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石橋凌さんのツアーファイナルの一つ前、三井ホールにて。その2

 凌さんは、「Dr.TETSU」を歌う前、中村哲さんについて語りに語った。アフガニスタンで治水が大事なことを説き、人々のために働き、乾いた大地を緑いっぱいにし、何千人もの飲料水を供給して結果的に命を救った哲さん。自らの信仰を横に置き、イスラムの世界に入りこんでモスクまで建てた。
 けれど、銃弾に倒れてしまう。
 2019年12月のこと。風化させてはいけない、とばかりに彼の思いを代弁する凌さん。

 ああ、そうだった。凌さんはいつでも誰かに思いを寄せて、曲を書いていたのだった。
 「Just a 16」は、名前もわからず高速道路で死んでしまった16歳の少女のことを、「MURDER GAME」では、ゲームに夢中で現実が見えず、子どもを殺してしまった男のことを描いた。この曲は実際の事件をモチーフに作ったのだけれど、直後に世にも恐ろしい連続幼女殺人事件が起き、なにか予言めいたものを感じた人も多かったと記憶している。
 その他にも、何曲も思い浮かぶ。
 そういう流れからすると、「Dr.TETSU」は、本当に凌さんらしい曲と言えるけれど、いつにも増して伝える言葉に思いがこもっていたように思う。
 私も哲さんのことは本でも読んだことがあって、とても尊敬していたので、心に染みた一曲だった。

 

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