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海外在住外国人コミュニティ:“ディアスポラ”は海外進出の際のゲートウェイになる
By 鶴田 彬, 2025.01.13
はじめに
上海で新生活を始めたとき、私には友人がおらず、中国での食事にもあまり馴染みがなっかたので、多くのクラスメイトが親切に接してくれたにも関わらず、時々少し寂しさを感じていた。また、食べ物や衣服などの品物を注文・購入する際に、どの料理やブランドが自分に合っているのかを判断するのが難しかった。なので、最初の1週間のうちにキャンパス近くにあるユニクロを訪れ、必要な衣類を購入したのを記憶している。また、キャンパスライフを送る中で上海における日本人街として知られる古北地区を訪れ、日本食を楽しむことも多々あった。浦東の寮から古北に行くのに凡そ1時間以上かかったが、そこで得られる経験には価値があった。なぜなら、そのエリアは日本の小さな町の雰囲気をいくらか捉えていてくれて、日本のスーパーマーケットを訪れるたびに、懐かしい、ノスタルジックな気持ちに浸りながら、幼い頃から馴染みのある日本食品のスナック菓子や飲み物を眺めながら小一時間費やすことがよくあった。そのため、必要以上に、日本より価格は割高になるのに、商品を買ってしまうこともよくあった。また、以前は日本のアニメをあまり見ていなかったのだが、日本語の、日本的な会話のやり取りなどを楽しむために見るようになった。さらにはYOASOBIなどの日本のポップソングを頻繁に聞くようになった。
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上海での生活に慣れた後も、私は古北を訪れ、新しい日本食レストランを見つけたり、子供の頃に楽しんだ漫画やお菓子など懐かしいものを探したりすることが良い気晴らしになっていた。特に自分の故郷である大阪や京都などの関西エリアの日本文化を味わいたいという欲求を感じることがある。
私が経験したように、母国や故郷を離れた多くの人々はこのような感情を共有し、”故郷の味、ホームテイスト、Taste of Home“を求めているのは確かであろう。そして、これらの消費者を、とりわけ”Diaspora、ディアスポラ“と呼ばれる彼らが集まるコミュニティ・地域において、ターゲットにすることでビジネスに商機が生まれる可能性がある。グローバル化の時代において、海外に移住する人が増えるにつれ、母国の企業が新しい市場・海外市場に進出するためには、海外に移住した人々をターゲットにするマーケティング戦略が必須の戦略であろう。この記事では、ディアスポラマーケティングを説明、いくつかの成功事例を紹介し、ディアスポラをターゲットにすることから、その地でのローカル市場へどのように拡大していくかを探りたいと思う。
ディアスポラマーケティング(Diaspora Marketing)
ディアスポラマーケティングは、チャイナタウンやリトルインディアとして知られる地域など、出身国以外に住む移民コミュニティをターゲットにした戦略である。受け入れ側のホストカントリーと母国側のホームカントリーとの間の文化の違いを含む、有形および無形のギャップに対処することで、商品・サービスの価値を強調し提供するマーケティングである。特に、いわゆる人々が、懐かしさを感じる商品は、このアプローチを効果的に活用できる。たとえば、上海の日本人街として知られる古北には、ラーメン屋がたくさんある。この地域は、日本の消費者が頻繁に訪れ居住することもあるため、レッドオーシャンになりつつあるものの、日本企業、特に日本の中小企業にとって、飲食店をオープンするのに最も低リスクな場所と考えられている。小規模なビジネスを行う上で、ディアスポラマーケティングは、初期マーケティングコストを抑えられる優れた戦略である。しかし、ディアスポラコミュニティの消費者から、ターゲットを現地市場に拡大する場合、コミュニティにおける全てのタイプの消費者が母国のブランドにとって理想的な顧客であるとは限らないと言われている。以下は、Harvard Business ReviewでNirmalya Kumar氏と Jan-Benedict E.M. Steenkamp氏が提案した顧客セグメンテーションマトリックスである。
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出典: Harvard Business Review. Diaspora Marketing
手短にいうと、上記のセグメントの中で、企業はBiculturals(バイカルチュラル、二文化主義者)とEthnic Affirmers(民族肯定者)をターゲットにすることに重点を置く必要がある。特に、Biculturalsは、ディアスポラ市場(ホストカントリー)とホームカントリー市場の間のギャップを埋める、橋渡しをする上で重要な役割を果たすことができる。ホストカントリーとホームカントリーの双方の文化やブランドに寛容なBiculturalsは、例えば、中国人やその他の外国人の友人に、日本(ホームカントリー)のブランドを紹介するといったような自国文化を紹介する傾向が高い。 (私自身もこのセグメントに属していると感じている。)これにより、ローカル市場(ホストカントリー市場)で、口コミが生まれ話題となり、母国のブランドにおける新しい市場での認知度や人気を高めることにつながる。
