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かめる
2022年1月9日 02:04
【六月三日】「ねぇ、明晰夢って知ってる?」 同僚たちと飲んで帰宅した僕は妻の背中に上機嫌で話し掛けた。飲むより食べるほうが好きだから、ほとんど酔ってない。「めいせきむー?」 妻は振り向きもせずに答える。熱心に磨いている鍋は、もうピカピカだ。「『これは夢だ。』って、自分で認識している夢のことさ。夢の中で思い通り、好きなことができるんだ。自由に夢を操れるんだよ。」「へー…。」 意味が分か
2022年1月9日 21:44
【六月四日】「おはよう。どう?夕べはドリームキャッチャー、ちゃんと使えた?」 すっかり朝食が準備されたテーブルの前に着きながら妻にたずねる。妻はいつもより生き生きしているように見えた。「ちょっと難しかったんだけど、簡単な設定はできたの。今日は行きたい場所とか、お店なんかをリサーチしてみようと思ってるわ。」 弾んだ声に一気に気分が萎えた。 なんだ、ちゃんと使えたのか…。 それ以上は、もう
2022年1月10日 20:58
【六月六日】 ドリームキャッチャーは僕の妻以外にも研究員家族の数人が使っていた。一週間様子を見たら、すべて回収することになっている。 研究室の扉を開く。今朝はやけにざわついていた。「え、井上室長の息子さん?それマズイでしょ。」「西京大学専門の予備校に通ってるっていう?」「そうそう。ドリームキャッチャーでも勉強してて。てっきり受験勉強だと思ってたら、西京大学の講義を受けてたんだって。受験勉
2022年1月11日 13:44
翌朝、いつものダイニングに妻はいなかった。テーブルの上は、夕べ片付けられた時のままだ。「ドリームキャッチャーを使えなくなるってだけで、これか?」 僕はぶつぶつ呟くと、そのまま家を出ようとした。だが今日中に必ずドリームキャッチャーは回収することになっている。仕方なく彼女の寝室のドアを叩く。「入るよ。」 その寝室へ入るのは二年ぶりだった。「おはよう。もう、出るんだけど。ドリームキャッチャー回