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ドクターペッパーの思い出 その1
小学5年生の秋の遠足。
私が住んでいた所は、私鉄沿線の郊外に登山向きの山がいくつもあって、遠足と言えば山登りだった。
大人になってから色々な人に話を聞くと、遠足=必ずしも登山ではなかったようだ。
知らなかった。
何しろ私は、登山が苦手。
この日も駅に向うために一旦校庭に集合、しゃがんで次の指示を待っている時、すでに憂鬱だった。
「へへぇ~、良いだろう~、俺今日水筒にドクターペッパー入れてきたんだぜ~ぃ」
そばにいた高田(仮名)くんが、突然私に話しかけてきた。クラスメイトの高田くんは、スポーツが得意で、ちょっと抜けているけれど、憎めないタイプの男子。
ある日の学級会で、あだ名について話し合った。本当はそう呼ばれるのは嫌だけれど、言いだせない子のために時間が設けられた。
「では嫌なあだ名で呼ばれている人?」
担任の先生が、皆に質問した。
オープンな雰囲気のクラスだったので、あちこちから手が挙がった。
比較的早い段階で、高田くんが挙手していつも呼ばれているあだ名が実は嫌だ、と言った。
「そうだったんだ。ほんとは、嫌だったんだ」
そのあだ名は、彼のフルネームを逆さまから読んだもので、結構面白い響きだったので、皆そう呼んでいた。いつも明るく返事をしていたので、てっきり気に入っているのかと思っていた。
他にも何人か手が挙がってしばらくの後、今度は、
「では、好きなあだ名で呼ばれている人~?」
と先生。
また、高田くんが立ち上がった。
「あれ? 高田くんに他のあだ名あったっけな・・・」
思っているうち、高田くんが口を開いて、さきほど嫌だと言ったのと同じあだ名を口にした。
「え?!」
私は、吹き出しそうになってしまった。クラスの皆も同じように思ったようで、不思議な雰囲気が教室に流れた。
「なんだ、結局嫌じゃないのね~」
先生が言うと、皆笑い、高田くんも苦笑いしていた。
そんな高田くんだ。