多くの製品またはサービスカテゴリでディアスポラマーケティングを活用することできる。特に、食品・飲料、ファッション、化粧品、教育サービス、医療サービス、映画ストリーミングなどのエンターテインメントサービスなどが適した商品カテゴリーと考えられよう。さらに、このアプローチは、現地の消費者に正当な理由なく品質が低いと認識されることが多い発展途上国の製品・サービスが先進国市場に参入する際に特に効果的となる。
Jollibee (ジョリビー)
ディアスポラ・マーケティングについて議論するとき、フィリピンで最も人気のあるファストフードチェーンであるJollibee (ジョリビー) について言及することは不可欠であろう。チキンジョイとバナナケチャップを用いたジョリースパゲッティで有名なファストフードブランドである。フィリピン国外では、地理的制限や文化的・人種的障壁により、フィリピン料理にアクセスするのが難しい場合がある。本物のフィリピンの味を提供し、フィリピン文化を讃え、懐かしさと一体感を呼び起こすことで、このブランドは、世界中のフィリピン人コミュニティの顧客と深い感情的なつながりを築くことに成功した。ジョリビーは、フィリピンに加え、ベトナム、米国、カナダ、UAE、シンガポールなど、海外在住フィリピン人が多い国に、複数の店舗を構えている。
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出典: World Population Review
Jollibeeは、アメリカのファストフードスタイルとフィリピンの味をブレンドして、他のチェーン店では提供できない独特の味を作り出した特製料理を提供している。海外に住むホームシックの多くのフィリピン人にとって、それは心地よい故郷の味を提供する。(余談だが、私の場合は天下一品のこってりラーメンがそれに当たるのかなと思う。)例えば、ジョリビーの特製スパイスで味付けし、グレービーソースをかけたチキンや、バナナケチャップで柔らかく甘く仕上げた特徴的なスパゲッティ、フィリピンのジョリビーを再現した店内の内装など、海外在住のフィリピン人が、ノスタルジックな感情を呼び起こす要素を多く提供している。
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Jollibeeは、フィリピン人ディアスポラ(移民コミュニティ)の重要なシンボルとなり、不慣れな環境の中でも心安らぐ存在となっているし、そのような目に見えない価値を提供している。ホストカントリーで生まれた2世代目または3世代目は、両親の母国の味や文化を知り楽しむために、両親によって店舗に連れて来られ、Jollibeeの次のロイヤリティの強い顧客になる可能性が高い。
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出典: Filipinos in Hong Kong pictured at a Jollibee outlet in 2018. Photo: SCMP/Cheryl Arcibal
チャイナディアスポラをターゲットにする中国ブランド
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出典: statistia
チャイナタウンが世界中に広がっていることを考慮すると、中国のブランドはディアスポラ・マーケティングの手法を活用して、新たな市場にビジネスを拡大することができる。中国本土で生まれ、現在海外に住んでいる中国人は約1,050万人おり、このディアスポラは世界最大規模の一つとなっている。これを上回るのはインド人、ロシア人、メキシコ人だけである。さらに、中国国外に住む中国系の人々を考慮すると、その数は約6,000万人に上り、アルゼンチンなどの国の人口を上回る。チャイナディアスポラをターゲットにしたいくつかの例を以下に示そう。ディアスポラ・マーケティングの要素が、商品(Product)、場所(Place)、プロモーション(Promotion)など、さまざまな側面で見て取れる。
・Alipay (支付宝): 2017年5月、米国で正式にサービスを開始したAlipayは、最初にフォーカスするエリアとして、ニューヨークの5番街、主要空港、アウトレットモール、空港免税店などの、中国人観光客が多く訪れる場所でのサービスの宣伝に重点を置くと発表した。 2番目のフォーカスエリアとして、地元の中国人学生がAlipayを使用できるように、遊園地、レストラン、スーパーマーケット、書店、スナックバーなどの留学生の消費場所を掲げた。さらに、アリペイは海外在住の中国人にリーチすることを目的としたいくつかのマーケティングキャンペーンを開始した。たとえば、端午節の期間中、華僑の人口が多いコミュニティでは、アリペイアプリを使用した粽の配布に関するイベントを開催した。(端午節の期間中、国内の人々は粽を食べる文化を習慣を持っているが、海外の中国人は粽を手に入れることができなかったり、用意するには値段が高すぎることに困っていることがある。)
