12月22日ジョー・ストラマーの命日に1回だけ上映された「ロンドンコーリング」を観に行ったよ。
それは行かねば。11月の終わりにこのニュースを知った時、強く思った。新宿シネマートで18時30分からのたった1回限りの上映。
2002年12月22日に、50歳で突然亡くなってしまった「ザ クラッシュ」のジョー・ストラマ―に関するドキュメント映画「ロンドンコーリング」。
私が今は亡き吉祥寺のバウスシアターでの爆音上映を最初に観たのは、いつ頃のことだったか。子どもがまだ小さかったので、夫にお留守番を頼んで出かけて行った記憶があるから、10年以上前だったはず。
とても寒かった。それは、子育て中であまり夜出歩かない体質になっていたから、よけいに夜風が身に染みたのかもしれない。
それほどまでして観たかった作品。ジョーが亡くなった後に、キャンプファイヤーを囲みながら、ゆかりのある人たちが彼についての思い出話をしたりする。その映像には、必ず炎が映っていてゆらゆらとオレンジ色の光が反射する人たちが語るジョーについてのエピソードは、子どもの頃から晩年まで多岐に渡り、とても興味深い。
初めて観た時の衝撃が忘れられなくて、今回のリピになったわけだけれど、キャンプファイヤーでのシーンの間に挟まれる、ジョーの記録映像がまた泣かせる。
改めて彼の人生を追って行くと、色々と考えされられる。伝説のパンクバンドとなった「ザ・クラッシュ」は、なんとなく当時の時代の勢いに押されて、気づいたらアメリカでもツアーができるほどに有名になっていたという印象も受ける。
成り行きとまでは言わないけれど、仲たがいやアルコール他にまつわるトラブルも、短いショットでさえひしひしと感じて、逆にこんな感じでよくバンドを続けられていたな、と思っちゃうほど。
けれど。
「ザ・クラッシュ」を解散して、俳優など色々なことを経験した後「ジョー・ストラマ―&メスカルロス」というバンドを組んで、新たに活動を開始した時は、とがっているだけでなく人としての温かさややさしさも感じられる表情になり、ジョーがやりたかったのはこっちだったんだな、と気づいた。
それが如実にわかる構成になっていて、ジョー亡き後も生きる私たちは、いつまでも「やっぱりクラッシュのジョーが最高!」と言うのではなく、彼が遺してくれた「THE FUTURE IS UNWRITTN」と言う言葉通り、未来をより良くするように、毎日を過ごす必要があるんだな、と思わせてくれる。
「ザ・クラッシュ」時代の曲「Rock The Casbah」は、反戦の歌なのに湾岸戦争の時に、米軍の非公式テーマソングとなり、しかも爆弾にその曲名が記されていたと言う。それを知ったジョーは、泣いた。まったく反対の意味に使われてしまったからだ。
ジョーのことだから、きっと怒りをあらわにして涙したんだろう、と勝手に想像する。そういう激しいところも、実は好きなのだ。
もう一つ、ジョーの有名な言葉がある。それは「Punk is attitude,
not style」。「パンクは形じゃなくって、振る舞いだぜ」って感じに私は訳してるけど、会場の人たちはそれを体現しているようだった。
つまり。
80年代に流行した、いかにもパンクといういでたちの人はそう多くなくて、皆それぞれに心地よい服を選んで臨んでいるというか。実は、私は会場に着いたら、パンキッシュな人たちで溢れていたらどうしよう、みたいな心配を少ししていた。その時このジョーの言葉を思い出し、
「気持ちは、パンク。格好なんてどうでも良いもんね」
と開き直って出かけた。
杞憂だった。
ジョーだって、いつまでもそんなファッションはしていなかったもんね。
メスカルロスの頃は、本当にラフなTシャツとデニムだったし。
エンディングロールは、メルカルロスの「Get down Moses」と共に、文字があがってくる。これもそうとうに意味深い。
ジョーのいないこの混沌とした時代でも、私たちは強く意識を持って生きることを要求されているんだと思わされる内容。聖書の時代、迷える民を引っ張ってくれたモーセに「降りて来て」と呼びかけてはいるけれど、半ば世界を変えるのは今度は私たち、というメッセージも含まれているわけで・・・。
追悼の言葉を述べた人たちの中には、ジョニー・デップ、マーティン・スコセッシ、ジム・ジャームッシュ、U2のボノなど、クセの強いメンバーが混じっていて、彼らのそういうところとジョーの魂が響きあったんだろうな、と容易に想像できる
年の瀬に新たな決心。
追記
一枚目の写真は、自宅の壁に飾ってあるハービー山口さん撮影のジョー。
「地下鉄のジョー・ストラマ―」というタイトルで、ハービーさんがロンドンに住んでいた頃、本当に偶然に地下鉄のホームでジョーを見かけた。
思い切って話しかけ、ホームと社内で写真を撮らせてもらったけれど、降り際に「撮りたいものは撮るんだ。それがパンクだ」と言い残して行ったという。
その言葉にいたく感動したハービーさんは、写真家になって人々を幸せにする写真を撮ろう、と決心したと言う。
良い話。
私は毎朝、このジョーの笑顔を見てエピソードを思い出し、一日を始める。なんという贅沢、なんという充足感。
そして、私のLINEのプロフィールは、ハービーさんの真似をして
「STAY PUNK」だ。ハービーさんは、彼の写真集にサインをしてくれる時、ご機嫌だと「STAY PUNK」とつけ加えてくれる。
こんな感じに、あなたの思いは、ハービーさんにも私にも繋がっているよ、ジョー。