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超短編小説『きしんだ心を抱えても』    1話完結

進学塾の友だちと
励まし合って
受験勉強に
取り組んでいた

模試の結果や成績は
いつも彼女が上だった

合格圏内にいる彼女に
叱咤激励され続けて
心折れずに受験を迎えた

一緒に進学したかった
第一志望の合格発表
ネットでの確認

受かったのは自分だけで
彼女はまさかの不合格

「合格おめでとう。よかったね。
私は不合格でした。ごめんね、
一緒に行けなくて。」
とLINEが来た

私はいろいろ迷って
「びっくりした。まぐれだよ。」
と返信した

3日目にやっと
既読がついたけれど
返信はなかった

生きている限り
想定外のことには
遭遇すると思ってはいたけれど

彼女が合格して
私が不合格は
覚悟していた

でもその逆は
覚悟していなかった
それは彼女も同じだったろう

こんな時
合格を素直に喜べない
自分がいる

合格がゴールではなく
そこからまた
新しいスタートが始まる

そんなことは
重々承知しているけれど
私たちの友情は
ゴールしてしまったのだろうか

何度も諦めかけたけれど
彼女がいたから頑張れた

彼女がいなかったら
私のこの合格は
100%あり得なかった

私に費やした時間と労力を
彼女が自分のために使っていたら
結果は違っていたのではなかろうか

悶々とした日々が続いた
私にできることは
何なのか考え続けた

入学の手続きに関する書類が届いて
新しいスタートへ備え始めた時
ふと思いついた

彼女が行けなかった第一志望校へ
私が行くことになったことを
私自身が受け入れようと

そして
その進学先で彼女の分まで
充実して過ごそうと

何事にもふたを開けるまで
分からないことがある

でもそれは
ふたを開けたら
その結果を受け入れて
尽力することが
正しいのではなかろうか



どんなにギシギシと
きしんだ心を抱えても









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