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・Hey Tea (喜茶): 2023 年 8 月、Hey Teaは、ロンドンのチャイナタウンにアジア以外で初の海外店舗をオープンし、ヨーロッパ市場に参入した。この店舗は中国銀行の横に戦略的に位置し、活気ある中華料理店が立ち並ぶエリアに囲まれており、中国語と英語に堪能な店員が数名常駐している。8月のオープン以来、この店は目覚ましい売上高を達成しており、1日の最大販売量は2,000杯、1日の平均販売量は1,300杯以上であり、売上高は最も多い日には12,000ポンドを超えた。また、10月にHey Tea はオーストラリアのメルボルンとカナダのバーナビーの新しい2国に最初の店舗をオープンした。 その中で、Hey Teaのメルボルンの店舗は、メルボルンの中央ビジネス地区の中心にある歩行者専用道路、スワンストンストリートに位置しており、チャイナタウンなどのランドマークにも近い便利な場所にある。
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・大白兔(White Rabbit): 大白兎 (White Rabbit)は中国初のミルクキャンディのブランドで、赤、白、青の象徴的なラッピングをまとい、中国全土の子供たちに愛されている。このキャンディーは、中国人にとって子供時代を代表するお菓子である。中国人が世界中に移住するとともに、この白くてクリーミーなキャンディーも世界に広がっていった。現在、大白兎 (White Rabbit)のキャンディーは40カ国以上に流通しており、販売代理店は米国、シンガポール、ヨーロッパに存在し、海外在住中国人や地元の消費者に向けて、中国のノスタルジックなキャンディーを販売している。特筆したいエピソードが一つある、2022年に、カリフォルニア州の地元のアイスクリームパーラーが、思いがけずにディアスポラマーケティングの力を発揮した事例だ。ロサンゼルスのアイスクリームメーカー、Adrienne Borlongan氏のワンダーラスト・クリーマリー(Wanderlust Creamery)は、実験的に店舗のローテーションラインナップに大白兎味(ホワイトラビット味)を加えた。当初、顧客はそのことに注目しなかったが、Borlongan氏が大白兎のブランド紙に包まれたアイスクリームコーンの写真をSNSに投稿すると、そのニュースはSNS上ですぐに広がった。写真を投稿した直後、カリフォルニア全土から駐在中国人がワンダーラストへ、その懐かしい味を求めて、車でやって来た。それ以来、大白兎味はワンダーラストのアイスクリームラインナップの定番となり、オンラインショップでは頻繁に売り切れとなっている。
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出典: CNN Travel
ディアスポラ市場からローカルマス市場への拡大
ここまで、ディアスポラマーケティングについて説明をしてきたが、一定以上の市場規模を海外市場に求める企業にとっては、ディアスポラの市場規模では不十分であり、ローカルの顧客をターゲットにする必要がある。26カ国で展開する急成長中の南アフリカのカジュアルダイニングチェーンであるNando’sの共同創設者、Robert Brozin氏は、彼らはビジネスを維持するために南アフリカのディアスポラだけに依存することはできず、地元の消費者へのリーチを拡大する必要があり、いわゆるメインストリームの定番メニューも取り入れていかなければならないと説いている。ディアスポラをローカル市場への参入の架け橋として活用する場合、次のような要素を考慮することが重要になってくると考えられる。
1.ローカライズしたオプションを持つ…製品やサービスのオリジナルの価値やノスタルジックな価値を維持しながら、地域の文化や需要に合わせて適応させ、ローカライズする必要がある。例えば、上海の一部の日本ラーメン店では、オリジナルの味に加えて、塩味控えめ、油っこさ控えめから選ぶことができるケースがよく見られる。これは、地元の中国人客の多くにとって、日本のラーメンは塩辛い、あるいは油っぽいと感じられることがあるからだ。是移住する日本人向けには、オリジナルの味を守りながら、ローカルの消費者に合わせて味を調整している。当然、日本の顧客は元来の味、日本風味の味を好むため、店舗が提供するラーメンのそのものの味を変えるのではなく、追加のオプションを提供することが重要になってくる。端的に言えば、リスクとして、ローカライゼーションによって、元の価値が薄れる場合があると言うことを念頭においた上で、ローカライズする、ローカライズしたオプションを用意する必要がある。
