【歴史21】スイス史備忘録47(移民難民受け入れ・外国人労働者の活躍・新制度の導入・COVID19・ウクライナ戦争)【最終回】
スイス史の学習内容を深めていきます。
①共産主義諸国崩壊や旧ユーゴスラヴィア内戦を背景にしてスイスは東欧出身の多数の移民や難民を受け入れた。
以後も他の地域からスイスで働きたい労働者や戦争・飢餓などから逃れてきた難民が増加した。
②スイス人と外国人との対立が表面化していった。
2004年には国民投票で外国人の帰化手続きを簡単にする法案が否決された。2010年には重罪を犯した外国人を国外追放する国民発議が国民投票で可決された。
③スイスは人口890万人(2023年)の小国だが経済力や国際的影響力は大きい。
2023年の名目GDPは1人あたり10万2886ドルである。ルクセンブルクとアイルランドに次いで世界でもトップクラスである。
④スイスでは古くから金融業が発達しておりドイツ語、フランス語、イタリア語といった複数の言語が使用され英語が通じやすく法人税も低い。1984年からIMF主要国の財務大臣と中央銀行総裁が集まるG10に加わった。
⑤医薬品ノバルティス、食品メーカーのネスレ、時計メーカーのロレックスなどによる輸出も堅調である。多くの企業の生産現場をサポートしているのは多数の外国人労働者であった。
⑥2023年の段階でスイス人口に占める外国人の割合は26%に及んでいる。約30%をアジアやアフリカの出身者が占めるが高度な技能や資格のある人たちが求められている。
⑦スイスでは住民投票や国民投票による新制度の導入や修正がくり返されている。2017年5月に原子力発電所の新建設を禁止した。風力・太陽光・水力などの再生可能ENを推進する法律が国民投票で可決された。
2050年までに脱原発を実現する計画が進められている。
⑧EV(電気自動車)の普及による電力需要の増大が予想されている。
1983年に全国組織をつくって設立された緑の党は2030年までに脱原発を実現する提案をしてきたが国民の多くは賛成していない。
⑨2021年9月にスイス人は国民投票によって同性婚を合法化する事に同意した。スイスは西欧諸国のなかでは後れをとっていたが急速な変化が起きた。
⑩スイスでは2020年2月に新型コロナウイルスの流行がはじまり連邦政府は感染拡大を防ぐための個人の行動制限や商業施設の営業時間制限を行った。国民の反発が強く政府の方針を撤回させる国民発議運動が展開されたが多数の賛成は得られなかった。
⑪感染が拡大していた期間は国民投票は通常より少なくなった。2023年には活発に提案が行われるようになって温室効果ガス排出量を2050年までに実質0になる法案などが可決した。
⑫2022年2月に始まったウクライナ戦争ではスイスはEU諸国とともにロシアに対する経済政策を実行した。ウクライナを支援するNATOに武器を輸出する案が検討されたが一方に加担する事になるという批判が起き輸出は起こっていない。
⑬議会では他国がすでに所有しているスイス製の武器の
ウクライナ移転を特例的に認める政府案も否決された。
⑭スイスは中世建国時代から外部勢力との駆け引きや外交的バランスの維持を通じて独立を保ってきた。国際紛争、中立主義、地球環境、エネルギー、外国人雇用と生活など様々な課題に直面し日々対策を練ながら前進している。
最後まで読んでいただきどうもありがとうございました。
■参考文献 『1冊でわかるスイス史』踊 共二 河出書房新社
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