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マウスピースだけで音出しをする意味とは
今回はトランペットの奏法に関する結構つっこんだお話なのでつまらない方がいらっしゃいましたらすいません。
中学校や高校の吹奏楽部でよく見かける光景に、マウスピースだけで音出しや、木管楽器であればフルートは頭部管だけ、サックスなどはネックを接続したところまでの状態で音出しをしていることが多いように感じます。
その是非に関して、ここでは言及しませんがどれも音楽的な表現力があるとは決して言えない音色や響きであることは間違いありません。マスピースやリードだけの音で芸術的な演奏を一切しないことからも理解できると思います。
ちなみに僕はここ数年ウォームアップにおいてもマウスピースだけでの音出しはしなくなりました(ウォームアップ本をご覧になったことがある方には申し訳ないです。考え方や実践方法を日々アップデートしているもので…)。マウスピースだけの時と楽器を接続した時の管の長さは違うので抵抗感も共鳴のさせ方もまったく違います。もっと言えば唇を振動させるセッティング、具体的にはアパチュアの状態がそもそも違います。マウスピースだけで音を出す、特に音階やらメロディなどを鳴らすためにはアパチュアや口周辺をかなり厳しく強く作らないとこれが実現しません。
最近レッスンで実演することがありますが、僕が演奏時に用意しているアパチュアの状況を知ってもらうために、口周辺のセッティングはいつも通りに、しかし腹圧や舌は何も働いていない状態で音を出すと、到底演奏などできそうもない緩くだらしないバズィング音から生まれるB音よりもずっと低い音しか出ません。
この状態の音から、実際に演奏をしている時の舌の形状や位置、腹圧を高めるための腹筋などを用意すると、先ほどまでだらしない音しか発生していなかったのが、しっかりしたB音やF音になり、High Bまで到達することができます。
文字だと説明が難しいのですが(ぜひツキイチレッスンにいらしてください。実演します)、要するにアパチュアや口周辺というのは、唇に作られた振動するために必要な小さな穴(アパチュア)が空いているだけであり、ここでだけで音の質を完成させたり、ましてや音の高さを変化するようなことはしていないのです。
アパチュア自体は「反応の良い振動」ができる状態を用意するところで完結しているべきであり、トランペットを音楽的に、そして良い音で自在に演奏しているのは空気圧(アパチュアに到達する空気のスピード)のコントロールです。
楽器を接続していないマウスピースだけの不完全で実際の演奏と条件がまったく異なる状態で音出しをするくらいなら、最初から演奏できる完成されたセッティングで音を出し始めた方が効率的かつ音楽的ではないか、と思ってウォームアップでもマウスピースだけの音出しはしないようになりました。
ただし、一応誤解のないように書いておきますが、アパチュアは基本的には放置している考えに変わりありませんが、リップトリルという大変重要な演奏コントロール技術があり、それはアパチュアを使って行うものなのでまったく何もしていないわけではない、ということは書いておきます。
今回はかなり専門的な話になってしまいましたが、最近レッスンで話すことも多くなったので文章にまとめてみました。トランペットを演奏されている方にとっては興味深いと感じていただける方もいらっしゃるかと思います。
ご興味ありましたらツキイチレッスンにいらしてください。
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荻原明(おぎわらあきら)
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