2. 初期段階でBiculturals(バイカルチュラル)をターゲットにする…上で述べたように、ディアスポラにおける消費者の中でBiculturalsに分類される人々は、ホームカントリーのブランドをホストカントリーの市場に紹介することが期待できる理想的なターゲットとなる。一般的には、彼らは、比較的高水準な教育を受けており(語学に精通している可能性が高い)、より高い社会経済的地位を持ち、ローカルのネットワークにより頻繁に交流していると報告されている。彼らは喜んで地元の友人に紹介し、地域社会での口コミにつながる可能性があると言える。(*あくまでカスタマーセグメンテーションの話であり、どちらが優れているといった話ではなく、どちらがローカル市場で外国商品にオープンな層に繋がりやすいかという仮定の話であることに留意したい。)例えば、ブランドが、ローカル市場において、比較的ハイエンドなポジショニングを取りたい場合、ディアスポラ内でターゲットする選択肢として、ホームカントリーからの留学生、とりわけMBA留学学生などは、効果的なターゲット候補者となるだろう。別に私が優れた社会的地位にあるわけではないので、全てがペルソナイメージに合致するわけではないのだが、自身の経験をもとにすると、キャンパスライフでは日本の食品、アパレル、化粧品ブランドのおすすめブランド・おすすめ商品は何かとよく聞かれた。その商品が、地元、上海で入手できるとわかったとき、私は彼らを店舗に直接連れていくか、Tmallなどの電子商取引プラットフォームの商品ページをシェアし、クラスメイトの購入を促していた。つまり無償でプロモーターをしていたことになる。また、ほぼすべての日本のMBA留学生がクラスメートのためにジャパンナイト・パーティーを毎年主催し、日本文化を紹介し共有していることは知っておくべきであろう。これは、ブランドの認知を広げるより良い機会の1つである。例えば、日本酒ブランドがこのイベントに協賛し、自社の商品を提供すれば、国内外の市場で高収入が期待できる将来のMBA卒業生の間でブランドの認知度を高めることができる。MBAスクールに限らず、他の留学生にも同様の機会があるはずなので、外国ブランド、とりわけ、食品やアルコール業界のブランドはこの機会を大いに活用すべきであろう。
3.ノスタルジックな価値(本来の価値)を新たな価値として訴求…常に成功するとはらないが、ホームカントリーのブランド、特にマーケティング担当者は、母国の消費者にとってノスタルジックな価値観、懐かしいと感じられることが、ホストカントリー(外国)の消費者にとっては、新しい価値観や体験にうつることを考慮すべきであろう。日本の海底撈(ハイディラオ)は、日本在住の中国人や観光客へのアピールにある程度成功しているが、さらに、ローカルに市場を広げていくことでより多くの日本人消費者を引き付けることができそうだ。考えられるボトルネックの1つは、中国の火鍋は日本の消費者にとって辛すぎることがあり、より味をローカライズする必要があることだ。ただし、私のここでの提案は、ローカリゼーションではない。日本人の友人たちと中国の火鍋について話し合ううちに、私たち、日本人は、火鍋を食べる時に、鍋のタレを自分で作るというDIYの側面を楽しんでいるという仮説が生まれた。(つまり、この仮説が正しければ、極端な話、鍋に使用するスープは、辛すぎなければ、別に何でもいいのだ。火鍋を楽しむ上でそれよりソースが大事なのだ。)。このソースをたくさんある調味料を組み合わせて自作するという工程は、中国人消費者にとっては、火鍋に限らず、非常に一般的であって、日本の生活に馴染んだ頃にはノスタルジックな要素を持つだろうが、ローカル市場の日本の消費者にとっては興味深いものとなるだろう。中国の各火鍋のブランドは、まずこれらの点を詳細に強調できる。たとえば、InstagramやLemon8などのSNSでソースに使えるタレや薬味における豊富な品揃え、多様な組み合わせを面白おかしく強調することができる。 Youtuberなどの地元のKOLを招待することで動画を作成し、さまざまなスタイルをデモンストレーションするビデオを作成できて、消費者の興味を掻き立てることができよう。現在、海底撈の日本のインスタグラム投稿では、顧客のお気に入りのソースに尋ねているポストがある。私はこのアイデアが好きで、うまくいくはずだと考えているが、ローカルの消費者の多くは火鍋を経験したことがないため、この質問は若干高度な質問なように感じられる。この質問に答えられる日本人客のほとんどは、以前に中国での生活を経験したことがある方達になるだろう。ローカル市場へ広げる最初の顧客セグメントとして、彼らに焦点を当て投稿をポストしている可能性が高く、この点について時点で話したい。
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4.リバースディアスポラ効果…新しい場所を訪れたり休暇を過ごしたりするとき、人々は、その行き先の地元の製品やブランドを満喫することになる。その経験が優れていたら、例えばタイ旅行から帰国後のタイ料理のように、帰国後に追体験しようとするだろう。これを“リバースディアスポラ効果”と呼ぶ。1980年代、コロナビールはメキシコへの春休み旅行から帰国した米国の学生をターゲットにして売り上げを伸ばすことに成功した。ホームカントリーからの留学生や会社から派遣されているほとんどの駐在員は、通常、母国に戻る前に約1~5年間海外で過ごす。彼らは、帰国後にいわゆるセミディアスポラを形成する可能性がある。例えば、日本に帰国した元中国駐在員が海底撈に定期的に通うといったものだ。