最近読んだ本について簡単にまとめてみる(13冊:2023年12月~2024年1月中旬)
最近(2023年12月~24年1月中旬)に、読んだ本について簡単にまとめる。
1984(ジョージ・オーウェル著、田内志文訳:角川文庫)
世界的に有名なディストピア小説ということで、この際読んでおかねばならないと思い手に取った。
「2分間憎悪」、「ニュースピーク」「テレスクリーン」など、現代日本にも当てはまりそうな概念が多数出てくる。
北の無人駅から(渡辺一史著:北海道新聞社)
北海道の無人駅をただ取り上げただけの内容ではない。
駅がある地域に関わる諸問題を、自分の目で取材した著者の努力、執念、情熱の結晶であり、北海道のリアルを知るうえで必読と言える一冊。
詳しくは、下記の記事で書いている。
日本会議の研究(菅野完著:扶桑社新書)
「日本会議」なる政治団体が、日本の政界をどう支配しているのか、そして日本会議がどのようにして力を持つに至ったのかを詳しく解説した一冊。
ページ数が比較的少ない本であり、短時間で読むことができるので、日本政治に興味がある人におすすめしたい。
北朝鮮帰国事業の研究 冷戦下の「移民的帰還」と日朝・日韓関係(菊池嘉晃著:明石書店)
読売新聞の記者をされていた著者による、「北朝鮮帰国事業」に関する論文をまとめた一冊。
北朝鮮帰国事業については、日本人でも知っている人は少ないと思う。
知っている人であっても、「当時は北朝鮮のイメージが良かったから、そのせいで多くの在日コリアンと日本人妻が北朝鮮に渡ってしまった」という簡単な総括で終わってしまうことが多い。
この本では、太平洋戦争前後の日本に住んでいた在日コリアンの状況を紐解きながら、在日コリアンが「帰国事業」という形で北朝鮮に集団帰国を果たしていく過程を詳細に説明している。
非常に分厚い本であるが、北朝鮮帰国事業に興味のある方であれば、すらすらと読める内容になっている。
金融読本(中島真志/島村高嘉著:東洋経済新報社)
金融の基礎知識を網羅した一冊。
高校で金融に関する授業が行われるようになった昨今においては、投資をする意志に関わらず、誰でも理解しておくべきだろう。
大学の授業や金融機関における社員教育にも利用されている本のようで、内容は非常に分かりやすくなっている。
社会学 新版 (New Liberal Arts Selection)(有斐閣)
社会学の教科書的一冊で、電車における人々の行動、インターネット、ジェンダーに関する問題など、色々なテーマの話が紹介されている。
個々のテーマに対応する形で、参考文献がそれぞれ10冊弱示されているため、より深い勉強がしたい場合にも役立つ。
マイナス金利政策 3次元金融緩和の効果と限界(岩田一政/左三川郁子著:日本経済新聞社)
日本銀行によるマイナス金利政策をテーマとした1冊。
金融政策に関する本であり、ページ数も多いため、全てを完璧に理解するのは難しいが、とりあえずここ10年以上にわたって行われてきた金融政策がどのようなものであったかを勉強するには充分な内容だと言える。
貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム(岩村充著、新潮選書)
日本銀行に勤めていた経験もあるという筆者が書いた、貨幣に関する一冊。
非常に示唆に富む一冊であるのだが、特に「貨幣」というシステムがどのようにして生まれたのかを、架空の島を舞台にして描いた第一章が面白かった。
この本の良いところは、「自然利子率」という概念を上手く説明しているところだと思う。
「マイナス金利政策 3次元金融緩和の効果と限界」でも自然利子率という言葉は出てきていたが、正直よく理解できないまま終わっていた。
この本では、金融政策によって定める金利と対比し、「モノの利子率」という形で自然利子率を説明しており、これが大変すんなりと入ってきた。
民法 総則・物権(山野目章夫著:有斐閣)
民法に関する一冊。私は法学部卒ではなく、法律については一般教養で簡単に勉強した日本国憲法の知識くらいしかないので、民法もさらっと勉強してみたいと思った。
全部は読めなかったのだが、「意思能力と行為能力」という単元が興味深かった。
成年後見制度についての規定が詳しく説明されていて、一応精神手帳を持っている自分としては全く無関係というわけではないため、自分事として読ませていただいた。
有価証券報告書の見方・読み方(あずさ監査法人)
「IR情報」で必ず目にすることになる、有価証券報告書(有報)の読み方を詳細に解説した一冊。
あまりにも詳細に説明されているので、最低でも簿記2級レベルの会計の知識がないと、最後まで読み切るのは困難だと思われる。
株式投資、就職活動のための企業研究など、さまざまな動機で有報を読む機会が出てくるが、とりあえずこの本をざっと読んでおけば、いきなり有報を目にしたとしても、ビビってしまうことはなくなるだろう。
現代語訳 論語(宮崎市定著 岩波現代文庫)
日本人なら誰でも知っていると思われる、古代中国の思想家、孔子の言葉がまとめられた「論語」を現代日本語に訳した一冊。
非常にボリュームのある内容になっているため、根気強く読み進める必要がある。
第三身分とは何か(シィエス著:岩波文庫)
フランス革命に大きな影響を与えたと言われる一冊。
世界史をほとんど勉強したことのない私は、正直言って最近までこの本の存在自体を知らなかったわけだが、一度読んでみるとその筆勢に一気にのめり込んでしまい、1日足らずで読み終えてしまった。
「第三身分とは何か 全てである!」という冒頭の言葉だけで、何かハッとしたような気分にさせられる。
私が住むこの国は、法の下の平等が憲法で定められているはずだが、なぜか自分も第三身分の人間だと錯覚してしまう節がある。
それはぬるま湯に浸かって生きてきた人間特有の、気に入らないことにすぐにケチを付けたがる精神のせいなのか、それとも日本という国が真の平等を達成していないからなのか、それはよく分からない。
近代日本の右翼思想(片山杜秀著:講談社選書メチエ)
片山杜秀先生は、私が尊敬している大学教授の一人である。
大学時代、彼の「歴史」という一般教養の授業を受けた。
この授業を受けたのは、それが「楽単」(楽に単位を取れるの意)であるからという不純な動機からであったが、一度彼の講義を受けると、私の選択は真に正しかったのだと強く実感させられた。
とにかく、先生の話しぶりが本当に凄かった。
アカデミズムの世界で生きる人の勢いというのはこういうことかと実感させられた。
学生たちは本当にやる気のない人たちばかりであったが、そんなことなど露とも気にせず、視界にすら入っていないかの如く怒涛の勢いで話しを進める先生の講義は、それだけで一つの舞台になっていた。
先生の授業を聞いて以来、私は「片山杜秀」という一人の人物に注目するようになり、YouTubeで彼が出演する動画を見たり、テレビ出演されている際はそれを見たりと、片山杜秀ウォッチャーになっていたのである。
ところが、私はまだ片山杜秀先生の著書を一冊も読んだことがなかった。
それを思い出して、わざわざ厚別区の図書館まで行ってこの本を借りた。
大正以降の日本の「右翼」について論じられている一冊であり、おおよそ右翼とは程遠いところにいる自分にとっては、多くの発見を与えてくれる内容だった。
特に、大正期に入って迷走し始める日本の右翼思想が、さまざまな要素を取り込んだ結果、結局昭和天皇をただただ崇拝し、「今」を受け入れていればよいと言う形になったことで、太平洋戦争に突き進むことにつながる日本のファシズム化を引き起こしてしまったことが示唆されていて、本当に勉強になった。
今度は、片山先生の「未完のファシズム」も読んでみたい。