最前列の安田汁、すごい迫力の「死の笛」 その2
本当に最前列だったよ!
なかなかない幸運に開演前からドキドキ。
舞台は、戦場。ステージ中央に線が引いてあった。それが国境を表現している。
ヤスケンと遣都さんは、敵国同士なのだけれど、2人とも料理人でなぜかそこだけ共有しなければいけない物がある。お互いの様子は、丸見え。敵だけれど、しだいに妙なシンパシィを感じるようになる。
私の側は、遣都さんのテリトリー。その距離1メートルくらいしか離れていない。
敵なのでうまく言葉が通じない、という設定のためか日本語なんだけれど、少し違和感のある言い回しが続く。
たとえば、
「私、ここ、いる」
とか、
「この状況、わからない、けれど今いる、それしかわからないある」
とか。
うる覚えなので、こんなニュアンスとしか伝えられないけれど。これって母国語でない人たちが、英語でしゃべっている状況に似ている。
多分その雰囲気を出しているのだろう。
最初は、異質なその響きも、進むにつれてだんだんと耳慣れてくる。
不思議。
でもちょっと邪なことも考えちゃった。このセリフまわしを覚えるのは、それはもう大変だったろうな、というようなこと。
普通の言葉でも問題はないと思うのに、あえてハードルを上げている。そういうところに、ヤスケンのこだわりを感じる。
なにしろ何をやっても良いのだから、脚本がそのように描かれていても変更してもらっても良いわけで。そのハードルをやすやすと越えてみよう、と思ったのかもしれない。
ストーリーは、いくつもの笑いを交えながら進んでいく。抱いていた小さな疑問を2人で突き合わせてみると、底知れないたくらみに気づく。
ものすごく簡単に言えば、2人は人間ではなくて、戦う意志を植えつけられたアンドロイドのようなものでは? という恐怖。
つまり、そんな深い謎が解けてしまうほどに、2人の中は親密になっていたわけで。
時々期せずして国境を越えて話合ったりする。そうすると、私の目の前にヤスケン。
近い!
生音さえ聞こえるほど。