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小日本主義の省察

三浦銕太郎が「小日本主義」を提案しているのは1910年代前半である。要は大正時代から日本を大きくするという考えに否定的であった。

国民軍樹立、殖産興業勃興、日清戦争、日露戦争、日韓併合、中華民国干渉などによって近代日本拡張幻想による強迫観念に陥っていた。国際社会にぶら下がりながら強靭な日本を演出するために強権性を強めざるをえなくなっていく。1920年代に石橋湛山はこの思想を継承される事となった。

第1次世界大戦以後の国際社会の常識として民族自決は容認されていた。ウィルソンもレーニンも民族自決には賛同していた。

構造的な植民地支配すべてを否定するわけではないが帝国主義のなかで独立派や抵抗派が出現するのは歴史的必然である。それを権力側が鎮圧さえすれば解決するという考えは国際理念からも反するわけである。

マハトマガンディーの塩の行進は慈善や博愛主義以前に近代国際社会の常識に沿って行動しているという話である。すなわち国際秩序や民族自決にのっとり大きいイギリスを小さくする運動をしているのだ。

石橋湛山は大日本帝国主義が経済的にメリットどころかデメリットしか及ぼさない事を明白に説いている。日本の自立には植民地主義は逆効果に働くという分析をしている。結果を見れば大英帝国の顛末は悲惨なものだった。

朝鮮・台湾・樺太・満州や東南アジア諸国やオセアニア諸島を傘下として帝国主義を大きくするのではなく小さな日本諸島に軸足を置き他諸国の民族自決を承認しながら共同経済活動をしていく事が望ましいという事だ。

石橋湛山は現代日本政治に関わる期間はきわめて短かったが近代日本社会の方向と軸足が明白に間違えた事を論評している。

現代日本においても大きくする事、強くする事、数を増やす事が正しいといった近代型の富国強兵理念がマイルドには根付いている。

保守的な思考を持つのならば新自由主義的な公的削減路線を捨てて統制可能な範囲以上には大きくしない、強くしない、数を増やさないという感覚と思考が求められている。

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