今年初のソーゾーシーが、春風亭昇羊祭りになった件。
大好きな落語・浪曲新作ユニット「ソーゾーシー」今年初の公演が座・高円寺で行われたよ。
あれ、リーダーの春風亭昇々師匠の名前がない・・・。それで思い出したけれど、昨年の東京ラストの公演の時に、説明があった。実はダブルブッキングをしてしまい、どうしよう! と悩んだ末に弟弟子の昇羊さんに代演を頼んだって言ってたっけ。
しかも、この会はネタおろしの新作をかけなければならないので、ネタを考えるから、それを覚えてやってね、と言ったそう。師匠の新作は、シュールな設定が多いし、スピード感と絶叫に満ち満ちているので、まずそれを覚えるのが大変だろうな~と昇羊さんに思いを寄せる。
昇羊さんの落語は、何度か寄席で聴いたことがあるけれど、笑顔で穏やかな雰囲気できれいにまとめてくれる印象。さぁ、今回はいったいどうなるか・・・。
オープニングトークは、撮影禁止だったので画像がないので残念なのだけれど、最初に昇羊さんが出て来た時にびっっくりしたのは、着ていたTシャツ。
こんなのをお召しに・・・。え、INU? 今は、芥川賞作家として確固たる地位を築いている町田康さんが町田町蔵だった頃に組んでいたパンクバンド「INU」のTシャツじゃぁないか。1980年代初頭の活躍だから、昇羊さん全然生まれてない!(1991年生まれ)
あとで太福師匠に、いじられていた。
リアルタイムでこの時を知っている私はこのTシャツに目を奪われて、ちょっと気もそぞろになっていたけれど、この大役にそんなに緊張しているようにも見えなかったな。落ちついて見えた。
昇羊さんの出番は、太福師匠の次の2番目、仲入り前。太福師匠からジンギスカンの「羊」の話で繋いでもらって、高座に上がる。
あのどうやってもイケメンの容姿で、さらにニコニコしながらまくらをしゃべるのだけれど、会場のお客さんはどちらかと言うと、
「3人のツワモノの間に挟まって大丈夫?」
と、なんとなく親戚の甥っ子を心配するような視線で見ていたと思う。
ところが、噺に入るとそんな雰囲気は霧散。時に昇々師匠が乗り移ったかというようなところもあれば、昇羊さん本来の持ち味が生かされたところもあり、ボウリングのピンを擬人化した(もうこの設定からしておかしい)ネタだったんだけれど、正座を崩して倒れてみたり、ピンを表現するために両手を使わなかったり、と新しい技法を編み出しつつ、最後はストンと落としてくれて。
もうやんややんやの大喝采。
ほんとう、
「代演、よくやった!!!」
という割れんばかりの拍手が響き渡った。
昇羊さん効果もあり、後に続く吉笑さんも鯉八師匠も(なんと、最近判明したのは、江戸時代に先代がいたらしい。夢丸師匠が見つけてくれたほんの数行の文献、詳細は何もわからないけれど由緒ある名とわかり大喜びの師匠、かわいかった)受けに受けて、エンディングトークに突入。
なんと、昇々師匠が作ったのをそのまま演じたのかと思っていたら、かなり変えていたことを告白。それもすごくないですか? それなのに、あんなにウケちゃって。
3人も興味津々でそのあたりを掘り下げてくれた。
「昇々さん、もういなくても良いね。このメンバーで良いね」
などと、いない昇々師匠のことを言い合う3人。
「え、兄弟子のことこんな感じでディスってるっての初めて知りました。一番弟子なのに・・・」
そう、昇々師匠は、笑点の司会で人気者の春風亭昇太師匠の一番弟子。それなのに、この言われよう。弟弟子としては、戸惑っちゃうよね。同調するわけにもいかないし・・・。
トークでも話していたけれど、ボウリングのネタを昇々師匠にもやってもらい、昇羊さんのとどう違うか見てみたい。
それに忘れてはいけないのは、3人があたたかく見守っているその気持ちがお客さんに伝わって、それを昇羊さんに返してるってことで、こういうのがライヴの醍醐味。
終始良い雰囲気で終了し、今年もまたソーゾーシーの公演をコンプリートしようっと、と決めた私でしたとさ。