

日本の戦後の経済発展のスピードは早かった。労働者不足にロボットや農村部の女性の市場参入で対応した。(アメリカでは移民)その後、サービス中心社会が訪れた。社会学では「第二の近代」と呼ばれる時代だ。

日本では、80年代に家族を中心とした福祉制度が作られた。これは、当時は失業率を下げたが、今においては、格差社会を形成する要因になってしまった。例えば、80年代、女性が無年金にならないために、第三号の非保険者制度ができた。これは多くの女性に取って有益だったが、その社会保険料負担を事業主がしなくていいという仕組みだったため、企業に非正規労働をより多く活用するインセンティブを構造的に作り出した。

社会保険制度が正規雇用者向けに作られていることから、90年代以降、セーフティネットが十分に機能しない非正規の人たちの貧困の問題が生まれた。その後、リーマンショックやコロナ禍など景気後退期にはシングルマザーや非正規雇用者の貧困問題が深刻化している。
一方で、リーマンショック後制度は充実してきたのも事実である。しかし、コロナ禍で多くのNPOが支援制度の申請の手伝いに奔走しているのを見ると、制度は作れば良いのではなく、より使いやすくならねばならないということを考える必要がある。

その後、教授は80年代の福祉改革についての研究をしてきた。これは、均等法が作られた時代でもあり、女性間の格差が拡大し始めた時代でもある。(注)男性間の格差の拡大は90年代以降におきる。

また、非典型労働の国際比較を通して、オランダとデンマークでは、労働時間を選択制にすることや、短縮することで失業率をさげることに成功したことがわかった。この研究は、『ワークライフバランス社会へ。』にまとまっている。その後、日本社会でも働き方改革に注目が集まるようになったが、結果的には非正規労働と不安定な雇用が増えたのではないかという批判もある。今後、どう是正していくかが課題だ。

また、2007年のパートタイム労働法改正では、そもそもパートタイマーとは誰なのかという定義の議論が行われた。パートで働く人で、35時間以上、あるいはフルタイムで働く人は多く、それまでの単純に就業時間という概念では定義できないとわかったからだ。結果として、会議では正規労働者とパートタイマーの違いは働き方の拘束性の違いにあるとした。「正社員は会社の指揮命令に従い、拘束的に働く、配置転換や転勤の命令に従わなければならない。パートタイマーは自分の生活を重視して働くことができる。」という違いである。この定義づけによって、長時間労働をすることが正規雇用者の重要な特徴の1つであることが強調された。その後、各会社がジョブ型採用をしたり、仕事の成果を労働時間以外の方法で測ろうと改革を進めている。特に氷河期世代に正規雇用を抑制した会社が今、女性の管理職候補を増やそうとしている。どういう風に変わっていくのか、気になる点だ。

コロナ禍でテレワークの利用率は上昇した。また、今まで大きく取り上げられて来なかった非正規の女性の問題が真剣に議論されるようになった。また、給付金の支給先が世帯主となったことから、多くの家庭で男性にお金が行った。家庭の出費に給付金を使おうと思ったが使えなかったという声が上がり、制度の問題点を明らかにした。

最後に

25年間、東京女子大で教えてきた教授が学生に伝えたかったのは、社会が女性に課している限界を超えてほしいということだ。自分の可能性を信じて欲しいという言葉で講義を終えた。

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