この効果を考慮すると、ブランドは、ホームカントリーに外国人が来ている時に関係を構築することができる、帰国後も彼らとの関係を維持することにフォーカスするといいだろう。例えば、WeChat、WhatsApp、Line、TikTok、Instagramなどの各種SNSプラットフォームで公式アカウントを立ち上げ、関係を維持および強化し、消費者と帰国後も繋がっておくためにフォローを促す必要があるだろう。(*海外にサービスを展開する日本のレストランでWhatsAPPやWechatのアカウントを持っている、告知している海外チェーンがどれぐらいあるのだろうか、次回帰国時に確認してみたい。)商品で言えば、「烤羊肉串」は上海の日本人駐在員の心を捉えているので、日本でリバースディアスポラ効果を享受する可能性が高いと考えている。また、これも有名だろうが、In-N-Out Burgerはロサンゼルスの日本人の間で大流行しており、日本でも同様の影響を受ける可能性があることが示唆されている。実際、東京・恵比寿でのポップアップストアは成功を収め、私含め、多くの顧客が同市内に常設店舗をオープンすることを望んでいる。
最後に…
もともと、ディアスポラ・マーケティングは主に発展途上国のブランドが先進国の市場に参入するための戦略と考えられていた。発展途上国の製品が、しばしば根拠もなく、クオリティが低いと不当に認識されうる先進国市場でシェアを獲得する上で、企業にとって、広告費用を抑えた費用対効果の高い戦略になる。しかし、海外旅行、留学、海外駐在・就職が増えた現在では、このマーケティング手法は先進国のさまざまな商品やブランドにも応用できるようになっていくだろう。特に中小企業の経営者は、これを利用してより効率的かつ効果的に国際的な機会を模索することができよう。ディアスポラの消費者をターゲットにすることは難しくないかもしれないが、地元市場で更にビジネスを拡大することには、困難を伴うことが多いだろう。ビジネスを拡大する際には、現地の市場の文化や嗜好をよく理解する必要があるため、多国籍または多文化的な側面を持つコンサルティング会社は一つの助けになるだろうと考えている。このようなローカル市場への参入に問題や課題が見られる場合は、お気軽にお問い合わせいただければと思う。
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参考文献:
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#5. Jollibee’s homepage.
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#8. Statistia.2024.09. Selected countries with the largest number of overseas Chinese 2023
#9. WARC.2024.08.20. Chinese brands going global can tap the diaspora.
#10. China Daily.2014.09.15. Chinese diaspora can help e-commerce giant take on Amazon
#11. Isentia.2017.06.26. Isentia营销观察| 中国品牌进军国际市场: Diaspora Marketing侨民营销
#12. 搜狐.com. 2017.05.29. 端午节治愈留学生的“中国胃”!不是老干妈居然是支付宝!
#13. World Coffee Portal. 2023.08.08. China’s Heytea enters European market with UK store.
#14. DAO Insights. Sofia Sayers. 2023.08.07. Hey Tea debuts first store outside of Asia in London’s Chinatown.
#15. 消费钛度. 胡晓钰. 2023.10.20.新茶饮出海的“喜茶”逻辑.
#16. BOKKSU MARKET. Theo Ponthieux.2024.01.25. White Rabbit Candy: A Sweet Journey Through Time and Taste
#17. CNN Travel. Lilit Marcus and Maggie Hiufu Wong. 2022.03.15. How Shanghai’s White Rabbit candy became a globally beloved brand
#18. 36Kr Japan.2023.4.8. 苦戦の大手火鍋チェーン「海底撈」、22年は減収も黒字転換
#19. 搜狐.com.2019.10.24. 涮啥啥香的万能火锅蘸料,满满干货,不看你就亏了!
#20. 北美省钱快报.2019.01.06. 终极火锅酱料配方!以后吃火锅不用犯愁,收藏起来都要尝一尝
#21. シブヤ経済新聞.2023.06.07. 米人気バーガーチェーン「In-N-Out」、恵比寿に一日限定店 長蛇の列も.