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【本の感想】さみしい夜にはペンを持て

糸井重里さんが推薦されていて、ずっと気になっていた本。

「さみしい夜にはペンを持て」  
            著者 古賀史健

タイトルの「さみしい夜にはペンを持て」とは、どんな意味なんだろう。
自分の孤独を癒すために文章を書くという意味なのかな。読書前に、わたしなりにこのタイトルの意味を想像してみた。

そして、いざ、本を読み進めると…

私の安易な予想は、気持ちがいいくらいにハズレていた。いや、完全にハズレでもない。でも、、
タイトルの意味は、もっと海のように広く、深く、そして前向きになれるエールに感じ取れた。

主人公は、うみのなか中学校に通うタコジローだ。

ある日、いじめられっ子のタコジローは、学校をサボって公園で過ごしている。
すると、そこでおじさんのヤドカリと出会う。おじさんは、タコジローの悩みや話を真剣に全部聞いてくれる優しいヤドカリだ。

日々、クラスメイトや先生、両親とのことで悩んでいるタコジローに、おじさんのヤドカリは、日記を書くことをすすめるのだが。。。

そこから、この物語は始まる。

この物語はファンタジーな冒険物語である。
でも、それと同時に、文章を書く上での大切なエッセンスをがっつり教えてくれる本でもある。

おじさんのヤドカリを、つい『先生』と呼び間違えそうになる位、色んなことを惜しみなく教えてくれるのだ。
たとえば、、、


「タコジローくんは、文章を書くのが苦手なわけじゃない。ただ、ことばを決めるのが早すぎる。手っ取り早く、便利なことばで片づけている。言葉を探す面倒くささに屈している。おかげで、自分の気持ちから離れた文章になっている。それだけのことさ。」

P85

「スロモーションのカメラで世界を眺めて、スロモーションのビデオで『あのとき』を再現する。それだけで文章の表現力はぜんぜん違ったものになるよ。」

P184

「おじさんはね、自分が日記をつけはじめてから気づいたんだ。おじさんがいちばん
『わかってほしい』と思っていた相手は自分自身だったんだ、ってね。」

P267

いつしか、わたしもタコジローと同じ目線になって、おじさんのヤドカリの話をジッと真剣に聞いていることに気づく。

おじさんのアドバイスは、noteを書き始めたばかりの私にも深くささる。

おじさんのヤドカリが教えているのは、なにも文章の書き方だけではない。文章を綴る時に、その時の自分の気持ちに合うことばを、丁寧に見つけて選ぶこと。その作業をきちんとする事で、よりその時の等身大の自分と対峙することができる。

今の自分が、その時の自分の話を真剣に聞いてあげること。そうして、自分自身が、だれよりも自分を理解してあげられるのだと。

そして、コトバミマンの泡(モヤモヤ)をことばにしていくことで、自分の頭で考え、答えを導き出す事の大切さも教えてくれている。               

おじさんは、日記を書き続けなさいと言った。
日記を書き続けることで、自ずと、自分を主人公にした物語は前に進んでいくからだ。

「そう。『秘密の書きもの』だったはずの日記が、いつしか『秘密のよみもの』になっていく。だれも知らない、世界に一冊だけの読みものにね。」

P268

本を読み終えた時、
文章を書くことって、そういうことだったのか、、、、、、、、、、、
と本の表紙を数秒見つめてしまった。

今まで、なぜ、自分は文章を書きたくなるのか、うまく気持ちを整理できなかった。まさに、わたしの頭にあるコトバミマンの泡を、おじさんのヤドカリは、ことばにしてくれた。 
タコジローを通して、読者の私にも優しく教えてくれたのだ。

この本は、こどもから大人まで幅広い年齢層の方が愉しめる本だと思う。
そして、この言い方が合っているのかはわからないけれど、とても勉強になる。

書くことに行き詰まったら、いや、行き詰まらなくても、また読みたい。





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