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ナイキの不買運動から考えるビジネスの人権リスク算出方法 追記

4/1のnoteで、日経ビジネスとDeloitteの記事で取り上げられていた、ビジネスの人権リスク算出方法について書いた。1997年のナイキへの不買運動の例を取り上げ、不買運動が起きていなかったと仮定した場合と比べてナイキがどれほど売り上げを損失したか示したものだ。

私はこのナイキの例を見たとき、数字でビジネスにとっての人権リスクを伝えるのは画期的だと感じた。一方で、あまり不買運動が盛んでない日本で、この例が企業にどれだけ届くのか疑問に思った。疑問を解消するため、専門家にお話を伺った。

結論として、この例は多くの経営層の方が関心を持たれたそうだ。理由は3つある。

  1. 人権リスクが数値化されていたから。

  2. オンライン上での不買運動が力を増しているから。

  3. 数値が、損益計算書に表れる売上高だったから。

1つ目の理由について:
この記事が書かれた2015年当時、人権侵害のビジネスインパクトを数字で示した事例は希少だった。今でもあまり見当たらない。数値化することで重要性がわかりやすくなった。

2つ目の理由について: 
確かに日本では街頭でデモをするような抗議・不買運動は盛んではない。しかし、SNSを通じた抗議運動(いわゆる「炎上」など)は近年増えている。また、日本でも若い世代を中心に環境や人権に配慮した製品・サービスへの関心が高まっている。このような傾向を踏まえると、今後、企業は人権侵害を放置すると致命的なダメージを受ける可能性があると言える。

3つ目の理由について: 
企業の人権の取り組みは、ESG投資の文脈で考えられることが多い。この場合、取り組みは貸借対照表(バランスシート)と関連付けられる。しかし、企業の中で貸借対照表を見ているのは、主に財務・経理部門と限られている。一方で、ナイキの例は人権の取り組みが売上高に影響を与え、損益計算書に直結している。損益計算書は事業部を含めより多くの部門が意識しているため、関心を持つ層が広い。

私にとっては、3つ目の理由が印象的だった。単に数値化するのでも、賃借対照表にある指標ではなく、損益計算書に直結する指標を使うことで影響力が高まるというのは、今後人権とビジネスの関係を他の方法で数値化する際にも考える必要があることだと思う。人権だけでなく、他の環境問題とビジネスの関係についても言えることかもしれない。

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