共通テスト翌日のあなたへ。センター試験で大ゴケした私は「今を味わって」を伝えたい
共通テストが終わったという報道を目にする季節になった。僕が27年前にセンター試験を受けた時、本当にその結果が悔しかった。だが、その年の春、志望校から学生証を受け取った。こんな私から、共通テスト翌日のあなたに、「今の感情をしっかり味わって」と伝えたい。そんなことを綴ってみる。
センター試験で、現代文を大ゴケした
その朝、新聞の朝刊に挟まれた「センター試験の解答」とにらめっこしながら、僕は大きく溜め息をついた。
「やっぱり。現代文は、やっぱりダメだった・・・」
高校の頃、僕は現代文が苦手だった。隠さずに言えば、大嫌いだった。
「下線部1の文章で、主人公の心情に最も近いものを、次の4つから選べ」
こんな問題を見て、冗談じゃないと思っていた。「は?主人公に尋ねてもいないのに、なんで分かるわけ?」4つの選択肢から、3つを切り捨てて1つに絞り込めるほど、人の気持ちは機械的で単純なのか?
今となっては、国語科の教員や入試業界の皆さんには恥ずかしく、自分の頭の足りなさを棚上げしている以外のナニモノでもなく、本当に屁理屈まみれだったのは承知しているのだが、とにかく僕は、現代文が嫌いだったのだ。
屁理屈はさておき、模試で手応えがつかめなかった科目は、本番でも手応えがつかめなかった。この手応えの無さは、他の科目で得られた手応えを総消しにした。
二次試験まで、あと1ヶ月と少し。俺は、いけるんだろうか?
もう前を向くしかなくて、前を向かせていた
二次試験に向けて、気持ちを切り替えようと、がむしゃらになったことを憶えている。
いける、いける。いける、いける。
クソ長いトンネルのど真ん中で、針の穴のような出口から差し込む光を探し続けるように、自分に言い聞かせていた。ここまでやってきた自分を信じなきゃ。親や先生の期待に応えなきゃ。描いている未来に向かわなきゃ。
メガトン級に重たい自分の脚を、両腕で掴んで持ち上げて、力を尽くして、前に前に進ませようとしていた気がする。
ついには、二次試験の合格発表に、自分の受験番号を見た。
今伝えたいのは、「今の感情をしっかり味わって」
過去には戻れない。もし、過去に戻れるタイムマシンがあったら、過去に戻って修正してばっかりで、未来にちっとも進めなくなるだろう。そんなのつまらない。
だが、もしも過去に戻って27年前の自分に伝えられるとしたら、「今の感情をしっかり味わって」だ。共通テスト翌日のあなたにも、それを伝えたい。僕は力技で自分のドロついた感情を塗り替えたのだが、そうやった自分だからこそ、あえてそう伝えたい。
今、何を感じているの?
悔しい? 絶望感? 孤独感? 焦り?
分厚いアイマスクと、重たい耳栓をさせられて、真っ黒な世界に独りでいるのかもしれない。
今の感情は、今日、今しか味わえない感情。だから、大切に、大切に、しっかり味わってほしいと願っています。
そして、奮い立ち、響き上がる自分自身の存在を、あなたはもうすでに知っているからこそ、そんな感情が込み上げてくるのだと思います。
だから、今の感情の向こう側にある、あなたにとって大切なものを、抱き上げてほしい。そう願っています。
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もう少し現代文の科目が好きになれていたら、きっと、もう少しマシな文章が書けたのでしょう。それでも僕が文章を書くのをやめないのは、好きだからです。
どうか、今しか味わえない感情を消しゴムで消すのではなくて、大切に、大切にしてあげてください。
受験生と、受験生にかかわる全てのあなたへ。
今日も佳い日で。